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GRAVE KEEEEPER【Red Moon】  作者: 鵤牙之郷
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旧友#1

 満月。

 この月が出ると、何かと喜ばしくない事が起きるという。犯罪率もこの月の頃は大幅に上がる。経済が不況に陥るのもこの時期が多いらしい。

 嘗て、ある集団によって管理されていた廃屋。

 そこに、1人の人間が眠っている。ぼろぼろになった男性。名は、神田明宏。

 その神田に歩み寄る者が1人。人の姿をしていない。茶褐色の痩せこけた身体に、両腕に生えた2本の大きな角。そして、紫色に輝く眼。

 昆虫の姿をした怪人は静かに神田に歩み寄った。そして、しばらく彼を観察した。

「あなたに、新しい命を与えましょう」

 そう言って怪人が出したのは、青く輝く火の玉。人間の魂だ。

 怪人はそれを、神田の身体に入れた。すると、神田は突然目を開け、激しい痙攣を起こした。が、すぐにまた眠りについた。

「それで良い。今日は素晴らしい満月だ」





「ねぇ由美、これからカラオケ行かない?」

「ああ〜、ごめん! 今日は予定あるんだ。またね!」

 友人に別れを告げ、佐藤由美は細い路地に入った。

 人気の無い路地。しかし行き先への近道はここしかない。

 暫く歩くと公園が見えてきた。あの公園を右に曲がれば目的地に着く……と、そのとき。突然背後から何者かに突進された。地面に手を突き、慌てて左側に移動し、突進してきた者の顔を見た。

 見知らぬ男性だ。太っていて、暑いからか、汗が滴り落ちている。そして手に握られたアイスピックを見て由美は凍りついた。

「フフフ……きょ、今日は道違うんだね」

 ストーカーだ。

 男性はアイスピックを構えてヨロヨロと近づいて来る。逃げたいのだが、足が竦んで動けない。男と由美の距離は縮まってゆく。一か八か、由美は男性に呼び掛けた。

「ねぇ、や、止めて下さい! 警察呼びますよ!」

「みぃんな言うんだよなぁ、ソレ。呼べるものなら呼んでみな」

「や、駄目……お願いだから」

「フフフ、僕の物になれ!」

 由美の目の前に立つと、男はアイスピックを持って由美に突っ込んだ。

 尖った先端が彼女の胸に刺さって……いない。何と彼女は、自分の歯でソレを押さえていたのだ。更に、歯に力を込めて先端を噛み砕いた。男は息を荒げて後ずさる。街灯に照らされて由美の歯が光った。彼女の歯はどれも金属の様だ。

「面白いわね。逆に、殺してみなさいよ。さぁ、早く!」

 立場が逆転し、今度は男が倒れた。今まで自分が襲ってきた女性達と同じく足が竦んで動けない。だが、由美の姿をしたソレは近づいて来る。思わず失禁し、男性は悲鳴を上げた。すると、

「やっと見つけたよ」

 横から誰かやって来る。黒いTシャツを着た青年。掛けているバックも黒い。髪は耳のあたりまで伸びている。

 ニヤニヤしながら、青年がバックから何かを取り出した。刀だ。

「ここいらで暴れ回ってるヤツがいるって聞いてな」

「ちっ、ディレクターが言ってたヤツか」

「話す手間が省けた」

 青年が刀を鞘から引き抜いた。

 何が何だか解らず、男性は走り出した。失禁したせいで走り方が妙だ。

 そんな男のことはつゆ知らず、2人は戦闘態勢に入った。

「聞いてるなら解ってるよな? あんたを、逝くべき場所へ連れて行く」

「ふざけるな。あの人は私に存在意義を与えてくれたのだ! 私は永遠に、あの人と共にいる!」

「みぃんな言うんだよな、ソレ」

「黙れぇっ!」

 由美の身体が青白い炎に包まれ、おぞましい怪物の姿になった。黒いトカゲのような姿だが、頭には触覚が生えている。右手には大きな刃が、そして尾にもトゲが幾つも生えている。

