好きなんだ、晋太郎
【4人でお祭りいかない?】
中2の夏休み、アイコンをスラムダンクの流川に設定している赤星さんからLINEが来た。
【いいね! 修一誘ってもいい?】
【ok】
とかわいいスタンプと共に集合場所を教えてもらう。
当日、なけなしの小遣いをパスモにチャージし、修一と駅へ向かった。
「おお、来た来た」
「来たよ。電車賃高すぎ」
と話しながら、左に並ぶ同級生に晋太郎は心を奪われる。
「バスケ部の人と来るんじゃ?」
「あれ? 言わなかったっけ? 白崎ちゃんだよ」
クラス被ったことないんだっけ、と赤星さんは気にせず歩き始める。
白崎さんは合唱部だ。黒い髪を一つに結んで、恥ずかしそうにこちらを見ている。物静かなイメージがあったので赤星さんと仲がいいのは意外だった。
「気使わなくていいからね」
「あ、うん」
晋太郎は白崎さんから目が離せなくなった。
甘いものが大好きで、喉が詰まるんじゃないかというくらい口をいっぱいにして、楽しいときは笑って、疲れたときは重そうに足を引きずる。そんな白崎さんの素直な姿を、晋太郎は羨ましく思った。
「ちょっと手洗ってきていい?」
ラムネを手にこぼしてしまった修一が、晋太郎をおいて行ってしまう。
「俺、妹にお土産買ってくわ」
「じゃ、あたしも行っていい? 弟の分買わないとだし」
晋太郎は男バスの後輩が起こるシーンを想像した。
「でも修一いるし」
「私待つよ」
白崎さんが、前から決まっていたことのように答える。
わかった、すぐ戻るわ、と晋太郎は赤星さんと並んで歩き出す。沈黙を恐れたが、そんな心配は不要だった。
「何買う?」
「んー、安いの。とにかく安いのがいい!」
ケチだなー、と赤星さんが目をつむって笑う。
「実はさ、このまま2人ではぐれちゃうつもりでいるんだ」
「え? なにそれ」
赤星さんは意を決してあれを伝えてくるかもしれない。バクバク、と心臓が働き、顔に血を送り込む。
早く買っちゃおう、と晋太郎は笑って受け流そうとする。ぐい、と袖を掴まれた。
「好きなんだ。晋太郎」
「あ、えっと」
「のバスケしてる姿」
「そりゃ俺は上手いからね」
大げさに言って、ツッコミを待ったけれど、赤星さんの言葉は続く。
「あと晋太郎も。だから付き合ってほしい」
いつもは笑ってくる赤星さんが、まっすぐに見つめてくる。