日常
この部分から再びあらすじではなく小説になります。
授業が終わり、ホームルームが終わる。
みんなが部活や家に向かう。
山田はそんなみんなを横目に、クラスを出ようとする。
「お!山田くん、今日も図書室?」
「うん。陽乃元さんは部活?」
「そう。もうすぐ演奏会あるから、頑張らなきゃ。」
陽乃元は吹奏楽部の部長になった。前期、あんなに窮屈そうにしていた陽乃元は、今じゃ本当に太陽の下にいるかのように、優しく笑いながら山田と田山に手を振った。
「じゃあ、6時に、図書室前で。」
陽乃元は子分二に耳打ちする。山田は幸せそうな2人を横目に、教科書を片付ける。かつてゴミが詰められていた机の中は、今ではすっかり整理整頓されている。
山田は図書室に行く。
そこでいつものように1人で勉強を始める。
と、図書室に広印が入ってくる。
「山田くん、やっぱりくるの早いね。」
広印は結局好きだった部活をやめた。が、やめてからの方がむしろ生き生きしている。
今は高校でテニス部のエースになる事を目標にしている。テニスの強い高校に行くため、自主トレと受験を頑張ろうと意気込んでいる。
2人が勉強していると、田山が入ってきた。
「よ!山田。もう受験勉強か?真面目かよ。」
「田山くん遅いよ〜。」
「ごめんごめん。掃除あったからさ。」
田山が山田の前に座る。
いつも、自分の前にいるこの人。
この人は、一体、何者なんだろうか。
山田は最近思う。自分は、田山の事を何も知らない。親がおらず、1人で住んでいるということもこの前初めて知った。半ば盗み聞きのような形でだが。というか、中学生でそんなの可能なのだろうか。まだ義務教育中だぞ?と山田はぐるぐる考える。
「山田、どうした?」
田山が笑う。爽やかな、笑顔。
「ううん。なんでもない。」
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午後6時。山田たちは帰る時間だ。
「じゃあ、また明日!」
校門を出て、広印は山田たちと反対側に歩いて行く。田山は大きく手を振った。
その様子を、子分二は陽乃元を待つ下駄箱から、静かに見ていた。
「じゃあな、田山。」
子分二は心の中で、そう呟いた。