魔術学院カンニング戦線異状なし
おかしい。
何か変だ。
うんそうに違いない。
俺は今、先週行った早朝テストをチェックしている。
しかし、どうも変だぞこれは。
「なんで生徒全員満点なんだ? 」
俺は右目を覆う眼帯を外してみた。
でも変わらない。
「別に俺の目が節穴という訳じゃないんだな」
俺の右目は魔眼である。
先天性の特異体質である。
この眼には魔力の流れや霊魂を見通す力がある。
「おかしいな……よしこうしよ」
俺は小走りで教室に向かう。
(この時間ならまだアイツはいるはず)
いた。
沢村まどかだ。
俺が担当しているクラスで一番の美少女で優等生。
「沢村、今暇か? 」
沢村まどかは後ろを振り返り俺を見つめる。
……なんで顔が赤面なんだよ。
「せ、先生。デートのお誘いですか? 」
「ちげーよ」
俺はテスト用紙を沢村に見せた。
1年B組全員の。
「これはおかしいですね」
「そうだろう。これは何かの魔法か」
沢村まどかは首を横に振る。
「違いますよ先生。先生には秘密を暴露しちゃいますね」
「教えてクレヨン」
「まず呪文発音テスト。これはオナラの音で教えてました。そして体力テスト。これは魔法薬検査に引っかからないように肉体強化魔法で乗り越えました。最後に筆記試験。このテストは○×クイズでしたね。消しゴムに○か×かを彫刻刀で刻んでいましたよ。消しゴムだから使ったら消しカスになって証拠隠滅です」