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晋太郎君に重大な発表があります

 人の結婚式に呼ばれたのは初めてだ。服装、持ち物、心構えなどを全てをGoogleに頼り、指定された式場へ向かう。


晋太郎は、一ヶ月前の春人との会話を思い出す。





「晋太郎くんに大事な発表があります」


久しぶりに会った春人がもったいぶりながら話をした。


「何だよ? めんどくせぇから早く言えよ!」


普段飲まない酒を体に取り入れて、晋太郎は楽しくなっていた。


「俺、結婚するわ」


「そんなわけねぇだろ!」


「いや、ボケじゃないのよ」


そう言って春人はスマホを取り出した。どうやら相手の画像を見せてくれるらしい。


「え、ちょっと、急に緊張してきた」


晋太郎は座り直し、お尻の位置を整える。


「じゃん!」


ひと世代前のスマホには、綺麗な人が写っていた。髪を肩まで伸ばし、白い服を着て、大きな耳がこちらを覗いている。


「いや、赤星さんかと思ったわ」


どっかで見たことある、という言葉を直前で飲み込み、晋太郎はとぼけた。


「いつの話だよ! 古いなぁ」


グビグビと春人は幸せそうに酒を飲んだ。


 見たことがあった。知っている気がした。お天気キャスターのような清楚感。晋太郎は引っ掛かりを感じながら、のろけ話を聞いた。





 凝った編集のオープニングムービーを眺めたあと司会が

「新郎新婦の入場です!」

と元気よく言った。マイクがなくてもよく通る声質を羨ましく思う。


 新婦が側を通る。きっとこの日のために最高のコンディションで臨んでいるに違いない。顔がむくまないように、前日は塩分を一切摂っていないかもしれない。そんなくだらないことを想像する晋太郎は、その瞬間、懐かしい匂いを感じた。


 記憶の引き出しを忙しく探す。


 ここじゃない。ここでもない。もっと深いところか。


懸命に思い出そうとしていると、あっという間に、歓談の時間がやってきてしまった。


「今日は来てくれてありがとう」


珍しくキメている春人が何だか面白い。


「とんでもございませんよ」


晋太郎がわざとらしく言うと、「うざ」と肩を殴られた。


「てか、そうだ。俺が挨拶で言った一生懸命な人を笑って、って話、お前に言われたやつなんだぜ」


「悪ぃ。覚えてないわ。てか、お前の挨拶聞いてなかった」


ふざけんなよ、と春人は笑いながら話す。


 晋太郎は、中学時代を思い出した。帰りの会で、いつも机を挟んで話してたっけ。思い出すと、胸がムズムズする。


「はる君!」


新婦がやってきた。二人が並ぶと、「夫婦」という2文字に見える。そのくらいお似合いだった。


「紗季、この人が晋太郎。中学時代の同級生」


「おめでとうございます。工藤です」


急に紹介され晋太郎は焦った。


「もと山口です。今ははる君と一緒の名字だけど」


「春人をよろしくお願いします」


晋太郎がそう言ってから、会話が続かない。春人は、そういうところをすぐに察してくれる。


「んじゃ行こうか。紗季ちょっとついてきてくれる?」

はーい、と言いながら紗季さんはなかなか付いていかない。春人は、もう行ってしまった。


「久しぶりだね」


と小さい声で言って、紗季さんはすぐに別の場所へ行った。


 いい匂い、お天気キャスターみたいな女、コケたら心配してくれる、水筒での間接キス。


 山口紗季だった。

ここまで読んでくれた人が果たしているのだろうか。少ないPV数を見ながら、私は疑問に思った。

終わらせずに投げ出してしまおうか、と思った。けれど、それはできなかった。なぜかと言うと、尊敬する人が「完結させることに意味がある」と言っていたからだ。

一体どんな意味があるのだろうか。私はその言葉を信じてラストを書いた。

完結したあと、私にやってきたのは、物語を大切にする気持ちだった。自分の作品を、自分が一番好きでいる。要するに愛着が生まれたのだ。

でも、やっぱり人気のある小説を書きたい。自分の想像できないような数の人が夢中になるストーリを作りたい。もっと練習しなくては。

これが、PV数というシステムで私が学んだことだ。

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