 ……と、青年の身体も炎に包まれ、白い鎧を纏った戦士の姿に変身した。そして、刀を振って衝撃波を放った。怪物はそれをジャンプしてかわし、着地すると猛スピードで青年に突進した。その威力は街灯が折れてしまう程だ。

「暴れる奴にはコイツだ」

 突然、青年が持つ刀の形状が変化し、大きな斧のようになった。それをひと振りすると、大きな刃が怪人にぶつかり、尾を切断してしまった。怯んだ怪物に、青年が更にもう1撃食らわせる。今度は刃が付いた右手が切り落とされた。

「これで終わりだ!」

 青年は飛び上がり、圏内に入ったところで斧を振り下ろした。彼の計算通り、怪人の身体は真っ2つに別れ、灰に変わってしまった。

 任務が終わり、青年は元の姿に戻った。

「……結局情報無し、か」

 青年は残念そうな表情を浮かべてその場を去った。


 青年の名は、西樹悠真。念によって現世に踏みとどまる「暴霊」と戦う、墓守の1人である。




 はぁ、何だよ、見らんなかったよ、金谷空人が死ぬ瞬間。

 これだから子供は嫌なんだよ。こっちの都合も知らないで……あ、今回はしょうがないか。全く、何が修学旅行だよ。遊びとか言っていじめばっかやってる鬼畜共に日光なんて勿体ねぇだろ。ああいう場所は、ディレクターみたいな上品な奴が行くべきなのさ。

 それにしても最近は何かと邪魔が入る。墓守のエリートの……確か、秋山荘司だっけか? そいつが教育委員会とか言ってこっちに来やがった。俺もジェントルマンだから紳士らしく挨拶してやったが、中々やる野郎だった。今回もまたひと悶着あるだろうなぁ。それでも、俺個人の願いは叶うから別に良いか。

「あ、もしもし」

『メールした通り、金谷空人氏の班は壊滅しました。改めまして、今後ともよろしくお願いします、ビースト』

「いやあ、俺もあの人のやり方は気に入らなかったんでね。お宅のやってる実験の方が楽しそうじゃない」

『あなたもやってみますか?』

「ああ〜、いいや。今の力の方が使い易いし。また何かあったら呼んでよ。今は、お宅らの傘下の術師なんだからさ」

『ええ。お願いします』

 ディレクターだった。

 正体はわからねぇが、やっぱり前の上司とは違うね。またあいつのために働きたい! って思っちゃうんだよな、コレが。あいつ、人間社会でも充分働けるんじゃないか? 経営者に向いてるよ、あれは。

 さぁて、授業の時間だ。ここにいる時間も後少し。精々楽しむとしよう。






 その日は本当に暑かった。

 寝ぼけ眼の西樹悠真が大学の食堂から出て来た。

 昨夜は仕事が入っていたため睡眠時間をとれず、そのまま寝ずに登校した。しかも仕事のせいで疲れも溜まっていた。彼の仕事は普通の仕事ではない。一般の職業では生身の人間を相手に交渉なり商売なりを行うのだが、彼が相手にしているのは、一度死亡した者達なのだ。しかも、よく夏休みの特番で特集しているような者達ではなく、もっと恐ろしい霊なのである。彼等は各々の未練、怨念によって現世に留まり、それを満たす為に暴れ回る。そのため、この類の霊は【暴霊】と呼ばれる。この暴霊を現世から引き離し、逝くべき場所へ導く者達を【墓守】という。

 普通の霊との決定的な違いは、誰の目にも見えるということだ。彼等はこの社会に、人間として潜伏している。そのため墓守は自分達で怪しい事件をサーチせねばならない。墓守を統率している者から連絡が来ることもあるが、大抵は自主的に行う。

 悠真も自分から事件を探す派だ。今日も図書館で新聞を開き、何か起きていないかサーチしている。

 幾つか気になる記事があった。例えばこんな事件。

 小学校教師・坂木原繁が何者かによって自宅で殺害された。被害者には首から上が無かったという。断面から、彼の首は何か強力な力で吹き飛ばされたようだ。気になるのは、それ程のパワーが室内で作用していたにも関わらず、誰1人としてその音を聞いていないということだ。

