カオスは好きじゃない
どこから情報を聞き出したのか分からないけど、王子達、正確に言うと第一から第七までの王子達がやって来た。おいこら自分達の仕事しろよ。あぁ、私が創ったこの人達でまともなやつ一人も居なかったわ。
て言うかお前らネイヴィスとそんなに関わったことないくせにネイヴィスを悪者扱いしてやんなよ。お前らの妹だぜ?ネイヴィス。私がそうさせたのが悪かったかもだけど、よーく考えれば分かることだと思うんだよ。うん。…何様だよ。
「お兄様達、入るときは必ずノックをしてください。あと、お静かに願います。お母様に気づかれてしまっては、私が危ないのです」
取り敢えず私は冷静に対処する。まじで母親が離宮にいるから騒ぎがバレたら自殺しちゃうかもしれないじゃん。やめてよ。
「ネイヴィス、なぜここにカルメがいるんでしょうか?」
その圧消してくれない?この腹黒第一王子が。いかにも私のこと敵だと見なしてるよね。あーもーめんどくさい。王子達ほんとめんどくさい。大事なことだから二回言った。
「体調を悪くした私を気づかってお見舞いにきてくれたの」
「お前はいつも体調悪いじゃないか。見舞うだけ無駄だ」
第七王子ウィルーー。ちょ、おま、なんてこと言うんだよ。て言うか、こんなシーンシナリオにはなかったよね?もう大分外れてきてるんだなぁ……。どうしよ。まぁ、いいんだけどさ。うちの従者が射殺さんばかりの睨み効かせてますけど、大丈夫ですか?
彼、隣国乗っ取って王になるルートありますよ?
「お嬢様を侮辱するなら退出願います」
「あの、どうして皆さんはネイヴィスさんに冷たいんですか?……こんなにも優しい人なのに」
カルメ、今は貴女の出る幕じゃないって!よけい修羅るって。あいつらネイヴィスのこと好きじゃないんだって。
「おい女、あいつは正妃の人形だ」
あ……。やめて、…やめてよ。ん?なんでこんな感情が溢れてきたんだろう。そんなこと無いのに。大丈夫、ネイヴィスは言いなりだったかもしれないけど、代わりの私は自分の意思で動くから。
「アリスお兄様、確かに、私はお母様に縛られた、無力な人形でしたわ。ですが、変わると決めました。いつまでも、縛られた人形のままでは嫌なのです!」
これは、二人の決意。言葉にすれば、きっと実現する扉は開かれる。ただ、それを見つけることが出来るかどうかだ。
「あー、アリス、取り敢えず出ような」
第五王子クリスはそう言って第四王子を連れて退出していった。まぁ、アリスには事情もあるしね。信じていたメイドに攻撃されて、片目が見えなくなったって言う。…あんなきれいな瞳なのに。ストーリーと言う名の幻想が現実になってしまったと思うと、すこし心が傷んだ。
この世界に神様がいるとしたら、私は迷わず言うだろう。「このクソ神がっ!!!お前なんてことしやがんだよ!!」と。
「カルメさん、ネイヴィスなんてどうでもいい人、放っておいて僕の研究に付き合ってくださいよ」
第二王子リオネも、他の兄達のように残念だ。こいつは研究にしか興味がない。だから、本気でネイヴィスのことなんてどうでもいいと思っているのだ。クソめ。
私このゲームだけ、攻略対象達を残念にしすぎたかもしれない。いや、売れたよ?売れたけどさ。キャラ投票でこいつら皆票が私達と格差だったよね。
一位、ルネット二位、ネイヴィス三位、フランシス四位、ライト五位、八千票開けてのレオン六位だから。
ヤバイよね。レオン一応メインヒーローだよ?メインヒーローが普通の攻略対象はまだしも、ヒロインと隠し攻略キャラと悪役令嬢と、ましてや悪役令嬢の従者に負けるなんて。
皆、ルックスだけは本当にいいのに。大御所イラストレーターさんのイラストを、私のキャラ設定とストーリーで踏みにじったわこれ。
「はっ、こんなことで時間を食ってしまったな。ネイヴィス、お前のせいだ。俺は図書室に戻る」
第七王子は悪口しか言わねぇじゃねぇかおい。そうだよ、こいつ堂々のドベだったよ。図書室いくってなんの宣言だよ。そしてネイヴィスのせいにするなよ。
お前達が私の邪魔しに来たんだろうがよ。はぁ、ほんと、私なんでこのゲームの依頼受けちゃったんだろ。八つ当たりは良くないわね。結局は私の設定がゴミだったわ。
「あらぁ、みんな冷たいわねぇ。ネイヴィス、変わると決めたんならしっかりしなさいよ。ほら、そこの小娘も!!じゃ、アタシも帰るわね」
第六王子神かよ。おねぇ口調に目がいきがちだけど、結局この人はいい人だ。だからランキング五位だったんだよ。て言うかなんで五位だったんだろ。上の人たちが印象強すぎたか。一位でよくない?おねぇ口調が嫌なの?え?
他の王子がクソ過ぎて、彼も残念なイケメンのはずなのにライトの後ろ姿が輝いて見える。
「んーー、流れ的に俺も帰るねー。ネイヴィス、ダンス結構楽しかったよ。カルメちゃんもまた、遊ぼうね」
うーん、こいつは論外。早く帰れやちゃらんぽらん。カルメの顔がひきつってるじゃんか。さっきから皆の態度にだんだん冷めた目を向けてたけど。これ、王子達大丈夫ですか?ヒロインに引かれてますやん。
そして、沈黙が訪れた。……なんで?いや、分かったわ。原因わかったわ。
「第一王子様、帰ってもらえません?」
そう、まだこいつがいる。
「いやぁ、いたら悪いかな?」
「はい、凄く」
「えっと……あ、そうですね!!あの、お茶一杯飲んだら帰るって言うのはどうですか?」
カルメが言うと影響力高そうね。
「じゃあ、そうしよう」
ほらきた。
若干の和やかな空気は流れるものの、まだ氷のようなオーラがフランシスから出ていた。
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