表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/35

宮廷魔術団 4

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 エメラルドの魔力温存のため、サーリアに樹海にあるわたしの家まで運んでもらい、わたしは数冊の魔法書を持ってラファイエット公爵家に戻った。

 クリストフが仕事で留守にしている日中、独り立ちしてからしばらく開いていなかった魔法書を開く。

 サーリアはさっそく城にお引越しして、今日は宮廷魔術団に、魔法とは何たるかという座学を教えているはずだ。


「光属性の魔法なんて調べてどうするんだ?」


 暇なのか、クイールはわたしが座っているソファの隣にやってきて、魔法書を覗き込んだ。


「宮廷魔術団に光属性の人がいるのよ」

「そりゃあまたレアな魔力を持ったやつが来たもんだ」

「あんたには言われたくないわね」

「俺様はレア中のレアだからな。一緒にすんな」


 光属性以上に少ないのが闇属性なので、まあ、レアなのは認めるが、自信満々で言われると腹が立つのは何故だろう。


「光属性は基本魔法でも威力が大きいのよね」

「光玉でも教えときゃいいだろ。夜に便利だしな」

「ランタン代わりじゃないのよ?」


 適当なことを言うクイールにわたしはため息だ。

 クイールの言う光玉――単元魔法の「光」ならすぐに教えられる。

 だが攻撃魔法や防御魔法などになってくると、基礎でもかなり魔力を消費するから、魔力の少ない今のわたしには見本を見せるのもかなり大変だ。


 炸裂魔法《光》だけでも稲妻が発生する。炸裂魔法応用《光・迅雷》なんて使った暁には王都を吹っ飛ばすくらいの威力があるだろう。まあ、光魔法の応用なんて、魔力消費が激しすぎてそうそう使えるものでもないが。

 斬撃魔法《光》ならまだましか。

 穿通魔法《光》の光の矢も、魔力消費はえぐいけど、的を絞れば周囲への被害は少ない。


 ……どちらにしても、もう少しエメラルドの魔力をためないことには厳しい。


「あんた光魔法使える?」


 さすがに魔人に教鞭をとらせることはできないが、なんとなく興味で訊いてみた。すると、クイールはふふんと鼻を鳴らす。


「当り前だ。俺に使えない属性魔法はない」


 さすが自分を大魔人様だと豪語するだけはある。


「だいたい、魔力消費を気にするなら、弱化させればいいだけだろ」

「……弱化?」


 はじめて聞いた。不思議そうに首をひねると、クイールがぴょんとソファから飛び降りる。


「防御結界張れ。風でいい。得意だろ」

「ちょ、ここで打つ気?」

「早くしろ、出ないと貫通するぞ」


 本気だ。わたしは慌てて自分の周りに風の防御結界を張る。

 クイールが目を細めて、わたしに向かって魔法を展開した。


「穿通魔法弱化《光》」

「ちょっと待――」


 わたしが制止するより前に、わたしめがけて無数の光の矢が飛んでくる。しかし、わたしの風の結界に阻まれてあっさり霧散した。


「こうやるんだ」


 クイールは得意げに笑うが、それどころではない。


「あんたなんで人の魔法が使えるの⁉」


 魔人は、人とは違う断りで魔法を使う。そもそも魔力の種類が「正」と「負」で真逆だから、魔人が人の魔法を使えるのはおかしいのだ。

 唖然とするわたしに、クイールはこともなげに「俺様クラスになればこのくらいは造作もない」とか言い出した。


 いや、それおかしいから!

 絶対おかしいから!


「あんたいったいなんなの⁉」


 クイールはわたしの隣の戻ってくると、わたしのために用意されていたクッキーを一枚とって食べはじめた。


「何ってなんだ?」

「だから、あり得ないって言ってんの! どうやったらそうなるわけ⁉」

「どうもこうも、『負』の魔力を『正』の魔力に変換しただけだ。効率が悪いことこの上ないから、普段は使わない」

「ちょっと意味が解らないわ」


 魔力の本質を変換とか、できるはずがない。

 しかしクイールはむしゃむしゃとクッキーを食べながら、興味なさそうに言う。


「理解しようとしなくていい。つーか、世の中には知らない方がいいことってのがあるんだ。あんまり深く考えんな。俺様だからできる。それでいーじゃねーか」

「なにそれ」


 ものすごく意味が解らないが、クイールはこれ以上説明する気がないらしい。

 何かもやもやするけど、教えてくれそうもないから諦めるしかない。

 そんなことよりも今はクイールが教えてくれた弱化魔法の習得が先だろう。これができれば、レバルに光魔法の基礎を教えるのが楽になる。


 部屋の中で魔法を打つのは危なすぎるので、わたしはぱたんと魔法書を閉じると、庭に下りることにした。

 今日はそう言う気分なのか、クイールもわたしについてくる。

 ついでだからクイールに邸や庭に被害が及ばないように結界を張ってもらった。


「じゃあ行きますか」


 とりあえず弱化魔法習得のために、得意な火魔法と風魔法で試すことにする。


「炸裂魔法弱化《炎》‼」


 わたしの声に合わせて、ドーンと爆発音が響き渡った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