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山田くんの逆襲  作者: やゆよ
お知らせ
22/22

逆襲

〜15年後〜


「ねえ、今日、中学校の友達と会いに行くって言ってたっけ?」


「うん。帰るのちょっと、遅くなるかも。」


「浮気じゃないよね?」


「何だよ。不安なのか?」


山田は、その女の人を強く抱きしめて、キスをする。


「あなた、大好き。」


「俺も。行ってくるよ。なるべく早く帰るようにするよ。またメールするから。」


そう言って、玄関を出た。


山田は今、29歳だ。今日は久し振りに、中学で友達だったみんなと飲みに行くのだ。


「あれ?眼鏡忘れたな。」


山田は今はコンタクトなのだが、今日は懐かしいあの頃のように、眼鏡を持っていこうと思っていた。


もう一度部屋に戻って眼鏡を探す。

机の引き出しから、黒縁の眼鏡を取り出した。


「懐かしいな。」


そう言いつつ鏡を見ながら眼鏡をかけてみる。


「俺、眼鏡全然似合わないな。そりゃ彼女できるのが遅かったわけだ。」


山田はくすっと笑う。


『山田、お前目悪いから知らないかもだけど、眼鏡外したらまあまあイケメンだぞ?』


ふと、心の中で、声が聞こえる。


あれ?


誰だっけ…?


それは、あまりにも懐かしい声だった。


『…山田くんってさ、いじめられてるの?』


そういえば、あの頃はかなり派手にいじめられていた。悔しかったし、苦しかった。苦しかったけど、友達に救われたんだよな。


あれ…?


山田は心の中で繰り返される優しい声が、妙に今の自分の声と似ているのに気付く。


あれ?


右手を見つめる。


帰り道、やけにじんじんと痛んでいた右手。


図書室で話していた人。

いじめられていた自分を救ってくれた人。

放課後いつも一緒にいた人。

自分の前に座っていた誰か。

確かに笑っていた誰か。

忘れてはいけない、誰か。


『俺の、転校生パワーで』


山田ははっとする。もしかして…?

そう思いつつ、玄関のドアに向かって、転校生パワー、と小さい声で言ってみる。

が、何も起きない。


今度はビームを出すみたいに手をドアに向けて、転校生パワー、ともう少し大きい声で言ってみる。


が、やっぱり何も起きない。


俺、何してんだろ。山田は恥ずかしくなり、カバンを持つ。そうして玄関に振り向くと…


何と、ドアに怪しい穴が開いている。中身が虹色で、それは中に入ればいかにも過去や未来にワープできそうな怪しい穴だ。山田は想定外の出来事に、固まる。


『目には目を、歯に歯を、山田には山田を、だ。』


ああ、そういうことか。


山田はくすっと笑った。


「行くか、逆襲。」

全てを書くことはできませんでしたが、「山田くんの逆襲」はこの部分で完結です。

最初から読んでくださった方、こんな形になってしまい申し訳ありませんが、読んでくださりありがとうございました。

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