プロローグ01
これは俺が異世界に来る前の最後の記憶
いつも通りの起床、いつも通りの朝食、台風が県内を通過していたことを除いて普遍的な日
俺は市内の高校の美術部に所属する高校二年生であった。その日は平日で、台風の影響で珍しく休校になった日でもあった。
休校になったことを知り家の手伝いもせず部屋でダラダラと惰眠を謳歌していた時、俺は世界から消えた。
瞬きした瞬間の、本当にあっという間に
俺という存在が
消えて、しまったのだった。
次に目を開いた時には十代の見目麗しい女性がいて、今まで自分がいた部屋とは違う真っ黒な空間にいたのだ、最初は何かのドッキリか何かかと思った。ーー直ぐにその予想は裏切られた。
目の前の女性は異世界の運命を司る的な神であることを語り、自分はその世界への転移対象に選ばれたとのことだった。
最初はそりゃ喜んださ、仕方ないだろう、だって異世界だぜ?ラノベの世界だ、チートで無双してハーレムなんて安直な考えが真っ先に脳裏に浮かんだんだ。
説明を聞くと本当にその通りだった、魔法が存在する、文明レベルは中世の世界。まさにラノベのそのまんまの世界だった。
でも一度行くと帰れなくなるとのことで、俺は悩んだ。元の世界で暮らすか、異世界に放り出されるか。でも最初から俺には拒否権なんてなかったんだ。
次にカミサマが言った台詞はこうだ
【行かないなら魂が消滅しますよ】
「ふぁっ!?」
【行きますよね】
「サー!イエス・サー‼︎」
即答だった、早押しクイズのチャンピオンも真っ青のスピードだったはずだ。
【サーではなくマムでは?】
「そこ!?あ、いえ流石は女神様、わたくしのような凡人とは違った感性、感服の至りでございます!ヘッヘッヘ」
【急にヨイショしなくてもいいですよ、そんなへりくだられても困ります】
「は、はぁ、そう仰られるなら……」
…にしてもだ、美少女だ。少しウェーブのかかった亜麻色の髪に垂れ目、陳腐な表現になるが十人いたら全員二度見するであろうような容姿である。特に適度に肉付いていながらもスラッとした脚、これが素晴らしい度々周りから引かれる程に脚フェチである俺はもう目が脚ーーその一点から動かすことができない。………………舐め回したい
【何ですか人の脚をじっと見つめて、視姦でもしてるんですか?消しますよ】
「酷い!こんな稀代の純情少年がそんな卑猥なことするはずがないのに!」
【それは失礼をしました、童貞にそんな勇気はありませんでしたね】
「人の精一杯の解釈を粉砕しましたね」
【でも事実でしょう?】
「その通りですが酷い、傷つきました。責任とってその御御足を舐めまわさせてください」
【消します(断言)】
「やだなー冗談ですよ、イッツ・ジャパニーズジョーク、オーケー?あっはいわかりました大人しくしますのでなんか手に光充填してくのやめてくださいお願いします」
【それでも脚から目は動かさないんですね…では話を続けます。異世界に行くにあたって能力、魔法適性、初期に降り立つ位置を決めますので(ガサゴソ、ガサゴソ)はい、引いてください】
「クジ引きスタイルですか」
【そうですね、面倒なので】
「はい、はーい、質問よろしいでしょうか」
【どうぞ】
「この能力って要はラノベとかでよくあるチートですか?」
【そうですね貴方達にとってはそういう能力もありますが使ったら反動がすごいものが多いですね】
「使いづらそうな感じですか」
【以上で質問を打ち切ります、貴方と話してると疲れますからね。では、引いてください】
「もう少し聞きたいことがあったんですが」
【ダメです早く引いてください】
「分かりました、では能力から引きますねホイッと…えっと《識る欲の目》っていうのですね」
【よかったですね、反動が小さい奴ですよそれ】
「名前で大体想像がつくんですが…一応説明をお願いします」
【確か《識る欲の目》は見た相手の名前と職業と戦闘能力が自分にわかりやすく見えるようになる奴だったはずです】
「要は鑑定ですね、分かります。では女神様を見ましょうか…どうやったら発動するんですかこれ」
【目に力入れて見たらどうでしょう、私は見ないでくださいね、見たら消します】
「やってみますというか他に誰を見ろと…うぉっと!?」
その時、脳に無理矢理情報が詰め込まれるような感覚とともに女神様の情報が目の前に記し出されたのだった。
〔名前:クロナディア 職業:運命神、ニート、自宅警備員 戦闘能力評価:error〕
突然に目の前に現れた情報に驚くと同時に俺は叫んだ。
「ヒキニート!!?」
俺の異世界転移を導く、運命神は…ニートと自宅警備員を兼ねていたのだ…………神様がヒキニートってそれで良いのか異世界…
そんな事を考えている俺の肩に突然ポンっという音が…恐る恐る振り返ると…
【私の正体をしってしまいましたね。消します(ニッコリ】
「イヤァァァァァァア??!!」
いつの間背後に⁉︎怖えよ!?
