3つの復讐
次の日の放課後、山田は田山に言われた通り教室を出て図書室で時間を潰した後、誰もいない教室に戻ってきた。そこにはすでに田山がいた。
「よっ、山田、来たな。」
山田は静かにうん、と言った。
田山はそれを合図に、山田をいじめている小野分のロッカーから置き勉していた国語の教科書を、小蚊のロッカーからは英語の教科書を、子分二のロッカーから数学の教科書を取り出した。
「さ、これを使え。作業を始める。」
田山は教科書と一緒に山田に大きなボンドを手渡した。
「これ、どこで買ったの…?高かったでしょ…お金、払うよ。」
「いいよ、そんなの。俺が計画したんだ。それに、これは俺の転校生パワーで極秘に入手したものだ。気にするなよ。」
田山はまた、「転校生パワー」という怪しいワードを出してそれ以上詮索させないようにした。山田は首を傾げつつ、田山からボンドを受け取る。
いよいよ作業が始まる。2人はそれぞれボンドを片手に机に座り、教科書の紙のフチを丁寧に糊付けし始めた。教科書のページ数は100ページを超えているが、山田も田山も部活には所属しておらず、放課後は暇である。一枚ずつ、もう開けないように、かつ、外から見ればなんの異変も無いように、フチだけを綺麗に糊付けした。
田山は30分ほどすると、疲れたと言って鞄から菓子袋を取り出した。学校にお菓子を持ってくるのは校則違反である。真面目な山田はヒヤッとする。
「田山くん…先生に見つかったらやばいって…」
「なんだよ山田。お前も食えよ。美味しいぞ。」
山田は断ったが、田山がしつこかったので山田は仕方なくお菓子を摘み、田山と世間話をしながら作業を進めた。
それからしばらくして、田山は山田より早く、教科書を閉じる作業を終えた。すると今度は鞄から小野分の上履きを取り出した。
「山田、お前の上履き、持ってきたか?」
山田は作業を一旦ストップして、鞄から小野分達にゴムを切られた上履きを取り出し、田山に渡した。
田山は山田の上履きのゴムを、小野分の上履きに重ねる形でボンドで貼り合わせ、上履きを合体させた。計画を聞いた時は上履きを盗むのはさすがに駄目でしょ、と思ったが、改造するだけなら大丈夫という田山の言葉に妙に納得して、黙って作業を見ていた。
上履きはゴムの部分で貼り合わせられ、右足2つ、左足2つが合体した、全部で四足の上履きを作り上げた。
異様な上履きの姿に、山田は思わず吹いてしまった。
「小野分の足はきっと4本なんだろう。」
田山が真面目な顔で言うので、山田はおかしくてたまらなかった。
山田はその様子を見ながら、最後の一冊の教科書を貼り合わせる作業を進める。こうやって友達と放課後に作業するなんてことは、今までの山田には全く考えられないほど、平凡で学生らしい幸せだった。
そろそろ作業が終わる、という時、教室のドアがガラッと空いた。
まさか…部活終わりの小野分たちか…?
山田がドキドキしながら扉に目線をやると…
読者の方からBL要素はありますか、という質問がありましたが、無いです。
期待していた方はすみません。