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始まりは死亡フラグから


「貴女が…、貴女がいなければ全てが上手くいったのに!!」

ネイヴィスは、ぼたぼたと涙を流しながら叫んだ。

「ご、ごめんなさい」

私は謝らなければいけない気がして、小さな声で彼女に謝った。

「それで……」

「……?」

「それで!全て終わるとでも思ってるの?!ねぇ?!私の…、私の大切なものは、全部誰かが持って行っちゃうんだ」


それは、確かにネイヴィスの人生を物語っていた。最初は大きな声だったのに、徐々に小さく、自信をなくしていく彼女を見て、私は思わず顔を歪ませた。きっと、私がネイヴィスに語りかけた所で、彼女を苦しめてしまうだけだろう。


「もう、これ以上私のことを……いや、お母様を壊さないで!!!ルネットを…、私の大切な家族を…」


「  奪わないで  」


ネイヴィスはそこまで言うと気を失い、倒れてしまった。彼女の悲痛な呟きは、私の頭に響く。

いつものネイヴィスとは様子が違ったし、意地悪もしてこなかった。ネイヴィスは目を瞑っていて、こうして見ると綺麗だなぁ、と不躾ながら思ってしまう。


私、ネイヴィスのことは苦手意識のが強かった。だって、会って早々闇魔法をぶつけようとして来たし、お兄様やルネットと話そうとすると何かと邪魔をしてきたから。

でも、私は大切なことを忘れてしまっていた。ネイヴィスは、私と同じ普通の女の子だと言うことを。


酷い事を言われたら傷つくし、怖いこと、辛いこと、…きっと、恋だって普通にする、女の子なのだ。

きっと、何かの理由があるのでは無いかな?と思ってしまう。

そして私は、無責任な言葉で彼女を傷つけてしまった。改めて自分の行いが恥ずかしくなってくる。


ネイヴィスの叫びが、頭から離れず、心を苦しめた。


「失礼します」


ネイヴィスの従者、フランシスさんは彼女を軽々とお姫様抱っこで抱き上げ、去ってしまった。一瞬だけ、彼に睨まれた気がしたが……気のせいだろうか。


一人になり、私の瞳からは涙がこぼれ落ちた。


……どうしてだろう。




◆◇◆


何で今?!これが私の夢に出てくるわけ?はぁ……。起きたら最悪な状況だし、もう、ほんとついてない。


「ごほっ、ごほっ、グハッ……はっ」


血とか吐いちゃってさ。日常過ぎてあんまり驚かないけど。さすがに今日のは結構きついわ。呼吸出来ないし……。

これ、死んじゃう系のやつ?


まぁ、もう残された時間も時間だったし、それがちょっと早いだけで、仕方がないだろう。

入院せずに家で死にたいって言ったのも私だったしね。大切な人もいないし、家族にすら見捨てられたし……、愛人の子だからっ、てね。

ここ数年本家に戻らないかとか言われてるけど一回見捨てられた家族の手を誰がとるかっての。


心残りは……うーん。そうだなぁ、そう言えば、新しい仕事の依頼来てたっけ。ごめんなさい、お断りしときます。


もしかして、さっきの夢は私の死を知らせるやつだったのかもしれないな。あの作品は、私が最後に手掛けた乙女ゲーム『カルメと8人の王子様』の場面だった。


しかも、私に似せて作ったネイヴィスが倒れる場面のやつ。

あ、これが死亡フラグってやつね。

乙女ゲームのシナリオライター初めて結構たつけど、初めて感じたわ。


頭は冷静なのに、体はもう限界のようだ。


あーーーーー、これ、死ぬわ。


明日、私の……誕生日だったんだけどな。


声が空気しか出なくなって、乾いた笑いすらこぼせない。生理的に出てきた涙が、原稿用紙に落ちる。今時古いなんて言わないで。たまたまだから。今はデジタルでやってるし、まぁ、もう、関係……ない…か……


そして夢美は意識を手放した。……彼女は気づいていなかった。夢美の見た夢が、途中から少し夢美の書いたシナリオとは違っていたことを。





明けましておめでとうございますーー!伊戸菜緋緒李です。ストック終わったら多分更新落ちちゃうかもですが、頑張ります!!

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