逆襲
〜15年後〜
「ねえ、今日、中学校の友達と会いに行くって言ってたっけ?」
「うん。帰るのちょっと、遅くなるかも。」
「浮気じゃないよね?」
「何だよ。不安なのか?」
山田は、その女の人を強く抱きしめて、キスをする。
「あなた、大好き。」
「俺も。行ってくるよ。なるべく早く帰るようにするよ。またメールするから。」
そう言って、玄関を出た。
山田は今、29歳だ。今日は久し振りに、中学で友達だったみんなと飲みに行くのだ。
「あれ?眼鏡忘れたな。」
山田は今はコンタクトなのだが、今日は懐かしいあの頃のように、眼鏡を持っていこうと思っていた。
もう一度部屋に戻って眼鏡を探す。
机の引き出しから、黒縁の眼鏡を取り出した。
「懐かしいな。」
そう言いつつ鏡を見ながら眼鏡をかけてみる。
「俺、眼鏡全然似合わないな。そりゃ彼女できるのが遅かったわけだ。」
山田はくすっと笑う。
『山田、お前目悪いから知らないかもだけど、眼鏡外したらまあまあイケメンだぞ?』
ふと、心の中で、声が聞こえる。
あれ?
誰だっけ…?
それは、あまりにも懐かしい声だった。
『…山田くんってさ、いじめられてるの?』
そういえば、あの頃はかなり派手にいじめられていた。悔しかったし、苦しかった。苦しかったけど、友達に救われたんだよな。
あれ…?
山田は心の中で繰り返される優しい声が、妙に今の自分の声と似ているのに気付く。
あれ?
右手を見つめる。
帰り道、やけにじんじんと痛んでいた右手。
図書室で話していた人。
いじめられていた自分を救ってくれた人。
放課後いつも一緒にいた人。
自分の前に座っていた誰か。
確かに笑っていた誰か。
忘れてはいけない、誰か。
『俺の、転校生パワーで』
山田ははっとする。もしかして…?
そう思いつつ、玄関のドアに向かって、転校生パワー、と小さい声で言ってみる。
が、何も起きない。
今度はビームを出すみたいに手をドアに向けて、転校生パワー、ともう少し大きい声で言ってみる。
が、やっぱり何も起きない。
俺、何してんだろ。山田は恥ずかしくなり、カバンを持つ。そうして玄関に振り向くと…
何と、ドアに怪しい穴が開いている。中身が虹色で、それは中に入ればいかにも過去や未来にワープできそうな怪しい穴だ。山田は想定外の出来事に、固まる。
『目には目を、歯に歯を、山田には山田を、だ。』
ああ、そういうことか。
山田はくすっと笑った。
「行くか、逆襲。」
全てを書くことはできませんでしたが、「山田くんの逆襲」はこの部分で完結です。
最初から読んでくださった方、こんな形になってしまい申し訳ありませんが、読んでくださりありがとうございました。