 悠真がこの事件に興味を持ったのにはもう1つ理由がある。殺害された坂木原教諭が、悠真の小学校時代の教師だったからだ。

「偶然ってのも、面白いもんだな」

 側にいた学生達が悠真を見た。

 気まずくなり、悠真は新聞を畳んでバックに仕舞って外に出た。

 外に出てから後悔した。外は暑い。恥ずかしくなっても冷房の効いた図書館の中に居れば良かった。もう少し、せめて夕方までキャンパスの何処かで時間を潰そう。そう思った矢先、ポケットに仕舞っている携帯が振動した。悠真は相手の名も確かめずに電話に出た。

「もしもし」

『青年、早く来い! 迎えに来たからよ』

 相手は悠真の上司、安藤肇だった。悠真は不機嫌そうに言う。

「要件も言わずに何なんですか?」

『あぁ、ええっと、何だっけな。いいや、後で話す! ほら、門の所で待ってるから来い!』

 安藤は別に悪人ではないのだが、今のようなミスを頻繁にする。おまけに自分から暴霊を探すことは滅多に無く、殆どの時間はパチンコや競馬に費やしている。とは言え悠真が今墓守の仕事が出来るのも安藤のお陰だ。だから悠真は何だかんだ彼に感謝している。

 言われた通り門の辺りに来てみると、中古車の運転席に座っている安藤の姿が見えた。駆け足で車に近づき、悠真は助手席に座った。

「よし、行くぞ青年」

 安藤は要件を言わずにハンドルに手をかけた。慌ててそれを止め、悠真は彼に問うた。

「理由は何ですかね?」

「え? あぁ、そうだったな」

「社会人として拙いんじゃないんですか?」

「解ったよ、悪かったよ! あの……そうだ。事件だ。それもかなりヤバそうな。取り敢えず、秋山が待ってる所に行く」

「何処なんですか?」

「ああ、確か……」

 安藤がメモ用紙を取り出した。電話のときもそれを見れば良かったものを。

「ええっと、明政小学校だってよ」

「え?」

 悠真は驚いた。

 何を隠そう明政小学校は、悠真の母校なのだから。







 その明政小学校では、秋山荘司が校内を監視していた。

 秋山は墓守のエリートであり、しばしば潜入捜査を任される。今回は教育委員会職員として学校に来ている。

 監視の最中、秋山はいじめの現場に遭遇し、その度に注意していた。だが、彼が注意したのは8回だ。各学年に最低1回ずつ。彼は嘗て教育実習生としてここに来ていたのだが、そのときもいじめはあった。10年も経ったのに、全く変わっていない。思わず落胆した。何故いじめというものは無くならないのだろう。そんな事を考えているとまたいじめが。秋山はまた注意しようとした。すると、

「こらっ、何やってんだ?」

 1人の教師が子供達に注意した。ベストの似合う、優しそうな男性だ。その教師は生徒からも慕われているようで、注意された子供達も素直に謝ってその場を去った。子供を見送った後、教師は秋山の方を向いた。

 この男、初めて会った気がしない。前にも1度会った気がする。しかし相手は覚えが無いようだ。取りあえず会釈し、話し掛けてみた。

「今の時代、珍しいですね。子供に注意する先生って」

「本当はそれが普通なんですけどね。何故か最近は、その普通の事をやらない人が多過ぎる」

「解ります。教育委員会の対応の遅れも問題ですね」

「そうですね。学校や委員会がもっといじめにしっかりと取り組んで、子供達にとってより良い環境をつくらなきゃならないんです」

 この教師は珍しくよく解っている。いや、彼が言っていたように、こんな考え方が普通なのだろう。いつからこうなってしまったのか。2人は暫く教育の考えについて盛り上がった。結果すっかり意気投合し、2人は互いの名刺を交換した。

