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GRAVE KEEEEPER【Red Moon】  作者: 鵤牙之郷
3/30

旧友#3

 明日は記念式典。6年も通っていたのにすっかり忘れていた。その事を知って悠真は落胆した。

 和喜陽介は式典で暴れるつもりだ。生き地獄を自らの手で消し去るつもりなのだ。

 通常とは違って式典の日は関係者以外校内に入れない。だから校内待ち合わせは不可能。陽助は違った方法で校内に入る筈だ。卒業生の言葉なるものもあるが、陽助は選ばれないだろう。聞いてみると、祝辞を述べるのは金子清美という元学級委員長だった。そして彼女は、悠真や陽助をいじめていたメンバーの1人である。

 彼女はさて置き、罪の無い今の生徒達が殺されるのは止めなければならない。それに、氷川幸助の命も危ない。彼はあの小学校では珍しい、素晴らしい教師だ。

 今浄霊で来ていれば良かった。途中で攻撃を遮った謎の術師。以前術師の巣に押し入った際には居なかった。もしやあの術師が陽助を手引きしているのか。だとすれば狙いはやはり霊魂の回収、暴霊の量産だろう。子供は大きな夢や希望を持っている。彼等も暴霊になる素質を充分持っているということだ。

 落ち込む悠真のもとに、安藤が不安げに近寄る。こんな悠真は初めて見た。

「兎に角、明日はくれぐれも気をつけてください。我々も勿論式典に参加しますが、彼の攻撃力は未知数。恨みが強ければ強い程、彼等は凶暴になる」

「そんな! 子供達が殺されたら」

「させませんよ」

 悠真が言った。

「子供達が殺されることも、アイツがそんなことをするのも嫌ですから」

 暴霊と化した友を斬る。悠真は断言したが、心は痛んでいる筈だ。

 躊躇っていたら犠牲者が増えるだけ、陽助も心が満たされること無く殺戮を繰り返す。

 不意に、沖田恵里の言葉が脳裏を過ぎった。墓守はただ暴霊を倒す訳ではない。彼等は未練を断ち切ろうとして活動する。だが1度動き出すと歯止めが利かなくなり、暴走が始まる。本来は彼等自身も苦しい筈だが、その感情も満たされない欲に押し潰され、更に暴走を続ける。だからこそ、誰かが負の連鎖を止めなければならないのだ。

 それを気付かせてくれたのが沖田恵里だった。墓守でもない彼女に、墓守の本質を教えられるとは。今回も彼女の言葉が闇を晴らしてくれた。彼女には本当に、助けられてばかりだ。

「よし、西樹君。彼は君を呼んでいる。君も明日は式典に来てくれ」

「はい」

「あ、俺は?」

「君も来るに決まってるだろう? 西樹君の担当は安藤、キミなんだから」

「ああ、そうだな」

「術師が現れたら、俺と安藤で引き付ける。暴霊は、頼んだ」

 悠真は静かに頷く。

 秋山が”友達“ではなく“暴霊”と呼んでくれて良かった。迷いが完全に消えた。

 気付けば午後10時。明日に備え、4人は帰ることにした。幸助は秋山が護送するそうだ。

 悠真と安藤もアパートに戻る。

 帰路、安藤はずっと相方を見つめていた。この若さで、今までどれだけ多くの浄霊を行ってきたのだろう。今回は中でも特に大きな仕事になるだろう。

 悠真なら心配ないと自分の心に言い聞かせた。彼はもう心を決めている。心配なのはむしろ自分達の方だ。彼の足を引っ張る訳にはいかない。悠真を邪魔する者が現れたら、自分達が必ず止める。それがどんなに強大な敵であってもだ。

