リバーシブル
昔、この星は魔族によって支配されていました。
彼らは、暴虐の限りを尽くし、この星に住むもう一つの種族、天族の民を苦しめていました。
長い間魔族の支配は続きましたが、ある日、聖者が現れて、魔族を懲らしめたのです。
そして、世界は平和になりました。
めでたしめでたし。
☆☆☆
「待てー!!」
「逃がすな!!」
ここは、地球から何百光年も離れた惑星「ギランク」。
ここには、二つの民族が住んでいた。
一つは天族、そしてもう一つは―――。
「もう逃げられんぞ、魔族の生き残りめ」
十人程の男が、一人の少年を追い詰めていた。
「観念しやがれ、悪の根源が!!」
路地の行き止まりに追い込まれた少年は男達をただ睨むしかなかった。
(畜生、まだ―――まだ終わってないのに―――奴に復讐するまでは終われないのに!!)
「死ね、悪人!!」
男の一人が、天族の武器、『聖栽矢』を少年に向かって放とうとする。
対する少年も、不思議な力で手を赤く光らせて拳を握った。
(殺られるくらいなら殺してやる!! 『殺風拳』!!)
ドガッ!!
と、何かが凄い速さで飛んできて、彼らを吹き飛ばした。少年も一緒に吹き飛ばされた。
「誰だ!?」
そこに立っていたのは、一人の青年だった。
「名乗るほどの者じゃねえよ。ただ、種族間の醜い争いを止めに来ただけさ」
両腕の肘から手の指先までと両足の膝から足の指先までがが真っ黒く、目は真っ赤だった。
「貴様、まさか―――『凶聖者』か!!」
そう言われた青年は少し笑って答える。
「世間ではそう呼ばれているみてえだな。でも、その呼び名は気に入っていないんので、やっぱり名乗っとこうと思う。さっきの発言は取り消して」
周りの男達は息を呑んだ。
「俺は、『人間連合軍』副隊長、ロウル=ハルハロンだ」
「間違いねえ……!! 天族の英雄、ローレライ=ハルハロンの息子でありながら『悪魔』と契約し、反逆者に身を落とした―――世界で三番目に最悪な人間で、「コウモリ」の副団長、ロウル=ハルハロンだ!!」
「コウモリじゃねえ、「人間連合軍」だよ。ホントに世間様は勝手に別名を付けたがるよな。天族と魔族、二種類の「人」の「間」に位置する者。そういう意味で「人間連合軍」だ」
「コウモリ」とは、「人間連合軍」の俗称である。対立する二つの民族の間に立ち、どっち付かずの行動をとる彼らの事を、獣と鳥の間を飛び回り、結局どちらの仲間にもなりきれなかったコウモリの話に例えてそう呼んでいるのだ。
「それに、俺は自分が親父を裏切ったとは思ってねえ。親父を殺したのは、『悪魔』でも魔族でもねえ。二つの種族の対立が親父を殺したんだ」
そう言うと、彼は空高くジャンプした。
「バカめ、空中では格好の的だ!!」
男達は一斉に矢を放つ。しかし、ロウルはピストルのような速さで足を動かして矢を全てなぎ払い、腰から水鉄砲を引く抜いて連射した。
「うおっ!!」
ビシャッ!!
全て男達に直撃した。
「水鉄砲!? なめやがっ―――!!??」
なんと、地面に着地したロウルは鼻をほじっていた。
「テメエ、いい加減にしやがれ!!」
襲いかかる男達。しかし、彼は身軽に避け、そして、いくつもの鼻糞を飛ばした。
「鼻糞分身の術」
すると、飛ばされた鼻糞は全て等身大のロウルそっくりになっていた。
「何!?」
「ええ!!??」
先程追い回されていた少年も驚く。
「「「「喰らいやがれ!!」」」」
「うおおおお!!」
結局、数人のロウルに追いかけられて怖くなった男達は逃げた。
「あ……助けて下さってありがとうございます」
「いいよ、別に。たまたま通りかかっただけだし」
お礼を言われたロウルは無表情で言った。
「あ、そうそう。一つ言おうと思った事があった」
「何ですか?」
ロウルは少年の方を向いて言った。
「お前が知ってる通り、魔族は昔、天族に対して大迫害をやっちまった。そして、さっきの奴らはその時の復讐だなんだと仕返しを正当化して考ええてる奴らだ」
「………………」
「だから、要するに、復讐ってのはクソなんだよ。さっき俺がほじった鼻糞なんてダイヤモンドに見えちまうくらいクソだ。だから、変な野望持ってんなら捨てちまえ」
「………………」
少年は答えられない。
「じゃあな」
そのまま立ち去るロウル。
少年は、ただ彼の背中を見つめていた。
ふと思いついたままに書きました。本当に適当に書いたのでお見苦しい点があるかもしれないのでご指摘お願いします!
次の連載の原案にしようかな?とも考えておりますので、評価、感想を下さい。