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お天気キャスターに似ていて透明感がある
視線の先に人らしき影が倒れている。工藤晋太郎は、その人をスルーするつもりでいた。けれど、だんだんと近づくにつれ、その人が女だとわかったので、助けることにした。
「大丈夫ですか? 立てます?」
今日学校で一言も話さなかったから、喉が支える感じがする。反応がない。晋太郎は腹筋に力を入れてもう一度問いかける。
「大丈夫ですか? 聞こえーてますかー」
「…ず」
「はい?」
晋太郎は眉毛を上げて聞き返す。
「…水」
「あー、水ね。はいはい」
背負った通学バックから水筒を取り出す。サーモスの水筒は、氷が溶けなくて冷たい水をいつでも飲める。晋太郎は自分が一口飲んだあと、それを差し出した。
ゴクリゴクリ、と冷たい水が女の喉を鳴らす。真っ赤だった顔が白くなっていく。晋太郎はさりげなく女の顔を見る。お天気キャスターの誰かに似ていて、透明感があった。
「ありがとう。助かった。お礼にタイムスリップさせてあげる」
「へ?」
晋太郎は中が空になった水筒を受け取る。