「え? 氷川先生?」

「あれ? 秋山君?」

 漸く思い出した。

 彼は氷川幸助。10年前新任教師としてこの学校に赴任してきた。その際実習生だった秋山とも仲良くなったが、ずっと連絡を取っておらず、何より10年経って2人の見た目も変わっていたためどちらも気付かなかったのだ。

「いやあ、懐かしいなぁ! 後で飲みに行きましょうよ」

「ああ、そうですね」

「楽しみだなぁ! あ、これから帰りの会なんで、また!」

 そう言って幸助は自分の教室に向かった。まさかここで再会するとは。彼はあのときからずっと明政小学校に通い続けていたのだ。

 自分も教師になっていたら。そんな考えが不意に脳裏をよぎったが、たとえ教師になっても秋山は墓守の職にも就いていただろう。

 自分もひとまず引き上げよう。そう思って階段の方を向くと、そこに恐ろしい姿の生物が立っていた。獣人だ。この獣人とも以前遭遇した。つい最近校内で襲われたのだ。秋山が安藤に知らせた術師というのがこの獣人なのだ。

「ふふふ」

 獣人は上の階へ逃げた。秋山も急いで跡を追う。

 どんどん登って行き、2人は遂に屋上に到達した。獣人は先にそこに着き、腕を組んで秋山を待っていた。秋山はステッキを取り出して構えた。

「やぁ、秋山荘司君?」

「何故名前を知っている?」

「君達墓守のことは何でも知ってるよ」

 睨みつける秋山を鼻で笑い、獣人は屋上から別のビルへジャンプしその場から逃げた。

「何でも、知っている?」

 終令のチャイムが、校内に鳴り響いた。






 悠真と安藤が明政小に到着したのは獣人が逃げた後だった。車を近くの駐車場に停めて校内に入ると、ほぼ同時に秋山が校舎から出て来た。

「おい」

「遅いよ。さっき術師が逃げていった」

「ええっ? あぁすまん、青年が来るのが遅くて」

「俺のせいですか?」

 秋山は安藤に文句を言う悠真を見つめた。前にアルバムを見たとき西樹悠真の名を見つけた。しかもクラスは秋山が実習で来ていたクラスだった。何となく、秋山は悠真に尋ねてみた。

「西樹君」

「はい?」

「君、ここの卒業生だよね」

 秋山からの質問に悠真は一瞬戸惑い、

「ええ、残念ながら」

 と答えた。そして、何が残念だったのかを話し始めた。悠真は小学校の頃いじめに遭っており、ある年の担任に至ってはいじめの相談をすると面倒臭がる始末だったという。そしてその教師こそが、先日殺害された坂木原繁だった。悠真がこの事件に興味を持ったのは、決して坂木原の死がショックだったからではない。彼の死に関しては無関心だった。

 ここまで話を聞くと秋山の疑問は確信になった。間違い無く、彼は10年前に悠真に会っている。

「10年前、教育実習生としてここに来てたんだけど、覚えてないか?」

「10年前……あ」

 坂木原の記憶と連動して、嘗て秋山と会話したときの記憶も蘇った。彼は、孤立していた悠真達にも声をかけてくれ、いじめについても考えてくれていた。悠真“達”と記したのは、悠真と同じ境遇の生徒がもう1人いたからだ。

「お久しぶりです」

「ええ? 知り合いだったのか?」

「知り合いというか、ちょっと話した程度ですよ」

「まさか、その内の1人が墓守になったとはな」

 神の悪戯か。

 悠真もこの様な形であのときの実習生に再会するとは夢にも思わなかった。それは秋山も同じだろう。両者とも今まで気付かなかったことに驚いている。どちらも見た目や性格が変わっているから、解らなかったのも当然か。

「でも、何で今聞いたんですか? もしかしてそれが関係してるんですか」

「いや、すまない。何となくだ」

 その後、術師に関する情報は掴めず、3人は別れた。秋山は校内に残って術師が戻って来ないか待ってみたが、結局現れることは無かった。

 神の悪戯。秋山は何となく、神がまた悪戯をしでかすような気がした。悠真のたった1人の友。彼ともいずれどこかで会うのではないか。いや、もしかしたら、もう会っているのではないか……術師として。

