20/28
繰り返してる
ほら、と修一は錠剤のように小さいカプセルを取り出す。
「その反応。やっぱわかってんだね」
修一は、大きく振りかぶる。
「え、ちょっと、待」
晋太郎の言葉を待たずに、ヒュン、と小さい粒が近くのやさい畑へと投げられる。
「それは帰りの、」
晋太郎はリュックを背負い直す修一になんとか声をかけた。
「違うよ」
修一は歩き出す。
「行きのカプセルなんだ。あれ」
晋太郎の理解が追いつかなくなる。
「あれは赤だっただろ。赤は行きだよ。そんでお前が持ってるのが多分青」
確か、ベッドの近くに保管したそれは青だったと思い出す。
「戻れないんだ」
深刻なことのはずなのに、修一の顔は全くそれを感じさせない。
「どうすんの? 超えたら死ぬらしいよ」
ありえないと思うけど、と晋太郎は明るく努める。
「そう聞かされたけど、死ななかった。またもとの日に戻されるんだよ」
「もとの日っていつだよ?」
「タイムスリップしたその日だよ」
いつも分かれる道を過ぎても、修一は進み続ける。
「ずっと中学2年から卒業までを繰り返してる」
終わらないんだ、と修一は言った。




