翌日
朝になったのだろうカーテンの間から差し込む光を感じ目が覚める。上半身を起こし辺りを見渡すと見慣れない部屋だったのでここはどこだと頭が混乱していたが、すぐに昨日のことを思い出した。優香さんと一緒に暮らすことになったのだ。そして寝る前に恥ずかしいことを言ってしまったことを思い出しベットの上で悶えていると、隣で寝ていたはずの優香さんが居ないことに気がついた。どこに行ったのだろう?と疑問はあったがとりあえず今の時間を確認してみようと思い枕元に置いてあったスマホに手を伸ばす。時間をみて唖然とした。時刻は11時を過ぎていた。寝すぎている。たしか昨日寝たのが23時前だったはずなので12時間以上寝ていることになった。しまったと思うのと同時にこんなにぐっすり寝れたのはいつぶりだろうとも思った。一応今日は火曜日なので学校があるのだが今から行っても遅刻は確定してる。普段なら休むより遅刻しても行くべきだと考えていたが、今はどうせ辞めるのだし休んでも別にいいかなと思う。
そんなことはどうでもいい。今はとりあえず優香さんを探そうと思いベットから降りようと足を降ろすと、柔らかいものを踏んだ感触と同時に
「うっ」
と声が聞こえた。
足元を見てみると優香さんが、床で寝ていた。
そうだった。落ちてもいいようにと毛布を敷いておいたのだった。
「わぁっ!すみません!」
そう言いベットの上に戻る。
優香さんが起き上がった。
「リンちゃん、おはよう」
まだ眠そうな顔をしている。
「おはようございます。踏んじゃってすみませんでした」
そういうと大丈夫だよと、笑っている。
「今何時?」
と聞かれたので11時を過ぎていることを伝えるとかなりびっくりしている。
「今日は特に予定は入ってないから。仕事は休みにしよう」
と呟いているのが聞こえた。
自営業だから休みを自由に取れるのかなと思った。
その日の夕方
「まだ2日目なんだけど少し手伝ってもらってもいいかな?」
そう優香さんに声をかけられた。
「何を手伝えばいいですか?」
と聞き返すと
「片付け」
短くそう答えがかえってきた。
なんでも今物置として使っている部屋を私の部屋にしてくれるらしい。個人的には一緒でも構わないが優香さんのプライベートもあるだろうし自室が貰えるに越したことはない。
「いいですよ」
そう答えたのが間違いだったと痛感した。
物置とは名ばかりで部屋一面ダンボールだらけであり、何ヶ月も入っていないのかホコリがすごかった。
「すごいですね」
思ったことをそのまま口に出すと
「ありがとう」
と嬉しそうに返答が返ってくる。
「褒めてないです」
と冷たく言うも
「ですよね」
と、悪気のなさそうな軽い返事が返ってきた。
「ダンボールの中に何が入ってるんですか?」
一番気になっていることを聞くと
「ゴミ」
とだけ返ってきた。珍しく無機質な声だったので優香さんを見てみると少しだけ寂しそうな顔をしていた。声をかけようとすると
「さっさとやっちゃおう」
とさっきまでの表情が嘘のように笑顔になってそう言われたので、何も言えなくなってしまった。
ダンボールの中身をゴミ袋に入れ替える作業を二人ではじめた。そんな作業の途中
「ほんとに全部捨てていいんですか?」
改めてそう聞くとうんと頷かれる。
私が気になっていたダンボールの中身は洋服だった。男性物もあれば女性物もある。まだ着れそうなものが、いくつもあるので私は迷ってしまった。優香さんが、いいと言ってるのだからいいのかもしれないが。
そんなことを考えていると
「手止まってるよ」
と優香さんに言われてしまった。
「すみません」
そう言い作業に戻るがいまいち進みが遅くなってしまう。
「そんなに気になる?」
見かねたのかそう聞かれたので、はいと答えると
「これ私の両親の服なんだよね」
そう答えられた。
「捨てたらまずいんじゃないですか?」
反射的にそう言ってしまったが、すぐにしまったと思った。昨日私は優香さんの両親には会ってないし、そもそも優香さんは今一人暮らしだと言っていた。なのに両親の服が家にある。つまり、両親と一緒に過ごしていたが何らかの事情があって優香さん一人で住むことになってしまったということだろう。それなのに私は無神経なことを言ってしまった。そんなことを考えていると
「リンちゃんすごい顔してるね」
とあっけらかんとした声で言われた。
「無神経なこと言ってすみません」
そう謝ると、
「何か勘違いしてない?」
とにまにましながら言ってくる。そして
「私の両親死んでないよ」
そう言われた。優香さんの言葉に呆気にとられていると
「今二人とも海外転勤中なんだよ。最近帰ってきてないからちょっとだけ寂しいの。あと、服は処分しちゃって大丈夫って言われてるから」
と理由を説明してくれた。
「そうだったんですね」
私はほっとした。優香さんはまだにまにましている。ちょっとムカつく。
「私の方見てにまにましてないで作業してください」
そう言うと、
「えー、リンちゃんが作業してないから教えてあげたのに」
と言われたので
「最初に事情を説明しないのが悪いんです」
と言い、作業に戻る。いまだに優香さんはえーと言っているが放置した。
一通り作業が終わり掃除機をかけたり部屋をきれいにし終わったときには日は沈み外は暗くなっていた。朝は遅かったがかなりの重労働だったので疲れてしまった。
「夕飯どうしますか?」
と、優香さんに声をかけると
「そろそろ来るよ」
と言われた。来るとはどういうことなのだろうと考えていると、玄関のチャイムがなる。結構遅い時間だが誰だろうと思うと
「お邪魔します」
と聞いたことのある声がした。
「こんばんは、優香ちゃん、リンちゃん」
そう言って入ってきたのは優香さんの叔父の裕司さんだった。
こんばんはと返すと
「ほんとに一緒に住んでるんだね」
と少し感心したようなトーンでそう言った裕司さんに
「昨日そういったでしょ」
と優香さんが呆れたように言った。
「じゃあ、これね。リンちゃんまた明日」
と言い、優香さんに片手鍋を渡した。
「はい、また明日」
と反射的に答えてしまったが明日も来るのだろうか?そんな疑問が残る。
「リンちゃん、ご飯にしよう」
と優香さんが、鍋を火にかけながら言ってきたのでとりあえずご飯を食べることにした。裕司さんが持ってきた鍋にはカレーが入っていてそれを二人で食べた。自分で作るのとは違いスパイスの効いた本格的なカレーだったのでとても美味しかった。その後お風呂に入りまた優香さんと一緒に寝た。
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