「今日も泊まって良いっすか?」

「ああ、いいよ」

 少し頭を下げて、安藤より先に階段を上がる。安藤もあとに続いて階段を上り鍵を出す。ふと前を見ると、悠真が部屋の前で立ち止まり、安藤の方を見ていた。

「明日、宜しくお願いします」

「あ? ああ」

 安藤は自室の扉を開けて悠真を招き入れた。

 部屋に入るなり、悠真は鞄を置き、押し入れから布団を出した。自宅よりも安藤のアパートをよく利用しているので、自分の布団をこの押し入れに入れてもらっていた。自分の布団だけ引くと、悠真はすぐに眠ってしまった。この頃、悠真は大分疲れているようだ。それはきっと肉体的なものだけでなく、精神的な疲れも含まれているのだろう。

 安藤は布団は出さず、適当なスペースを作ってそこに寝そべった。

「宜しくお願いします、か」

 何故だか、今の悠真の言葉が嬉しかった。もしかしたら、自分は少し寂しかったのかもしれない。今回の事件は悠真の卒業した小学校が関係しており、しかも悠真は墓守になる前、自分ではなく秋山と接触していた。その後も出てくる関係者は彼等2人と接点がある者ばかり。果たして自分は必要なのか。

 まるで子供だ。安藤はクスリと笑った。もしや悠真は、自分のその未熟な思いを見抜いていたのではないか。だから、ああして声をかけたのではないか。確かに安藤は悠真の担当者だ。しかし、担当者である自分の方が、逆に悠真から色々なことを教えてもらっていた。それはちょうど、悠真と恵里の関係のように。

「俺らもまだまだ、だな」

 そっと呟くと、安藤もまた眠りについた。






 翌朝。

 家を出ると、和喜陽助は深呼吸した。いよいよ、目的を果たすときが来た。行く前に喫茶店【新世界】に立ち寄り、コーヒーを1杯注文した。

「何かあるんですか」

 中年のマスターが優しい声で尋ねた。陽助はよくこのマスターに助けてもらった。逢わせ屋を紹介してくれたのも彼だった。

「大事な日なんです」

「そうですか。私にはこんな事しか出来ませんが、頑張ってください」

 言いながらマスターがコーヒーを出した。1礼してカップを手に取り、口を付けてゆっくり啜った。ほろ苦く熱い液体が、舌を刺激して体内に入ってゆく。刺激のおかげで目も覚めた。徐々に舌が慣れ、陽助はコーヒーを一気に飲み干した。マスターは思わずニコっと笑った。

「ごちそうさまでした」

 陽助はコーヒー代をマスターに手渡し、早足で店を出た。

 もう暫く、いや、2度とここには来られないかもしれない。

 昨夜、陽助は明政小の教師を襲った。そこの教師なら誰でも良かった。しかしそれを、ある人物に止められた。西樹悠真。友人だった。友人は刀のような武器をどこからか呼び出した。

 あの力。陽助は驚いた。何故なら自分もまた同じような力を持っているからだ。彼が同等の力を持っている以上、陽助の目的を阻止しようとするかもしれない。呼んだのは自分なのだし、今日以外にチャンスは無いのだから仕方ない。

 前方から自転車に乗った男女が向かって来る。彼等は陽助が邪魔だと言わんばかりにベルを鳴らす。陽助は右手を広げた。次の瞬間、手が炎に包まれ、そこから剣が現れた。剣をしっかり握ると、狙いを定めてそれを振り回した。すると、男女の動きが止まり、ほぼ同時に彼等の首がボトッと落ちた。陽助は気にも止めず歩を進める。

 今のはテストだ。それに、向こうが先にベルを鳴らしてきたのだから、こちらには斬る権利がある。それが陽助の考えだ。もはや彼は、小学校時代の和喜陽助ではなかった。彼は心の底まで暴霊になってしまったのだ。

