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優しい人とお祝い


ルネットが焦った様子で私の方へ来るから、何事かと思った。ネイヴィスは、ルネットの前では優しいお姉さんを演じなくてはならない。あとちょっとでパーティー終わるし、少しの辛抱だ。私!


「なにかしら、ルネット」


穏やかな笑顔で彼の方へ振り向く。この人シスコンなんだよなぁ……。まだ。ルートによっては姉を隣国に嫁がせるひとだけど。他の王子に比べればネイヴィスの対処を優しくしてみたんだよ。ちょっとシスコン残してみた。


「先程、ユーリ第三王子と踊っていたのを見たけど、踊ってよかったの?顔色も悪かったし…」


どうやら姉を心配してのことだったらしい。なんてシスコン。もじもじしながらそう言う彼はあざとい。ちょっとルネットも性格悪いとこあるよね。まぁ、この中じゃ一番まともでキャラ投票メインヒーロー無視しての一位だったけど。


「ふふっ、ルネットったら心配性ね。今日は少し体を動かしたい気分だったのよ。いつもベッドに伏せてばっかりじゃ、体に良くないでしょう?それに、今日は私の誕生日会だもの。主役が踊らなくてどうするのよ」


ころころと笑って見せる。それをみたルネットは、驚いていた。まぁ、ネイヴィスこんな発言しないしね。いいわ。これから私の印象を変えていけば良いのよ。人生長いし、15年なんて短いものだわ。


「そうですね。姉様さすがです。でも、体には十分気をつけて下さいね。今日も倒れたってカルメに聞きましたよ?」


出たなヒロイン。優しすぎか。おー、近くに足音が聞こえる。確実にこっちに向かってるよね。これ。


「ネイヴィスさん!」


はい来たー。カルメ来たー。どう対応するかな。


「……あら、カルメさん。どうなさったんですの?」


「私、ネイヴィスさんに言いたいことがあるんです。少し、お話ししませんか?」


あれ、こんなのシナリオにあったっけ?私こんなの書いてないよ?まぁ、現実なんだし、シナリオ通りのことをするとは限らない…か?私みたいなイレギュラーな人物が存在するから、世界が歪んでしまったのかもしれない。

別に、いいけどさ。私はそこまで気にすることはなかった。


話してくるかな。


「えぇ、場所を変えた方が良いんじゃないかしら」


「え、姉様どこ行くんですか?!」


そんなルネットの顔を見て微笑むと、ルネットはしゅんとしながらも「また後で僕とも踊ってくださいね」と言って去っていった。


私達は人の少ないバルコニーに出ることにした。夜会用ドレスでバルコニー出るのは寒いって。あー、ストールでも纏ってくればよかったなぁ……。


「あの、ネイヴィスさん」


おっと、いきなり本題に入るねー。なに言われるかわかんないから怖い。いや、どっしりと構えとかないとナメられるわ。とりあえず敵意が無くなったことを伝えるのが今日の目標ね。いけるわ。


「なにかしら?」


私が微笑むと、カルメは意を決した様子で話始めた。


「今朝のネイヴィスさんを見て、私思ったんです。ネイヴィスさんは囚われただけの、普通の女の子だって。私!ルネットさんを好きになることはないと思うし、ネイヴィスさんの大切なものを奪うつもりはありません。……私達、和解し合えると思うんです」


あぁ、夢のやつね。大正解よ。さすがヒロインね。意地悪してきたネイヴィスによくここまで真っ直ぐに意見を言えるわ。えぇ、夢美の自慢の主人公よ。私が本物のネイヴィスだったら、きっとこう返したでしょう。「貴女と……仲良くする気なんてないわ!お願いだから、私に関わらないで」と。


でも、私は違う。敵の敵は味方って言うじゃないつまり、ネイヴィスの敵がカルメなら、私がカルメを味方につければ良いじゃない、と言うことだ。我ながら素晴らしい意見だわ。


「カルメさ…」


「あの後!私後悔したんです。ネイヴィスさんを傷つけると知らずに、適当に謝って、嫌な思いをさせてしまった。…私がこの王宮に来なければ、正妃様からの縛りが、強くなることはなかったのに……ごめんなさい…」 


遮られたけど、まぁいいわ。カルメはなんて良い子なんだろう。こんな薄汚れた大人なんかが関わってはいけない気がするわ。これも大正解ね。


少し本編には描かれていない秘密の情報を教えようかしらね。

カルメが来ることによって、ネイヴィスの母親は壊れ、ネイヴィスを更に縛り付けた。


ネイヴィスはカルメに関わるしかなかった。


本当は助けてって言いたかった。母親を捨てることが出来ないから、その思いを閉じ込めて、カルメを敵対した。


王子達はネイヴィスの思いに気づけなかった。だからネイヴィスを悪者にして、端へ追いやった。


彼女は、この離宮に住む、独りぼっちのお姫様。


ごめんなさい、ネイヴィス。変わりに私がネイヴィスを幸せにするから、どうか作者を恨まないで。

えぇ、幸せになりましょう。


「……本当は私、貴女が羨ましかったんですの。私には無いものを全て持っている貴女が。昔から関わることの禁止されていた兄達と仲良くして、お父様にも可愛がられて…。貴女と仲良くしたかったけど、お母様が嫌がるから意地悪しか出来なくて、貴女はルネットと少ししか話していなかったのに、ルネットまでとられてしまいそうで、貴女に八つ当たりしてしまいましたわ」


ネイヴィスは、瞳から涙をこぼした。これは、ネイヴィスがカルメに言いたかったけど、言えなかった心の声。彼女が口に出して言うことは出来なかったけど、せめてもの、変わってしまった償いとして、言わせてもらったわ。

これが、現実世界でなければよかったのにね。貴女もそう思う?……誰もいないか。何度もごめんね。


「わ、わわ、泣かないで下さい……。あの、これ、よかったら使ってください」


優しさが身に染みるわぁー……。これ、本当の母親からもらった形見のハンカチじゃない。使うのがしのびない…。でもせっかく貸してくれたんだし、使うとするか。


「……ありがとう」


「いえ、そんなっ……ネイヴィスさんって、笑うと可愛らしい方なんですね。初めて知りました」


そう笑うカルメの顔は、優しさで溢れていた。


「私、決めましたの。これからは私らしく生きるって。出来ることは限られているかもしれないけど……。もしよかったら、私と友達になってくれないかしら」


さっきまで邪心しかなかったけど、この子なら、きっと一緒にいたら楽しそうだなー、って思ったから。

大の大人が、14歳の女の子に必死で友達になってと頼むこの状況を考えたら、少し精神的に来たけど、今は15歳だし!

若いっていいね!ははっ。


「はい!喜んで」


彼女は花の咲いたような笑顔で、了解の返事をくれた。よし!第一関門突破!!


私やるじゃん。この頃まともなコミュニケーションとってなかったから、ひやひやしたわ。


「あ!忘れてた!」


「お誕生日、おめでとうございます」


そう言ってカルメは、私にネイヴィスの花の刺繍がされたハンカチをくれた。


「……ふふっ、ありがとう」


心が、あたたかくなる。私は自然と笑いがこぼれていた。


「大切に使うわ」


そのあと、ルネットと一回踊ってたら、今日の夜会はお開きになった。


お読み頂きありがとうございました。今日も更新出来ました!

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