格闘技をやったほうが稼げそうな男
白崎さんと二人になった晋太郎。
「あれ? 春人くんは? ゆりもいない?」
「射的行くって。グッズ取り行くって言ってた」
「お似合いだね。あの二人」
だよね、と晋太郎も相槌を打つ。不自然な間が開かないよう、なんとか言葉をつなげる。
「せっかくだし、俺たちも何かしようよ」
せっかくだし、って何だよと自分にツッコミを入れる。
「いいね! 花火見ちゃう?」
でも、白崎さんは意外とノリノリだ。
「見たい! でも喉乾いた」
白崎さんの指差す先にはタピオカ屋が店を構えていた。お祭りに出すか普通?と斜に構えていると、その値段の高さに晋太郎は腰を抜かす。
「600円もすんのこれ? 高すぎない?」
「いやいや普通でしょ。タピオカ飲んだことないの?」
ない、と晋太郎は堂々と答える。
「げ、私300円しかない。唐揚げ食べすぎたー」
「じゃ、割り勘しよ」
「えー、おごってよ」
「家帰れなくなっちゃうから勘弁して」
野宿すればいいじゃん、と白崎さんは渋々300円を渡してくる。
「タピオカ一つください」
格闘技をやったほうが稼げそうな男が、黒い粒の入ったミルクティーを差し出してくる。
「んー! おいひい!!」
プリプリしたタピオカと砂糖のたくさん入ったミルクティーがやみつきになる。晋太郎は「はい」と白崎さんにそれを渡す。
「うん、600円するだけあるね」
あ、と気づいたときにはもう遅かった。さっきまで晋太郎の口に入っていたストローが、白崎さんの口にある。
「あの辺り座ろうか」
動揺を悟られないよう、間接キスのことはあまり考えないようにする。
「あー疲れた」
疲れなんか感じる余裕が無いほど緊張しているが、何も言わないとソワソワしてしまうのでとにかく口を動かす。
「もうすぐ花火だね」
「だね」
パシュ、と真っ黒な空に花火が上がる。
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