「電車使うか」

 暴霊は確実に、明政小学校に近づいていた。







 和喜陽助より先に、悠真、安藤、秋山の3人は学校に到着した。

 時刻は午前8時40分。式典スタートまであと30分。校内ではまだ何も起きていないらしい。各教室で子供達が騒いでいる。

 職員室に向かっていると、近くの教室から幸助が出て来た。昨夜のこともあって顔色が悪い。眼の下に隈が出来ているということは、一晩中起きていたということか。

「氷川先生」

「あっ! おはようございます!」

「何かありましたか?」

「いえ、今のところは。しかし、あの子達が怪物に殺されてしまうのかと思うと」

 今は楽しそうにはしゃいでいる子供達。

 彼等は気付いていない。陽助の殺戮が始まったら、彼等は氷川が感じたもの以上の恐怖心を抱くだろう。いや、陽助のことだ。抱く隙も与えないだろう。

 氷川はミーティングのためその場を去った。直前まで大変だ。

 また新たな客がやって来た。金子清美だった。意地の悪そうな顔を見て悠真はすぐに解ったが、向こうは気づいておらず、偉そうに廊下を歩いていった。

 秋山は学校の地図をずっと睨んでいた。陽助がどこから来るかを考えているようだ。この学校には正門と裏門がある。裏門から入って来られると、警備員が居ない限り誰も陽助が来たことが解らない。そのため、いくら墓守でもすぐには対処出来ない。それに、例の降霊術師もどう来るか解らない。術師が学校関係者なら死角から襲って来るかもしれない。関係者でなくとも、あれだけ校内を動き回っていれば死角ぐらい見つけているだろう。

 そのとき、校内にアナウンスが入った。いよいよ式典が始まる。アナウンスが終了するのとほぼ同時に、各教室からぞろぞろと生徒達が出て来た。教師に先導されて全員が廊下に出る。悠真達3人も、空いているもう1つの出入り口から外に出た。前方の校庭を見ると、朝礼台の両サイドに教師が並んで立っていた。幸助は朝礼台に近い位置に立っているという。3人も幸助の居る場所へ向かった。そのときにも金子清美とすれ違ったが、やはり向こうは気付かなかった。

 幸助と合流したのとほぼ同時に、吹奏楽部の演奏が始まった。華やかで、且つ荘厳な曲だ。演奏中も騒いでいる生徒がいたので、幸助が注意した。普段優しそうな彼が怒ると迫力があり、思わず悠真もブルッと震えた。

 暫くすると演奏が終わり、校長の津田が朝礼台の上に立った。そして、体育教師の号令とともに全員が頭を下げた。礼をした後津田が喋り始めた。その瞬間、悠真の脳裏に小学校時代の思い出が蘇った。この校長の話が長く面倒くさかった。生徒もちらちらと違う方向を見ていたり、友達と遊んだりしている。よく見ると教師の中にも面倒くさそうにしている者がいた。これでは陽助が侵入してもすぐには気付かないのではないか。

 辺りを見回していると、教頭の大地が苦しそうにしているのが見えた。大地はそのまま体育教師に連れられ校舎に戻っていった。体調を崩したようだ。

「怒鳴られてたもんなぁ」

「そうでしたね」

 津田と大地は前日、モンスターペアレントの口撃を受けていた。彼等は反論することなくただ「はい、はい」と言っているだけで、ストレスもかなりかかっているに違いない。

 いつの間にか津田の長い話も終わり、次は卒業生、金子清美の話だ。清美は偉そうに階段を上り、素早くお辞儀した。

 彼女からは6年間虐められていた。そのときの恨みは今もまだ忘れていない。

「おはようございます。明政小学校卒業生、金子清美です。私はこの学校で、沢山の素晴らしい友人に出会いました」

 なるほど、イジメのグループの者達を指しているのだろう。ただそのグループ内でもイジメを受けていた人物がいたことも確かだ。

「ここには色んな個性を持った生徒がいます。ここでの出会いは、どんな宝石よりも美しく、貴重な宝物です。なので、皆さんも是非、沢山の人と友達に……」

 そう言い掛けたとき、銃声が校内に響き渡った。

 朝礼台の清美がブルブルと震えている。おめかしして来た顔を真っ赤だ。頭には黒い穴が。

 撃たれた。

 目の前で撃たれた。更に続けて太い光線が彼女に向けて発射される。次の瞬間、朝礼台の上に居た筈の人影は消えてなくなっていた。

 その後すぐに銃を乱射する音が聞こえた。正門側では悲鳴が上がっている。生徒達も何が起きたか理解して喚きながら校庭を逃げ回る。銃の餌食になった者は、陸に上げられた魚の如く跳ね上がり、その場に倒れた。

