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起こることは変えられない。でも誰が起こすかは変えられる

ファミレスでタイムスリップを体験する晋太郎。優柔不断な彼は、決断を下すことができるのか。

 全身が痺れて、すべての部位が自分のものでなくなったような感覚が晋太郎を包む。感覚が徐々に戻り、足を動かそうとすると、今いる場所が「デニーズ」でないことに気がつく。


「へ?」


「大声を出したからタイムスリップしたの」


痛ててて、と女は背伸びなんかをしているから、慣れていることがわかる。


「でも、これっていつ?」


「君とここに入る前に飛んだの。だから今度は私がマンゴーパフェね」


 晋太郎が急いで店内に入ると、「お好きな席どうぞ」とさっきの店員が雑に案内してくる。


「ホントだ!」と大声を出すと、PCを触る会社員らしき人と、制服を着た受験生らしき人がこちらを睨んだ。


「でもね、完璧に戻ったわけではないの。現に冷たい目線を送られているのが君ってとこがその証拠。過去に起きたこと自体は変えられない」


でも、と女はオーダーのボタンを押した。自分たちの席の番号が光り、さっきのけだるそうなバイトがのそのそとやってくる。


「誰か起こしたかは変えることができる。つまり、君みたいな非モテ卑屈男子高校生でも、モテモテ素直ハイスクールスゥーデントになれるってこと」


 晋太郎が「なんすかそれ?」と返すと「冗談だって」とチョコパフェを多めに食べられた。


「ずばり君は受け身が取れない! もっと素直に明るく、可愛らしく振る舞うべきだよ!」


「いや、無理ですよ」


「ほらほら、すぐ否定する。どうやら君は戻れるぶんだけ戻ったほうが生きやすくなるかもね」


余計なお世話ですよ、とマンゴーパフェを奪おうとするが、カップを遠くに置かれてしまったので食べられない。


「戻れる時間の量は声の大きさによって決まるの。だいたいさっきの声量で1時間くらいだから、君を中学2年に戻すためには、もっと声が必要だね」


「ちょっとまってくださいよ! なんで中2なんですか?」


「私が最近考えてる仮説を試すため。人の性格は中二病の発動の有無で決まるって説」

「俺があなたを助けたお礼にタイムスリップさせてくれるんですよね?」


「そうだっけ? 忘れちゃった」


「そうですよ!」


「それはそれとして、とにかくあなたは大声を出さないといけない。それも人前で」


「俺の言ったこと耳に届いてますか? 何で大声を…」


 晋太郎は女の提案に揺れていた。もし、本当に中学2年に戻れたとしたら、今のどうしようもない現実を変えられるかもしれない。


「すぐ決めて。やるの? やらないの?」


「うーん」と晋太郎が唸ると、「やる以外ないでしょ」と肩を叩かれた。


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