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ゆるい短編

天使と悪魔

作者: 閑古鳥


「ぼく、きみがすき。きみがだいすき!」

 たどたどしい声で小さな悪魔は笑った。それはありえないほどの幸運と偶然で生まれた愛だった。


 小さな悪魔は悪魔のくせに人を殺す事が嫌いだった。人を殺せない悪魔は魔界から追放する。それが魔界の掟だった。その為にこの小さな悪魔は魔界から追い出され、独りぼっちで天界へと迷い込んだ。

 小さな悪魔はそこで疲れてしまった。食事も睡眠も無いまま迷い続けて力尽きて道の端っこで眠りに落ちた。眠ってしまった小さな悪魔を見つけたのは長生きの天使だった。

 悪魔は言葉を覚えるより先に人の殺し方を教えられる。悪魔にとって一番大切な事がそれだからだ。だから人を殺していない悪魔なんて普通は居ない。それゆえに長生きの天使は小さな悪魔に興味を持った。人を殺した気配のない小さな悪魔に話を聞いてみたくなった。

 その気まぐれで小さな悪魔の運命は変わった。 小さな悪魔は何も知らなかった。言葉も感情も生き方も。だから長生きの天使はそれを教えた。

 話が聞きたかったから言葉を教えた。どうして人を殺さなかったか知りたかったので感情を教えた。死んだら話が聞けないから生き方を教えた。

 それは親のようで兄のようで姉のようで先生のようで師匠のようで。 長生きの天使は小さな悪魔に愛を注いだ。自分の好奇心のためだったがそれは確かに愛だった。小さな悪魔にとってそれは不思議な感覚だった。

 小さな悪魔は長生きの天使に何か不思議な感情を持った。それは暖かくて輝いていてそれでいて切ないものだった。小さな悪魔はそれが何か友達の動物に尋ねた。 友達の動物はそれはきっと好きって事だよと答えた。

 小さな悪魔は好きを知った。この暖かくて輝いていてそれでいて切ない感情を好きだと知った。だから長生きの天使にそれを伝えたかった。ずっとずっと大事に育ててくれたあの優しい人にそれを言いたかった。だから急いで飛び帰ってそれを叫んだ。

「ぼく、きみがすき。きみがだいすき!」

 この暖かくて輝いていてそれでいて切ない感情を、好きという大切な思いを、優しくて大事な長生きの天使に持ててよかったと。長生きの天使はその言葉に驚いて笑った。

「うん。私も、君が好きになってくれてすごく嬉しい。私も君が好き」

 こうして2人は一緒に笑った。互いが互いを大好きだったのが幸せで嬉しくて笑った。

「ぼくね、きみをすきになれて、すっごくうれしい!」

「私も、すごく嬉しい」



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