「これがヒキニートの力か…ってうわっ前にもいるぅぅぅぅぅ!!?」
【【私が因果律に干渉して私という存在を増やしてまであなたを消し去るんですよ、感謝して消えなさい】】
「ニートである事を気にしてた!?嫌だ、運命神がニートである事を知ったら本気で消し去られるなんてあんまりダァァァァァ!?」
これ、あれだ某TRPGお決まりの目☆からのアイディアロール成功でSAN値直葬の流れだ、ただ消えるのが俺の存在に変わっただけで……それが大問題なんだが
【【うるさいですね、その通り私はニート、ニートですよ。ええ、悪うございましたね。弟に「自分の仕事ぐらいはしやがれ駄姉」とかブチ切れられながら言われてなかったら、こんな事せずに家でタダ飯食いながら年中寝てますよ。】】
「クズいですね」
【【久々なので女神っぽくしてみたら転移対象がそんな能力引きやがりましたからね。もういいかと】】
「まぁいっかで消し去られる身にもなってくださいよ」
あと全然女神っぽさなかったです。
【私は常に消しさる側でありたいと思ってますよ】
「そんな決意をしてる女神様マジラスボス、というか一人に戻りましたね」
【相手するのも億劫になってきましたので、残り二つさっさと引きやがれ】
キャラ作り甘すぎませんかね
「では魔法をガサッと《風》ですね」
【他の人の《五大》とか《空間》に比べると地味ですね】
「さらっと他の人もいるとかいう重要なこと此処で言います?」
【説明面倒なんで】
「アッハイわかりました」
他の人クジ運いいな…《五大》《空間》強そう
「魔法の説明してもらえたりは…」
【現地で覚えてください】
「ですよねー」
【言葉は通じるのでまぁなんとかなるでしょう】
言葉は通じるのか良かった良かった
【さぁとっとと引いて私を家に帰らせなさい】
もうやだこのニート
「では転移地点をガーサゴーソっと《宿屋:終末の鐘亭》…なんだこの物騒な名前」
なんで宿屋で終末とか不穏な言葉をつかってるんだ…無理に個性を出そうとしたパターンか何か由来でもあるのか
【…………………ヤベ】
「んっ?」
んーーー?不穏な呟きが聞こえたぞー?ニート女神様冷や汗ダラッダラなんですが、神様も汗かくんですね
HAHAHA
【弟に殺される…】
そんな呟きを最後に俺は光に包まれて異世界に飛ばされたのだったーー
PS:これクジ三つ引いたら自動で飛ばされるんですね、それぐらいは言っといてください
《識る欲の目》の戦闘能力評価の解説
error:神
SSS:神に届きかけ
SS:生物の範疇から出ている
S:伝説で語られる生物レベル
A:人外
B:超越者
C:超人
D:熟達の人
E:訓練を受けた人
F:普通の人