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理由があればそれでいいのだ

部活の紹介を理由に全校生徒の前に立つ晋太郎。タイムスリップの条件である大声を出したが…

 晋太郎はマイクを持ち、全校生徒の前に一人で立つ。体育館にすし詰めにされた生徒の目がギロリとこちらを見ている。タイムスリップのためには、より多くの人の前で「わァァァァァ!」と叫ばなくてはならない。


「えー、みなさんこんにちは。合唱部です」


部活の宣伝、という名目でなんとか全校生徒の前に立たせてもらえた。新入生の仮入部期間も終わっているのにどうして今なのか、と迫られた。


「合唱部では、流行りのJPOPなどをアレンジして歌っています。今は、文化祭に向けて欅坂46の歌を練習しています」


後ろの方で、サッカー部の奴らがだるそうにしている。きっと彼らから見たら、晋太郎の発表など、物理の授業よりつまらないだろう。


「歌ってみたい人、アイドルが好きな人はもちろん、冷やかしでも構いません。放課後音楽室に来てください」


よろしくお願いします、と消えてしまいそうな声で行ったあと、礼をする。


 ザワザワと周りが騒ぎ出した。晋太郎は自分とは関係のないことのようにステージを降りる。担任が晋太郎の名前を呼んだ。


「何してんの?」


「急に大声出したくなっちゃって」


へへ、と頭をかいてごまかそうとしたが、当然そうも行かない。


「何でこんなことするん?」


人は理解不能なことが起きたとき、必ず理由を探す。たとえそれが真実でなかったとしても、理由があればそれでいいのだ。晋太郎は関西弁の教師を見ながらそう思った。


「何か急に。すいませんでした」


「あんた怖いで。何かあるんやったら言ってな」


はい、と得意の負け顔をすると、担任は解放してくれた。教室に戻ると、また理由を聞かれた。何か急に、とヘラヘラすることでその場を切り抜けたけど、昼休みにはみんながそのことを忘れているように見えた。

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