29 ボツネタ
28の続き。
たいてい本編から省略しているのは、街のことや部隊のことを詳しく書いたあたりなんですよね(遠い目
なお、ムドウ部隊長の故郷は本編でいつか投げ込まれるので、省略しています。
ムドウ部隊長が、故郷の話をゲロったあと。
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奇妙な空気が生まれた。
ラックバレーが、悪態をついた。
「くそ、下手打った」一瞬、カードゲームの話なのかと思った。「――俺、部隊長にゲロってもらおうなんて、思ってなかったっスよ」
「別に隠してることじゃねえよ」
「隠してなくても、場が重くなってんじゃないスか。ああもう、こういう空気、俺死ぬほど嫌い」
ラックバレーがカードを伏せて立ち上がった。みんなの分の珈琲カップを持つ。佐倉のほうを見ると、空いた自分の席を指差した。
「座って待ってろ。いいかビリにはなんなよ。賭けてんだからな」
「ええ? 私、ルール知らない!」
「なにぃ。カードゲームもできない奴が、試験に合格できるなんて、甘くなってんじゃねえんスか! 入隊試験!」
「その試験で、ササヅカに負けた奴がよく吠えるもんだ」
ムドウは自分のカードから顔を上げなかった。
しかし他の二名がぎょっとして顔を上げた。
「おまっ……歴代一無能な新人に負け……っ?」
「ばッ…バカヤロっちげえよ! 剣技試験じゃねえっあれは――あれは、た、体力テストだ!」
「体力テストだ?」他の二名は意味が分からないとばかりにムドウを見た。ムドウは無視した。ラックバレーは唸って部屋を出た。残るは佐倉しかいなかったが、佐倉も言うつもりもなかった。
たしかに体力テストには合格だったが、『歴代一無能』の汚名が圧し掛かっていた。くそう、練習しなきゃ。剣になれなきゃ。
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バレさんは、なんやかんやで周囲に気配りをしてしまう人、と分かる一場面。
皆分のコップを持つあたりが、にじみでる世話係空気。