表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

工場の月

作者: 楠樹 暖

 工場の月は満ち欠けがデジタルだ。

 本物の空を無くした僕たちはこの月で我慢するしかなかった。

「あの月にはうちのお父さんの作った部品が使われてるんだよ」

 工場の月に部品が使われるなんて対した技術力だ。この子のお父さんはきっといい職人なんだろうな。

 僕らが人工ドームで暮らすようになりかなりの月日が経った。もう天然の月を知っている人も少なくなった。

 僕は天然の月を見ようとドームを出ることにした。

 ドームの外は日中でも薄暗く、スモッグで覆われた太陽も僅かに形が分かるくらいだ。

 これでは、天然の月を見ることもできないか……。

 青い空を求めて旅を続ける。北の地域で空気が澄んで青空が見られるところへたどり着いた。

 そこの街はドームではない、オープンな空の街だ。

 これなら夜には天然の月が見られるかもしれない。

 宿を借りて夜まで休む。

 あたりが暗くなり出したので外へ出て空を見上げる。

 月だ。

 工場の月ではなく天然の月。

 デジタルではなく、なめらかな曲線。

 表面の模様も明暗がハッキリしてよく見える。

 じいっと見ていると吸い込まれるような。

「月が綺麗ですね」

 思わず隣の人に話しかける。

「だろう? この街でしか見ることができない景色だぜ」

「天然の月は初めて見ましたよ」

「天然の月だって? 冗談言っちゃいけないよ。天然の月なんて何十年も前に無くなっているよ」

「じゃ、じゃあ、あの月は工場の月ですか?」

「いや、養殖の月だよ。天然の月には敵わないまでも中々の一品だぜ」

「養殖の……月?」

「ほら」

 男が指さす東の空に、第二、第三の養殖の月が昇ってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 蒼いお月様が小さなお家のお二階をたんすの中まで明るくしています。 きっと養殖のお月様ではたんすの中までは明るくできないのでしょうね。
2017/06/05 22:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