表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GRAVE KEEEEPER【Red Moon】  作者: 鵤牙之郷
11/30

怪人アンサー

 静かな夜。

 大学のある部屋に、数人の若者が集まって来た。彼等は皆、手に携帯電話を持っている。

「いいかみんな?」

 その中の1人、女学生が他の若者に言った。

「今日こそあの方を呼び寄せる。この国の未来のために!」

 全員が床に座り、互いの顔を見合う。そして、全員同時に、ある番号に電話をかける。

 電話はなかなか繫がらない。5分、10分……どれだけ待っても相手は電話に出ない。しかしそれでも若者達は電話を切らないで待ち続けている。

 だが、20分を過ぎようとしたとき、とうとう我慢の限界が訪れ、複数の学生が電話を切ってしまった。他にも充電切れで電話が切れてしまった者もいる。

「お前達、何をやっているのだ!」

「す、すいません!」

「何としてもあの方の力が必要なのだぞ!」

「あの!」

 学生の1人が立ち上がり、激昂する女生徒に言った。

「数が足りないのではないでしょうか?」

「何?」

「あの方にまだ、我々の熱意が伝わっていないのではないでしょうか?」

「数……」

 計画を立て直す必要がある。

 女生徒も電話を切り、ゆっくりと立ち上がった。

「なら集めろ」

「え?」

「同士を集めるのだ。そして、次こそあの方をこの地に再びお呼びするのだ!」

 ここでは彼女が法律。歯向かうことは許されない。

 生徒達は立ち上がり、彼女に向けて敬礼した。すると女性とも、全員に向けて敬礼した。挨拶が終了すると、他の学生達は一斉に部屋から出て行った。

 1人きりになった女学生は、ゆっくりと部屋を見回して深呼吸した。あと少しで、自分たちの計画が成功する。

「もう少しです、先輩」

「やってるみたいだなぁ」

 そこへ1人の怪物がやって来た。大地洋介こと、降霊術士のビーストである。女学生は術士と繋がりがあるらしく、全く驚く素振りを見せない。それどころか、跪いて挨拶してみせた。

「どうだ、その後の活動は?」

「まだ、完璧とは言えません。ですがもう少しで」

「そうだ。もっと粘ることだ。そうすりゃ、向こうの方からお前さん達を見つけてくれるさ」

 それだけ伝えて、ビーストは何処かへ消えてしまった。

 女学生は跪いたまま、ビーストに感謝の言葉を述べた。





 晴れた昼下がり。

 安藤は喫茶店新世界に足を運んでいた。今日もまた、どうでも良い話をするだけだ。

「へぇ、そうですか。それは知らなかったですね」

「マスターにも知らないことがあるんですね」

「ええ。私もまだまだ勉強中の身です」

「なるほど。まぁ、俺も青年から聞いて覚えたんですけどね」

「青年?」

「はい。前に話した仕事上の相方です。そこに通ってるんですよ」

「ああ、じゃあここにも来ているかもしれないですね」

 言いながら、マスターが後ろのコルクボードを確認した。そこには人の名前が書かれた紙が幾つも貼られている。ここに足を運んだ客の名だ。思い出を大切にする。それがこの男なのだ。

 マスターが名前を探すのを手伝うために、安藤がサポートする。

「西樹悠真っていう名前なんですけど……」

「ええっ? 西樹君?」

 全く別の人物が反応した。ウエイトレスの少女だった。外国人のような顔質だが日本語が達者だ。ハーフだろうか。

 ウエイトレスは大はしゃぎで安藤に近づき、彼の両手を握った。普段年下の女性から触れられることが無いため、安藤はへらへら笑った。

「宇佐美君」

 マスターが彼女を注意した。

 ウエイトレス……宇佐美アリスは1回頭を下げると少しだけ後ろに下がった。

「青年の、知り合い?」

「はいっ、お友達です!」

「ほう、そうでしたか。いや、ビックリしたな」

 マスターが関心していた。まさか従業員の1人が知り合いだったとは。

 今日は授業が入っていないため、アリスは朝からここで働いているという。

 悠真にも友がいることを知り、安藤は笑みを浮かべた。先程の嫌らしい笑みではない、優しさに溢れた笑みだった。まるで保護者のようだ。

 このあとアリスを入れた3人で長話をした後、安藤は会計を済ませて店を出た。今日はじめじめしている。もう少し店内に居れば良かったか。いや、長居してもマスター達が困るだけだ。車を停めてある駐車場に向かって歩き始めると携帯が鳴り始めた。平岩からだ。

