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第十五話 伯父上参上

〈目次〉

・第一節 修司

・第二節 男運

・第三節 帰還


〜前回のあらすじ〜

 デートの帰り道、ヤンキー五人衆に絡まれてしまった結衣と拓海。下劣な行動に怒りを露わにした拓海は、運動神経と知恵を使ってヤンキー達を圧倒した。この戦いで、結衣は拓海の強さと残酷さを知ることになった。


〜登場人物〜

・山崎結衣(19歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長女。意義人の姉。国立白鳥大学文学部1年生。美白な肌と綺麗な茶色のロングヘア、美脚、丸い小顔が特徴。普段は青いワンピースを着ている。少しだけ女優として活動している。弟とよく喧嘩をしてしまうが、大切に思っている。


・山崎意義人(17歳)

 山崎弘・美佐子夫妻の長男で、結衣の弟。高校2年生。結衣と比較すると地味な顔立ちだが、似ている部分もある。姉とは仲良しだが、よく喧嘩もする。


・山崎弘(45歳)

 山崎義郎・文枝夫妻の長男で、結衣と意義人の父。容姿は、眼鏡をかけた地味な丸顔で、髪は少し薄く、小太りである。愛娘の結衣を溺愛している。


・山崎美佐子(42歳)

 田辺寛夫・優美子夫妻の長女で、結衣と意義人の母。顔は結衣と似ているが、結衣よりもほんの少し面長。髪型は、若干ウェーブがかかった茶髪。優しい性格。


・田辺修司(44歳)

 田辺寛夫・優美子夫妻の長男で、美佐子の実兄。結衣の伯父にあたる。慶應義塾大学文学部の教授。美佐子に似た穏やかな顔をしており、冷静な性格。妹思いな兄でもある。一男一女(勲・桃香)の父。


・大橋拓海(大学1年生)

 結衣の同級生の男子。黒髪で若干面長なタイプのイケメン。その瞳には、人を魅了する色気を帯びている。結衣に好意を持っているが、その軽薄な性格は結衣の好きなタイプではない。

第一節 修司


 結衣と拓海は、どうやって家に帰るか途方に暮れていた。拓海は、結衣を一人で帰らせるわけにはいかない。しかし、拓海と一緒に帰れば、弘に何と言われるか。結衣は、父の顔が脳裏に浮かび、またしても不安になる。

 その時だった。見覚えのある車が、ゆっくりと二人の目の前に停まった。運転席の窓が開き、中から顔を出したのは、結衣の伯父・修司だった。美佐子は兄の修司とはとても仲良しだ。結衣も幼い頃、修司とはよく遊んでもらっていて、とても懐いていた。


修司「結衣、さあ乗りなさい。母さんが心配してるよ。」


 修司は、結衣に優しい笑顔を向けた。結衣は、修司の顔を見て、ホッと安堵の息を漏らす。同時に、自分の状況を誰かに見られた恥ずかしさも感じていた。拓海は、修司の登場に少し驚いた表情を見せながらも、結衣を気遣うように、そっと肩に手を置いた。


結衣「修司おじさん…!どうしてここに…?」


 結衣は、修司に問いかけた。修司は、結衣の視線を受け止めると、ちらりと拓海の方を見た。そして、すぐに結衣に視線を戻し、いつもの優しい声で答えた。


修司「美佐子から連絡があってね。結衣がまだ帰ってないって。それで、心配で迎えに来たんだ。…お隣の彼は?」


 修司は、拓海に視線を向けた。結衣は、少し緊張しながら拓海を紹介する。


結衣「あ、あの…こちらは、大学の友達の、拓海…大橋拓海君です。」


 拓海は、修司に深々と頭を下げた。


拓海「大橋拓海です。結衣さんとご一緒させていただいてました。」


 修司は、拓海の挨拶に小さく頷いた。その表情は、どこか拓海を値踏みしているようにも見える。しかし、すぐに優しい笑顔に戻った。


修司「そうか。拓海君、結衣を家まで送ってくれてありがとう。後は私が送っていくから、君はここで大丈夫だよ。」


 修司の言葉に、拓海は少し躊躇する。しかし、修司の目は、有無を言わさない威厳を帯びていた。拓海は、結衣に視線を送る。結衣は、拓海の不安そうな顔を見て、小さく頷いた。