 帰りの道中、秋山はずっと考え込んでいた。






 翌日。

 悠真は大学の食堂に居た。今日は同学年の沖田恵里と一緒だ。彼女は友人以上の存在であり、墓守としての悠真も受け入れてくれている。彼女もこれまで何度か暴霊に遭遇している。嫌でもこの非現実的事象に慣れるだろう。しかもその内2度は彼女の友人達だった。それも関係しているのか、彼女は悠真の浄霊をただ倒す事ではなく、救済として考えている。

 術師の一派を壊滅させてからは彼女と話す機会も増えた。今の悠真は、彼女をはじめ、大学の友人達と会う時間が至福の時なのだ。

「それでこの前小学校に行ってきてさ」

「へぇ、そうなんだ! あ、それもあの怪物が関係してるんだっけ」

「ああ、多分ね」

「それじゃあ大変だね。母校で怪物が出ちゃったら」

「いや、彼処には良い思い出無いからさ。仮に彼処から浄霊頼まれても、素直にハイとは言えねぇな」

「え?」

 恵里が悠真を見つめた。母校でなら暴霊の攻撃も容認出来る。その様な言葉が悠真の口から出たことが恵里には驚きだった。

 思い出すと怒りがこみ上げて来るようで、悠真は更に続ける。

「常に誰かを蹴落とそうとする奴ら、生徒が苦しんでるのに助けようとしない教師。そんな奴らのいた学校なんて、俺はどうでも良い」

 暫し沈黙。

 初めて見る悠真の1面に恵里は驚いた。普段見知らぬ人や霊を助けている悠真からそんな言葉が出るとは思わなかった。だが、彼にもそれなりの理由があるのかもしれない。いつもと違って、怒りに支配されているように思われる。

「でも」

 恵里は静かに言った。事情も知らないで一方的に反対するのは嫌だったのだ。

「今そこにいる人達が悪い訳ではないでしょう? だから」

「変わってねぇよ、あそこは」

 その時、一瞬、本当に一瞬だったが、悠真の瞳の奥に青白い光が見えた。

「駄目っ!」

 思わず叫んでしまった。何故か、止めなかったら悠真も怪物になってしまう気がした。彼女に止められて悠真はハッとした。体温がすっと引いてゆくのを感じた。

 2人は気まずくなって黙った。先に動いたのは悠真だった。ご馳走様と言って席を離れた。彼が見えなくなるまで恵里はずっと見つめていた。





 何故だろう。学校の話をしていたとき、悠真は自身の心が怒りで支配されてゆくような感覚を覚えた。

 戦いの中で、悠真は大きな力を得た。暴霊から力を吸収し、自分の力に変えられるのだ。この力、確かに効果的なのだが、まだ何か秘密があるような気がしてならない。それも、大きな秘密が。

 それはそうと、これからどうしよう。今日は特に仕事も無く、悠真には行く場所が無い。それに、恵里を不安にさせてしまった。次会った時に謝らなければ。

 そんなことを考えながら校門へ歩を進めていると、入口のところに誰かが立っているのが見えた。

 悠真と同い年位の青年だ。伸びきった髪を後ろで纏め、リアルな髑髏が描かれたTシャツを着ている。ズボンはダボダボの作業着のようだった。

 青年は明らかに悠真を見つめている。にやけながら。不思議に思い、バッグに仕舞ってあるステッキに手をかける。すると、相手はいきなり手を前に突き出し、何かを出して見せた。ペンダントだろうか。しかし、先についた飾りは宝石ではなく紙粘土で出来ている。それを見ると、悠真は目の前の青年が誰であるかを思い出すことが出来た。

「よっ、悠真」

「嘘だろ、お前陽助か?」

「ああ。ここ突きとめるの大変だったぜ」

 青年の名は、和喜陽助。明政小時代の悠真の親友である。

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