「はい?」

『君たちが1番近くにいるようだったからな』

「てことは、暴霊ですか」

『そうだ』

 暴霊がこの付近で行動を起こしたらしい。

「場所は?」

『これからメールで伝える』

 電話が切れると、ものの数秒で平岩からメールが届いた。

 そこに記されていたポイントを見て驚いた。何故ならその場所は……。

「ここって、青年の?」

 そう、今回暴霊が現れたポイントは、悠真が通う大学のキャンパスだったのだ。

 車は後だ。ここからならすぐに大学に行くことが出来る。安藤は携帯をしまってキャンパスへと急いだ。






 その大学では、悠真が柏康介と一緒に食事をとっていた。話題は数年前に流行った都市伝説だ。

「お前知らね? 怪人アンサーって」

「知らねぇよ。何かのアプリか?」

「馬鹿だなぁ、都市伝説だよ、都市伝説」

 怪人アンサー。どんな質問にも答えてくれる怪人。複数の人間が特定の番号に同時に電話をかけると、全ての電話がアンサーに繫がる。アンサーはほぼ全ての人間の質問に答えてくれるが、その中の1人だけは、反対にアンサーから質問を振られる。その質問に答えられないと、身体の一部を奪われてしまう。実はアンサーは頭だけの存在で、今も身体を探し求めている、というもの。

 しかしこの都市伝説は、最終的に1人の若者が作ったものであるということが明らかになった。そんな伝説を、目の前の男は何故今嬉しそうに話しているのだろうか。

「どうだ、お前こういう話嫌いだろ?」

「は?」

「前に言ってたじゃんかよ、『救いようの無い未来が訪れる話は嫌いだ』って」

「馬鹿はどっちだよ? それ俺じゃねぇよ、持田だよ」

「ああ、アイツか」

 本当に勘違いしていただけのようだ。

 持田裕二。富豪の家庭に生まれたボンボンで、怖い話が好きな男だ。

「まぁほら、お前も頭の片隅に入れとけよ。何かの役に立つかもしれねぇだろ」

「立たねぇよ」

 康介は本当にふざけた男だが、彼のような人間がいることで気持ちが明るくなる。辛い時もこの男の馬鹿な話に助けられた。

 悠真は食器を片付けると、康介を置いてけぼりにしてその場から去った。一種のボケである。少しすると、康介も口に食べ物を大量に父君で彼の跡を追って来た。そしてモゴモゴと悠真に文句を言った。

「汚ぇなぁ!」

「う、うるせぇ! お前冗談キツいぜ」

「ははは、悪い悪い……」

 笑って視線を移すと、そこに見覚えのある人影が。ここの学生ではない。そもそも年齢が離れている。

「悪い」

「え? あ、おい」

 康介に謝って、悠真はその人物に歩み寄った。相手も悠真を見て笑っている。

「青年!」

 相手……安藤肇は手を振って悠真を呼んだ。悠真は顔を赤らめると、安藤を連れて人の少ない場所へ移動した。

「何やってるんですか」

「暴霊だ」

「は?」

「ここで出たんだよ、暴霊が」

 2人の目つきが変わった。

 あの術師、ハーミットの刺客だろうか。術を持ち出した者が墓守出身である以上、悠真達現職の墓守達の個人情報が敵側に漏れていてもおかしくない。なるほど、敵は悠真に狙いを定めたということか。

