表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/28

そっと緩められる

「暑っ。なあ、晋太郎」


久しぶりの部活だ。ピカピカの体育館は事故の痕跡を感じさせない。


「晋太郎!」


「んだよ?」 


春人が元気いっぱいに話しかけてくる。こいつが犬なら、しっぽを振り続けているかもしれない。


「ぼーっとしてると、修一みたいにぶつかっちゃうぞ」


「は?」


封じ込めていたはずの感情の蛇口がそっと緩められる。


「だから、ぶつかっちゃうよ」


「お前流石にそれは笑えないわ」


春人は変だ。いつも返しは面白いけれど、言っていいことと、悪いことはわきまえているやつだと思っていた。


「あ、今日の道具出し俺らだ」


おさきに、と春人が逃げるように去っていく。


「ちょっと、待って」


細かった流れは、次第に太くなっていく。


「なに?」


春人を呼び止める。口角が少し上がってるような気がする。それを見て、蛇口がより一層緩められる。


「修一が死んだこと、どう思ってる?」


黒い水でつっかえていた蛇口が、再び透明な水を流し始めた。


「どうって。気の毒? かわいそう?」


お母さん泣いてたもんな、と春人は他人事のように付け加えた。


「お前知らないのか?」


「何が?」


春人はひょうひょうと答える。


「修一が、どうやって死んだかだよ」


映像が脳内で再生される。ドッ、ガッ、、、シュワー。最初から決められていたことのように、一連の動作は行われた。


「事故だろ。何かの」


ぱっちりと開いた春人の目は、晋太郎と合わない。


「何その言い方。死ぬことわかってたみたいじゃん」


「わかってたんだよ」


ルール通りに行けばそうなるってわかってた、と春人は床を見つめている。そこに何かがいるみたいに。


「帰る日を超えちゃったんだ。アイツは」


「帰る日って何?」


「あー、いいよ別に。俺もタイムスリップしてるし」


周りを見て春人は続ける。


「晋太郎がタイムスリップしてるのは目に見えてわかったよ。だって急に夏祭り誘うんだもん。赤星さん狙えってさ。びっくりしたよ。修一以外にもいたなんてさ」


「修一がタイムスリップしてることも知ってたのかよ?」


そう言い返しながら、晋太郎は脇に嫌な汗を感じる。


「知ってたってか、はじめからそれが狙いみたいなとこあったし」


「狙い?」


「初めから修一を殺すつもりだったんだ」


晋太郎は練習着の袖をぎゅっと掴んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