 悠真は刀を抜いて正門の方へ向かった。安藤と秋山は、まだ生きている者達を校舎へ避難させた。

 悠真の向かう先には、両手をマシンガンに変えて、無表情でそれを乱射する和喜陽助がいた。

「陽助!」

 刀を振り回して衝撃波を放つ。だが間一髪のところで攻撃をかわされた。陽助は続けてマシンガンをレーザー砲に変えて生徒と教師を狙う。光に包まれたものは跡形もなく姿を消してしまった。

「止めろ陽助! おい!」

 攻撃を止め、陽助が悠真に顔を向ける。

「残念だ。お前が解ってくれないなんて」

「お前がしてることはアイツ等以下だ」

「お前も同じ力を持ってるんだろ? 何故それを此奴等の掃除に使わない? 俺とお前は、選ばれし人間なんだぜ?」

「違う。くだらない未練の為に、逝くべき場所に逝かずに留まってるだけだ」

 悠真が武器を構えた。陽助は武器をしまい、死体の山を見て笑みを浮かべた。

「坂木原を殺したのもお前だな」

「俺のパワーがどの程度か試したくてね。アイツなら殺しても良いかなと思って。ここに来る途中にも何人か殺して試してきた」

「何が試してきた、だ」

 ゆっくり歩み寄る悠真。避難もほぼ完了し、校庭に居るのは2人だけだった。

「今のお前みたいに暴走した霊を帰す。俺の力はそのためにある」

「知ってるよ。墓守だろ?」

 どうやら陽助を呼び出したのは降霊術師だったらしい。しかもかなり教育を受けている。

「上司は誰だ」

「上司? ああ、俺の理解者か。正体は知らない。名前はビースト、それだけだ」

 知らない降霊術師だ。もう新たなグループが動き出しているのか。

 急に、陽助の足下から青白い炎が噴き上がった。

「なあ、俺みたいな奴を止めるのが仕事なんだろ? だったら止めてみろよ。逆に殺してやる。そんで、俺と一緒に来い。これから卒業生も殺しに行くからさ」

「断る。お前の殺人もここで終わりだ」

「解ってねぇな。今に後悔するぞ!」

 陽助の身体が激しい炎に包まれ、見る見るうちに暴霊の姿に変わった。だがそれは、悠真の想像を絶するものだった。

 巨大な身体、長い首と尾、細長い四本の脚に、背中には2つの巨大なレーザー砲。

 そこにいるのは最早悠真の友ではなかった。吹奏楽部の演奏の次は、巨大な機械竜の鳴き声が響き渡った。






 残った人達を避難させた安藤と秋山。

 避難はすぐ完了した。これ以上殺させる訳にはいかない。何が何でも残った生徒と教師を助けなければ。

「全員多目的室に隠れてる。暴霊は西樹君に任せよう」

「ああ。あれ、さっき退席した人達は? 大丈夫だったのか?」

 大地洋平と体育教師が校内に入った筈だ。もし中に術師が居れば危険だ。先程避難させたときには居なかった。となると、まだ校内のどこかに居るはずだ。

 2人は手分けして捜そうと提案した。だがそのとき、

「ひゃああああ! た、助けてくれ!」

 裏門の方から男性の悲鳴が聞こえた。行ってみると、そこには腰を抜かした大地と、血まみれになった体育教師が横たわっていた。遅かったか。

 大地は服がボロボロになり、所々怪我を負っている。殺される前に助かったのか。

「あっ! 秋山さん!」

 大地がヨロヨロ立ち上がり、秋山にしがみつこうとした。だが途中で倒れそうだったので、安藤が彼を抱きかかえた。大地は震えている。震えで服がずり落ちそうになる程に。

「か、怪物が、怪物が」

「大丈夫ですよ。あとは我々に」