 平岩から送られて来た情報によると、暴霊が出現したことは確かだが、まだ本格的に活動しているわけではないという。また、彼の守護霊の調べでは、その暴霊は元々他の地区で暴れていたのだが、墓守の隙をついて逃走、このキャンパス内に逃げ込んで来たとのことだった。

「逃げて来た暴霊……」

「ああ。ただの暴霊じゃなさそうだな。普通の霊なら墓守からは逃げられない。となると」

「術師の息がかかった霊、ってことですか」

「そうなるな」

 ハーミットの刺客である線が濃厚になってきた。

 更に平岩の調べによると、その暴霊は実体のない存在だと言う。

「実体がないって、それじゃあ普通の霊に近いってことですか?」

「そうじゃない。ソイツは電波に乗って飛んで来るんだ」

「電波?」

「電話、ネット、何でも良い。電子的な繋がりがある所に、奴等は飛んで来るんだ」

 電波を介して移動する霊。なるほど、墓守から逃げることが出来た理由がわかった。

 2人は一旦分かれて、それぞれで暴霊の手がかりを探すことにした。

 元の場所に戻ってくると、康介がニヤニヤしながら悠真のことを見つめていた。

「何がおかしいんだよ」

「悠真お前、あの人とできてるのか?」

 きっと安藤が手を振っているのを見てしまったのだろう。

 今日程安藤に怒りを覚えた日は無い。ここに来る時は配慮してくれと何度も頼んでいたのだが。

「お前が思ってるような関係じゃねぇって」

「何だよ、照れるなよ」

「そうじゃねぇよ」

「ちょっと、宜しいですか?」

 そこへ1人の学生がやって来た。丸刈りの男性で、髭も綺麗に剃られている。服装は赤いチェック柄のTシャツにベージュのズボンといった出で立ちだ。

「お2人、今日は我々のサークルでパーティーを企画しているのですが、良かったら一緒に来ませんか?」

「パーティー?」

「ええ。是非」

「いいや、止めておくよ」

 言ったのは康介だった。このパーティー好きの男が誘いを断るとは珍しい。だがこれにはあることが関係していたのだ。

 誘いを断られると、学生は笑顔で礼を言って走り去って行った。

 康介が言うには、彼は学生団体のメンバーらしいのだ。

「お前も見ただろ、アイツの服に着いてたバッジ」

「バッジ?」

 康介はしっかり見ていた。学生の服に着いた丸いバッジを。そこにはアレンジされた太陽のマークが描かれていた。

 彼等は承認されていない学生団体、【太陽の使徒】の団員らしい。嘗て大規模な活動をしたせいで弾圧にあったのだが、今も彼等の同士が密かに動いているとのことだった。彼等はカルト教団のような活動も行っているそうで、偶にそれに引っかかってしまう学生もいるらしい。

 悠真は以前の【鳥籠教団】を思い出した。そこの教祖、そして信者は皆暴霊だった。まさか彼等も霊なのではないか。

 こんなときにあの力が発動してくれれば良いのだが。霊を見通す力だ。それがあればこの中に隠れている暴霊を見つけ出すことも簡単なのだが。

「ま、俺は大丈夫だけどお前は気をつけろよ」

 と、康介が偉そうな顔をして悠真に忠告した。悠真はただ「はいはい」と答えるのみだった。

 この後は授業が入っていない。悠真は引き続き暴霊を追うつもりなので、2人はここで分かれることにした。が、そこへまた怪しい学生達がやって来た。先程の康介のように服に注意して見ると、なるほど確かにバッジが着いている。彼等も団体のメンバーだ。

