26 ボツネタ
ボツネタ。
扉の先で、佐倉とモン兄さんが隊から遅れて話しているあたり。
「なろう」では、モン兄さんの餌付けが書かれているが、ジャーキーもしゃもしゃネタは、「なろう」で採用したエピソードなので、下書き段階では生まれていない。すると、こうなる。
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「それで、お前、街に着いたらどうするんだ?」
「んー」意識がそれた。長期的計画は何も無い。だってここがどこだかも判らないのだから。でも何もしないままではいられないだろう。「まだ何も決めてないけど……居場所を作りたいなあってのは思う」
まずはそれからだ。「帰る」場所を決めて、そこを拠点にして、考えたかった。蓋をしたことは、いくらでもある。多分、余裕が生まれたら考える時間もできるだろう。それまでは封印して、目を逸らしておこうと思う。きっと考えると泣き出してしまうから。
「そうすると、働かないといけないし、部屋借りなきゃだし……まずは誰かにお金を借りないと生活できないや。アルルカさんあたりが助けてくれるとは思うんだけど」
街まで連れてきてほったらかしってことは、恐らくないだろう。
「じゃあ、お前、うちのギルドに入れば?」
「ええ?」
「グレースフロンティアは、街一の団体だ。給料もいいし、部屋も手配される。格も高い」
ものすごく惹かれた。でもすぐに無理だって気づいた。
「それって」警戒した目をモントールに向ける。「それってさ、ギルドの加入条件はどうなってんの」
「他薦、自薦問わないが、加入試験の合格が必要」
「加入試験って何すんの」
「実技だけだよ」
「実技ってそれ」佐倉は、モントールの腰を指差した。剣が、鞘におさまってそこにある。「でしょ」
「まあ武器はなんでもいいけど…得意なものってことさ」
佐倉は呻いた。「無理。だって私、刃物で触ったことがあるのは包丁とカッターくらいだもん」
「ええ? じゃあ、お前今、完全に丸腰なの?」
信じられないといった声に、またしても異文化を感じた。村のおばあさんでさえ、短剣を持っていたのを今頃思い出した。治安が悪い国なのか?
「うちの国は、刃物を持って往来に出たら、捕まると思うよ。その、ギルド、みたいなものに」
「へえ、土地が変われば、ってやつだなあ」
他国説万歳。すんなり会話できるもんだ。
「そうすると、確かに……うちの試験はダメだろうな」
「うん……」
「そう気落ちしなさんな。オレも部隊長に言ってやるよ。部隊長の推薦書もらえれば、昼街の他ギルドでも結構話を聞いてもらえるよ」
「うん」佐倉は見通しのたちそうなことに、ほっと息をついた。「ありがとう」
モントールはしばらく黙った。それから小さな声で呟いた。「もったいねえなあ」とかなんとか。何が?
「あ、そういえば、もう1つ聞きたいんだけど、人形って―――」
佐倉が、話しかけた瞬間、爆音がこだました。「うわ!」地面が大きく揺れ、佐倉はロバを御すこともできず、落馬した。「ィ…った…っ!」
「襲撃だと!」
モントールの鋭い声。何が起こっているのか、わからない。ロバの足先から、煙と爆音が続いている。大混乱。
え、これは何……?
「ササヅカそこにいろ!」と、モントール。
「え、でも……!」
反論の余地はなかった。モントールは手綱を引いてすでに走り去っていた。つながれたもう一匹も、モントールのロバについて走っていく。
ひとり、地面に残った佐倉は、茫然としていた。
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ササヅカ、モン兄さんに置いてかれました(私も呆然
当然、このあとの展開も変わってきてしまうわけですねwww
それと大きな違い。本編では、確か馬に乗っているが、下書きでは馬が存在せず、ロバみたいなものに乗っている。