「安藤、手を離せ」

 秋山が静かに言った。精神的に不安定になっている大地を見捨てろというのか。

 いや、違う。彼は見てしまったのだ。服が少しずり落ちた瞬間、背中に刻まれた、禍々しい紋章を。

 安藤がゆっくり手を離す。大地はしっかり立っている。そして、笑っている。

「流石だねぇ、秋山荘司君」

「なるほど、名前を知ってる理由がやっと解った」

「え? 会ったことあるのか?」

「この男が、校内で動き回っていた降霊術師だ」

 まさか、明政小のナンバー2が降霊術師だったとは。校内に度々現れたのはここの職員だったから。秋山の名は、彼が潜入を始めたときに知ったのだろう。

「あの卒業生を連れてきたのはお前か」

「その通り」

「何でだ? 暴霊を生むためか?」

「その程度の推理しか出来ないのか、安藤肇君?」

「何?」

「神田から話は聞いてる。俺があの卒業生を降ろしてきたのは、ここを潰すためさ」

「は?」

 この男は、もとは金谷空人という男に従う降霊術師の1人だった。大戦の際に居なかったのは、学校の修学旅行に同伴していたからだ。

 だが、大地は学校の仕事をやる気がさらさら無かった。降霊術師としての仕事に力を注ぎたかった。モンスターペアレントやイジメに嫌気がさし、どうにかしてこの学校を再起不能にしたかったのだ。

 そんなことのために子供達は殺されたのか。2人は、特に子供好きの安藤は大いに憤っていた。彼は刀を取り出した。が、すぐにそれをしまった。先日術士のリーダーと戦ったときに刀を壊されてしまったのだ。まだ新しい武器は届いていない。

 秋山は安藤の肩を軽く叩くと、自身が持つステッキに血を吸わせ、墓守・アヌビスに変身した。

「お前から、力を剥奪する」

「御立腹のようだね! 感情に流された君達に勝ち目は無い!」

 大地が手を伸ばすと、体育教師の遺体から火の玉が飛び出し、大地の手に飛び込んできた。すると、大地の肉体が青い炎に包まれ、山猫のような怪物に姿を変えた。これがビースト、和喜陽助を暴霊に変えた張本人である。

「消えろ!」

 ビーストが風を起こし、安藤とアヌビスが吹き飛ばされた。

 敵の素早い動きに何とかついて行こうとするアヌビス。だがビーストの言うとおり思うように戦うことが出来ない。いつも通りの戦いが展開出来ない。

 ビーストは再び爆風を巻き起こし、2人を吹き飛ばした。その威力は秋山を元の姿に戻してしまうほどだ。その隙にビーストは逃げ出し、向かい側のビルの屋上に着地した。

「間もなく、我々は新たな時代を迎える! 君達も身の振り方を考えておくことだな!」

 そう言い残してビーストは去った。

 彼等がまた動き出す。今度は何を考えているのだろうか。

「あ、青年! 青年!」

 安藤は慌てて校庭に向かった。秋山はただずっと、ビーストが立っていた屋上を睨みつけていた。






 その頃校庭では、機械竜と化した陽助と悠真の戦いが続いていた。悠真は白い戦士・0の姿になって戦っている。

 刀から衝撃波を放って機械竜の四肢を狙う。しかし竜の足首に付いた赤いブレードが攻撃を無力化した。更に竜が吼えると突然宙からマシンガンが現れ、0を狙って乱射してきた。攻撃をジャンプして躱したが、今度は背中のレーザー砲から光線が放たれた。まさに生きる兵器。次から次へと武器を呼び出してくる。なかなか隙が掴めない。竜は火も吐けるらしく、強烈な火炎放射を受けてしまった。

