スポブラ
部活でクタクタになったのに歩いて家に帰る。今なら道に落ちた食べ物でも喜んで食べてしまうだろう。
「てか今日の赤星さんの胸見た?」
こんなだったよ、と修一はジェスチャーつきで解説してくる。
「あれはそろそろスポブラし始めるね」
最近のバスケ部のトピックスはスポブラをしているか否かで持ちきりらしい。あの子は巨乳を押さえつけてる、とか、アイツはただの貧乳、とか、今目の前に女子がいたら確実に会話をしてもらえなってしまいそうな危険な話題が、盛り上がってしょうがない。
「だめだめ、赤星さんは晋太郎のものだから」
隣の春人が茶化すように言った。
「だよな。やっぱかわいいよな赤星さん」と晋太郎が言う。
春人からの返答がない。晋太郎は不思議に思ったので「な」と春人の顔を覗いてみる。
「おいおいおい、どうしちゃったんだよ急に」
「どうって、かわいいだろ。あの子」
「いやいや、いつもは顔真っ赤にしてキレるじゃんか」
そうだったっけ、と頭をかきながら、晋太郎は慌てて照れたふりをする。
「そうだよ。もしかして付き合ってんの?」
春人があまりに心配そうな顔をするので、「違うよ」とはっきり言ってやった。
春人は赤星さんが好きだったんだ。当時は全く気が付かなかったけど、今なら分かる。
修一はまだスポブラの話をするつもりらしい。
「じゃあな変態野郎」
と晋太郎は二人から逃げるように家に帰った。