お前がそんな大人なはずがないから
「6組の指揮者お前なの?」
今日はバレー部と体育館を分け合ったので、あまり疲れていない。
「あー、なんか誰もやる人いなくってさ」
修一は石を蹴ることに意識を集中させていて、あまりこちらを見ない。
「でもさ、合唱なんて自習時間にしたほうがいいって前盛り上がったじゃん」
「そうだっけ?」
忘れたわ、と頭をかいているけれど、随分最近の話なので、そんなはずはないと晋太郎は思う。
「ていう俺も指揮者なんだけどね」
「は? なんで?」
修一が蹴っていた石を道に置き去りにする。顔が晋太郎の方に向く。
「優勝したいから」
「いやいや、ありえないっしょ」
「なんで?」
「お前がそんな大人なはずがないから」
失礼しちゃうわ、と晋太郎はとぼける。
「お前さ、本当は二回目だろ」
肩がビクンと上がるのを感じる。
「夏祭りも一回一緒に行ったよな」
2回目ってなんだよ、と言ったけれど、修一が、話し続けるのを見て、自分が声を出していないと気づく。
「なんか変だと思ってたんだよ。シコってることをからかかったときとか、春人に赤星さんのことで茶化されたときとか」
返しが中学生っぽくないなって、と修一は、バックを漁る。