「お願いします、僕らと来てくれませんか?」

「お前等もしつこいなぁ! 俺達はお前等には興味無いんだよ!」

「そっちはそうでも、私達にはやるべきことがある」

 そう言うと、団体の1人が何かを取り出して康介にあてた。すると康介が悲鳴をあげた。

 スタンガンだ。自分達の理想のためならこんなこともするのか。悠真は鞘に入れた状態で刀を出そうとしたが、その直前に団員が康介を捕らえ、首元にスタンガンを突き付けた。

「動かないで。お友達が死ぬことになりますよ」

「ちっ、お前等……」

 そのとき、悠真を突如頭痛が襲った。あの力が発動したのだ。

 ゆっくり目を開けると、この前のように景色がネガ反転していた。団員に視線を移すが、青い炎は見えない。彼等はまだこちら側の人間ということか。

 しかし彼等の腰元を見ると、そこに数体のオーブが張り付いているのが見えた。何かに霊が引き寄せられている。安藤の言葉を思い出す。探している暴霊は、電波に乗ってやってくる。

 そこまで見えたところで力は収まった。良い収穫だった。もしかすると、彼等の裏には霊が関わっているのかもしれない。

「さぁ、どうします?」

「ゆ、悠真」

「わかった。行くよ」

 悠真が了承すると、団員達はにこっと笑った。

「初めからそうしていただければ良かったのに。では、どうぞこちらへ」

「悠真、良いのか?」

「ああ。良い機会だ」

 康介は何のことかわかっていないようだったが、悠真はそれを無視して団員達の後に続いた。康介も友のことが心配になって追いかけて行った。

 一同は人気の無い細い道を進み、古い建物の中に入った。入ってすぐの所に階段がある。そこを下に降りると、複数の部屋が姿を現した。多目的室だ。彼等はここを根城にしているのか。

「ここです」

 団員の1人が扉を開けて中に招き入れた。

 中はかなり広い。天井もかなり高く、白い壁は綺麗に掃除されている。パイプ椅子が何脚かあるが、それらは無造作に脇に置かれている。電球を最近付け替えたのかもの凄く眩しい。光が白い壁に反射していることも関係しているだろう。

 室内には10数名の学生達が円を描くように座らされている。これだけ人が居ても室内は広く感じられる。悠真と康介も、その中に混ぜられた。彼等の中央には1人の女学生がいる。長い黒髪に大きな目。その下には大きな隈ができている。ジャージ姿の学生は腕を組んで他の学生達を睨みつけていた。

「人数、揃いました」

「ごくろう」

 団員からの報告を聞いた後、女学生がその場に居る学生達に話しかけた。

「私は、太陽の使徒の4代目党首、秋月靖子だ」

「秋月……ああ、あの秀才か」

「口を慎め!」

 靖子に怒鳴られ、康介は黙って頭を下げた。

「我々は、この国を救うために、ある方の意見を聞くことにした」

「ある方?」

「あの方は、我々の全ての質問に答えてくれるのだ」

 その言葉を聞いて悠真と康介が顔を見合わせた。ちょうど、先程話していた都市伝説に似ているではないか。

「我々は何度もあのお方を呼んだ。だが、あの方はまだ電話には出てくれなかった」

 ここで、今度は安藤の言葉を思い出す。

 暴霊はここへ逃げて来たのではなく、呼ばれて来たとしたらどうだろう。電波を介して移動するのならそれほど時間もかからない。遠距離でも簡単に移動することが出来る。

「君達には、あの方に電話をかけてもらいたいのだ」

「電話? おい、怪人アンサーか? お前等そんなもの信じて……」

「黙れ! 言うことが聞けないのなら、お前達をここで殺すまでだ」

 彼等ならやりかねない。この場に連れて来られた学生達は黙って言うことを聞いた。ある意味暴霊よりも厄介な相手だ。かなり頑固で、目的のためなら手段を選ばない。だが生きた人間だから斬ることは出来ない。