「陽助!」

 返事はない。暴走しているのだ。恨みが強ければ強いほど暴霊は凶悪になる。彼の底無しの恨みを浄化出来るのはもう0しかいない。

 戦いの最中、0は竜の弱点を発見していた。

 それは腹部。腹部には何の武器もついていない。狙うとしたらそこしかない。だが、竜の真下に滑り込むには他の武器をどうにかしなければならない。別次元から武器を召喚されれば下に滑り込んでも邪魔されてしまう。やるなら1回で、それも時間をかけずにやらねばならない。

 身体に力を込めた。再び炎に包まれ、鎧の色が紫色に変化した。暴霊から力を吸収する《−》の力だ。

 まずは手を広げて黒い霧を放ち、竜のブレードを破損させた。怒った竜がレーザーを発射するが、霧によって無効化された。続いて竜のレーザー砲目掛けて霧を発射した。霧がレーザー砲を食い荒らし、終いには爆発させた。

 機械竜といえど正体は霊。爆発のダメージで竜がもがいている。この隙に、0は元の白い姿に戻り、竜の真下に潜り込んだ。確実に、かつ素早くトドメを刺すためには刀が最適だ。

 竜が頭を下げて0を威嚇する。

「すまん、陽助!」

 刀が大剣に変わった。0はそれを鉄の腹部に突き刺し、柄を持ちながらまっすぐ走り出した。刃が、竜の身体を真っ2つに切断する。気合いの火炎放射も寸前で停止、竜は青白い炎とともに爆発してしまった。

 悠真は元の姿に戻った。

 浄霊は完了した。深い恨みから友を断ち切った。それでも、悠真の心は晴れなかった。





 3日後。

 悠真は大学の食堂にいた。向かい側には沖田恵里が座っている。

 明政小は大地の思惑通り無くなるらしい。別の学校に吸収合併されるそうだ。また、陽助の殺人に関しては、自殺願望のあった犯人による爆破事件ということで片付けられた。氷川幸助は、今度は教育委員会に入ろうと検討しているそうだ。

「じゃあ、友達は」

「俺が浄霊した」

「そっか」

 落ち込む悠真。今回ばかりは、恵里もどう声をかければよいか解らず戸惑っている。和喜陽助も苦しみから解放されて良かった、とは言えなかった。たとえ暴霊でも、陽助は悠真の掛け替えの無い友人だ。大切な者を失った悲しみは痛いほどわかる。彼女の父と兄も、術士に殺されたから。

「憎い奴等だから死んでも構わないなんて、墓守の俺がそんなこと言ってちゃ駄目だよな」

「え? ああ、ごめん。西樹君の思いも理解しないで」

「いや。沖田が居なかったら、俺もあの化け物みたいになってたかもしれない」

 あのとき、恵里は悠真の眼の奥に炎を見た。あのままでは、悠真が怪物になってしまうような気がした。今は、悠真も人間らしさを取り戻したようにかんじ、心の底から安心していた。

「ねぇ」

「え?」

「今度、どこかに行かない?」

「おお、いいね! じゃあ今度の休みに行こうか!」

 楽しく話している2人。

 またひとつ、恵里に助けられた。恥ずかしくて口には出さなかったが、悠真は心から恵里に感謝していた。そして、何か言いようの無い感情を抱いていた。

・ハンター・・・夜の道で他人を狩っていた女性の暴霊。ディノポネラというアリがモチーフで、右手の刃と尾のトゲ等で戦う。細身でスピードも速い。


・バーサーカー・・・悠真の友・和喜が変身した機械竜の暴霊。恨みの強大さ故にその身体も巨大化してしまった。別の次元から様々な武器を呼び出して戦う。

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