駅員さんは、名前もないのにこうなった。
本編で、たった一話のみ出てきた駅員さん。
名前もない彼は、イラスト祭の時期と偶然重なったことにより、表舞台に登場した。とっつぁん、鎧兜の兄さんを差し置いて、である。
以下、祭の際に投下されたもの。
駅員さんは、
*紳士の皮を被った腹黒もしくは愉快狂の匂い
*カウンターと飲み友達である可能性を模索
から妄想が爆発。
*
グレースフロンティアの本部を覗く。
いつもカウンターで胡散臭い笑みを浮かべている目的の人物がいない。
今日は一緒に食事に行くって、約束してなかったっけ?
ムカムカする気持ちを落ち着けるように、一つ深呼吸。
美味しいものが食べたい。
以前、教えてもらった店に足を運ぶ。
その時に一緒にいたはずの人は隣にいなくて。
気持ちを鎮めるために美味しいものを食べようと思ったにもかかわらず、結局隣にいない想い人を考えてままならぬ気持ちのまま店へと歩いた。
薄暗い店内。
テーブルと壁にある橙色の優しい灯りで、転ばずに歩ける程度の光量。
カウンター席に座ろうと、目をやると食事の約束をしていたはずの想い人。
なん、で
隠れるように店の隅の、ちょうど店内のインテリアに隠れるような席に座る。
その席は、カウンター席見つめるにはちょうどよくて。
誰かと、待ち合わせ?
疑問に思った時、店内に新たな客が入ってきた。
その人物は軽く店内を見渡し、カウンターに座る人にすまなそうに声をかけて隣に座った。
誰だろうとよく見ると、見覚えのある顔。
白髪交じりのその人物を陰から じっ と見つめていると、その男性の隣に座っている想い人は何か 言葉を交わして、とても楽しそうにくつくつと喉を鳴らした。
隣の男性も にこり と笑う。
・・・あ!
やっと思い出した。駅員さんだ。
にこり と笑い、改札で見送るその人物に、何故 と思いつつも、何を話しているのか耳をすましつつ見つめると
「あの、お客・・・さま?」
と、戸惑う声が。
はた と気づいて隣を向くと困った様子の店員がいた。
注文を伺いに来ていたらしい。
羞恥に染まる頬を手で隠しつつ、軽い飲み物を頼む。
恥ずかしい。恥ずかしい・・・。 と頬に集まった熱を覚ましつつ、ちらり と視線を戻すと目があった。
・・・・・。
目が、あった。
ば、ばれ・・・・
盛大にカウンター席で爆笑するその人に、思わず殺意が湧いたのは仕方がないと思う。
その隣に座る駅員も、とてもいい顔で笑っている。
悔しい と思いつつも、こちらに来い と手招くそれに嬉しく思ってしまう自分にも、悔しくなる。
にんまり と笑む、目の前の男。
隣で申し訳なさそうに笑う駅員も、目の奥で楽しそうにしているのがわかる。
・・・同類?
悔しくて悔しくて。
にっこり 笑った。
おや? と片眉をあげる男の頬を抑えるように手を添えて噛み付くように口づけた。
明日、噂になってればいいのよ。
グレースフロンティアのカウンターが女に襲われていたって!
隣で笑う駅員を、邪魔だというように、それでも笑う想い人に深く熱を分けた。
これで、駅員がカウンターと飲み仲間。
腹黒設定が出来上がった。
名前も無いのに、キャラが確立。さすがである。