 全員が従ったところで、靖子は携帯を出すよう指示した。言われるがまま、各々携帯を取り出した。次に番号を提示し、そこへ同時に電話をかけるよう命じた。

 ボタンを押す一同。少しでも遅い者がいると靖子が怒鳴った。

 作業が完了し、全員が携帯に耳をあてた。

「よし、では、私が指示したら電話をかけろ。あの方も来てくださる筈だ」

「来ないと思うけどな」

 と康介。

「口に気をつけろ。2度と歩けないようにしてやろうか」

「はいはい、すいませんでした」

 咳払いをすると、靖子がカウントダウンを始めた。

 5、4、3、2、1、

「今だ」

 全員が一斉に通話ボタンを押した。

 少しの間呼び出し音が鳴る。が、5分経ってもまだかからない。電話を切ろうとする生徒がいると靖子が透かさずそれを禁じた。

 更に数分待つが、相手はなかなか電話に出ない。団員も今回も失敗ではないかと肩を落とす。が、そのとき。

「こ、これは!」

 呼び出し音が止み、遂に相手が電話に出たのだ。

 歓喜の声をあげて団員達が質問する。連れて来られた者達は震えて声が出せない様子だ。

 それもその筈。電話の向こうからは、籠ったような不気味な声が聞こえているのだから。

『お前の知りたいことは何だ』

 おそらくどの学生もこの声を聞いている筈だ。団員達が質問しているのは、日本を救う方法。そんなものを聞いても、学生達に出来ることはたかが知れている。

 さて、相手は悠真にも質問の機会を与えてくれた。彼が質問することはただ1つ。

 だが、それを聞く前に、悠真はあることが気になった。学生達の中に、1人様子のおかしい者がいる。靖子だ。

「え? あ、あなたは何を……」

 都市伝説では、怪人アンサーに電話をかけると、1人だけ反対に質問を振られる者がいるという。そして、それに答えられなければ……。

 相手を止めるべく、悠真はあの質問をするのだった。

『お前の知りたいことは何だ』

「答えろ。お前は、暴霊か?」

 相手は何も答えない。

「答えろ! どうなんだ?」

 核心を突いた質問。相手も焦っているのだろう、この質問に答えること無く電話を切ってしまった。

 イライラして電話を床に叩き付ける悠真。するとその直後、中央に居た靖子が悲鳴を上げた。更に彼女を見た学生達も何かを指差して叫んでいる。悠真も急いでそれを確認した。

 電話から、手が生えている。継ぎ接ぎだらけの不気味な手が。手は靖子の髪を掴もうとしている。

 あれが暴霊だ。悠真はすぐに彼女に駆け寄り、携帯を叩き落とした。さらに液晶の奥に逃げようとする手をむんずと掴み、それを勢い良く引き上げた。抵抗する手だったが、悠真が水晶のペンデュラムを出すと力を失い、するすると中から出て来た。

 悠真が釣り上げたそれを見て皆が叫んだ。あの靖子も目に涙を浮かべて悲鳴を上げている。

 床の上で、服を着ていない人間のようなモノが蠢いている。全身継ぎ接ぎだらけで髪が無い。皮膚の色も所々違っている。

「わかったか? あんたらはこんなバケモノを信仰していたんだ!」

「あ、ああああ! 嫌だああっ!」

 団員、そして康介達他の学生が一斉に逃げ出す。靖子も遅れをとったが、おぼつかない足取りで多目的室から逃げ出した。

 これでいい。これで浄霊が出来る。悠真は刀を引き抜いて暴霊に斬りかかった。暴霊は驚異的な動きでそれを躱し、どうにか液晶画面の中に逃げようとした。

「逃がすかよ!」

 刀を銃に変え、携帯に向けて発砲した。電子機器が破壊され、その破片が怪人の身体に刺さった。怪人は苦しそうに悶えている。今がチャンスだ。武器を再び刀に戻し、トドメを刺すべく斬りかかる。すると、相手はおぞましい方法で攻撃を回避した。相手の身体がその場でバラバラに分離し、悠真の攻撃を無効化したのだ。手、足、頭といったパーツが宙を舞い、空中で再び合体、人間の姿をとった。

「この野郎!」

 今度は連射式のガトリングに武器を変えて乱射する。しかし怪人は悠真をあざ笑うかの如く、空中で自らの身体を分解させて攻撃を躱してしまう。攻撃が止むと再びもとの姿に戻り、悠真に足技をかける。悠真も戦闘訓練は受けている。相手と互角の戦いを見せている。

 ここで、相手の力を自覚したのか、暴霊も本気を出すことにしたようだ。攻撃の直前に再び全身を分離させる怪人。様子を見ていると、手足、胴体といったパーツが青い炎に包まれて巨大な鉄の塊となり、再び融合した。

 現れたのは巨大なポッド型の怪物。緑色に輝く鉄の鎧には4つの透明な球体が埋め込まれており、その中には脳らしき物体が収納されている。中央には不気味な顔。そしてポッドの下からは長い触手が2本生えており、その先に大きな手がついている。この手で他人のパーツを奪っていたのだろうと想像する。

 ポッドは猛スピードで悠真に突進して来た。間一髪攻撃を躱し、悠真も0に変身、武器を大きな斧に変えて攻撃を仕掛ける。怪人はそれを大きな手で払い、再び突進して来た。壁際に迫ってくる相手。0は身をかがめて攻撃を躱したが、このポッドの下には気味の悪い口まで備わっている。危うく噛まれそうになったが、ここは攻撃のチャンス。斧を刀に変えて口の中を斬る。するとアンサーも痛みを感知したのか、ポッドは天井に浮き上がって0から逃げた。

「今度はこっちの番だ」

 0が次に呼び出したのは、あのボード。これは屋内でも呼び出すことが出来るようだ。ボードに乗ると、怪人の顔がある位置まで上昇する。先程の変身では、怪人は頭以外の部位を変形させていた。都市伝説の通りなら、この暴霊の本体も頭だけの筈だ。

 武器を弓矢に変えて頭に狙いを定める。下からは手が襲いかかってくる。まずは手に矢を放ち、暴霊にとっての毒でそれらを麻痺させた。球体の中で脳が震える。対処法を考えているのだろう。そんな隙は与えない。再度頭に狙いを定め、矢を放った。

「これで終わりだ」

 矢は見事暴霊の額に刺さった。毒が内部に回って来たのだろう。白目を向いて震えている。鎧の色はくすみ、音を立てて怪人から分離、床の上で消滅してしまった。最後に頭も痙攣しながらスッと消えてしまった。

 また1体暴霊を倒した。悠真も元の姿に戻った。分析に使えるだろうと思い、先程靖子が落とした携帯を黙って持ち出した。もう使用出来まい、文句は言われないだろう。

「はぁ、気持ち悪い野郎だったな」

 そんなことを呟きながら、悠真は悪夢の建物から抜け出した。

「安藤さん? 浄霊、完了しました」





 後日。

 悠真はまた康介と一緒に話をしていた。話題は勿論怪人の件だ。

「しっかしビビったなぁ。アレは何だ? 都市伝説が1人歩きして進化してたってことなのか?」

「さぁな」

 その後、上層部でも悠真が持ち出した携帯に宿った念を頼りに暴霊のことを調べていたらしいが、何者が、どのような念を抱いて蘇ったのかはわからないのだという。以前現れたマタタビのように、術師が造った存在ということも考えられるが、或いは今康介が言ったように、伝説が1人歩きした結果なのかもしれない。

「あの団体は?」

「酷いラストだよ。団体は分裂、秋月靖子も気を病んで休んでる」

 喋りながら、康介がカツ丼を頬張る。と、何かを思い出したのか、箸を止めて口内の物を飲み込むと再び話し始めた。

「その秋月、髪の毛を4分の1ばかし取られたらしいぜ? 怪人も最後にゲットしたのが髪の毛だったってのもなぁ。ははは」

 康介は笑っていたが、悠真は全く笑えなかった。

・アンサー・・・携帯の中から現れた暴霊。電波を介して移動出来る。継ぎ接ぎだらけの人間の姿からポッド型のエイリアンの姿に変身することが可能。本体は頭のみ。都市伝説の怪人アンサーを意識した姿なのだろうが、詳しいことは全くわからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