結衣「拓海、今日は本当にありがとう。助かったわ。」


 結衣の言葉に、拓海は少し寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔を作った。


拓海「…おう。またな、結衣。」


 拓海は、結衣にそう言って、軽く手を振った。結衣は、修司の車の後部座席に乗り込む。修司は、結衣が乗り込んだのを確認すると、拓海に軽く頭を下げ、車を発進させた。

 車が走り出すと、結衣はバックミラーで拓海の姿を探した。拓海は、まだコンビニの前に立って、結衣の車を見送っている。結衣は、拓海との今日の出来事を思い出し、胸が締め付けられるような気持ちになった。そして、今日拓海が買ってくれたバッグを、そっと抱きしめた。



第二節 男運


 修司は、バックミラー越しに後部座席に座っている結衣に話しかけた。


修司「結衣も意外と青春してるんだなあ。私が妻の和美と出会ったのも大学だよ。」


 修司の言葉に、結衣は顔を赤くした。拓海のことは、まだ「彼氏」と呼べる関係ではない。しかし、修司の言葉は、まるで二人の関係を公認されたかのように聞こえ、結衣の心はざわつく。


結衣「お、おじさん!拓海君はただの友達よ!それに、このこと、お父さんには内緒にしててね…絶対よ!」


 結衣は、必死な声で修司に懇願した。弘がこのことを知ったら、きっと大変なことになる。


修司「わかった、わかった。父さん、結衣のこと全く手離そうとしないからね。」


 修司は、結衣の言葉に苦笑いを浮かべた。弘の結衣に対する過保護ぶりは、修司もよく知っている。


修司「でも彼氏と遊んでばっかで勉強を疎かにしないように。お祖父さんに怒られちゃうからね。」


 修司の言葉に、結衣はハッとした。あの厳しい祖父寛夫に、もし勉学を疎かにしていることがバレたら、何を言われるか。拓海とショッピングモールでデートし、高級ブランドのバッグまで買ってもらったことなど、絶対に知られてはならない。


結衣「わかってるわよ!ちゃんと勉強するもん!でも、おじいちゃんにだけは言わないでね!」


 結衣は、慌てて修司にそう言った。今日の出来事を、弘に知られるのも嫌だが、寛夫に知られるのはもっと嫌だ。特に、勉学を疎かにしたと誤解されることだけは避けたい。結衣は、寛夫に認めてもらうために、人一倍努力してきたのだから。

 修司は、そんな結衣の様子をバックミラー越しに見て、小さく笑った。結衣も、ようやく普通の女の子らしい恋をする年頃になったのか、と修司は思った。今日のことは、美佐子には話すだろうが、弘や寛夫には話さないでおこう。修司は、心の中でそう決めた。


修司「拓海君が良い子だといいね。結衣は昔から男運が無いからなあ。」


 そう言って、修司はまた少し笑った。結衣は、修司の言葉にムッとする。


結衣「失礼ね!そんなことないわよ!」


 結衣はそう反論したが、心の中では少しだけ図星を突かれたような気がした。今まで付き合ってきた男性は、確かに少し問題のある人が多かった。拓海が、そうでないことを願うばかりだ。


修司「そういえば、桃香も結衣に会いたいって言ってるよ。桃香、昔から結衣のことが大好きだからなあ。」


 修司の言葉に、結衣は少しだけ表情を緩めた。桃香は、修司の娘で、結衣の従妹にあたる。中学生の桃香は、結衣によく懐いていて、まるで本当の妹のように可愛がっている。


結衣「桃香が?元気にしてる?じゃあ、今度の日曜日とか、桃香と遊びに行こうかな。」


 結衣は、桃香のことを思い浮かべ、少しだけ頬を緩めた。今日の出来事で張り詰めていた心が、少しだけ解けるのを感じる。修司も、結衣の言葉に満足げに頷いた。


修司「ああ、桃香も喜ぶだろう。それに、お前も気分転換になるだろ。」


 修司は、結衣の顔をバックミラー越しに優しく見つめた。結衣の顔には、まだ少し疲労の色が見える。修司は、今日の出来事をすべて知っているわけではないが、結衣に何かあったことは察していた。


修司「…何かあったら、いつでもおじさんに相談しなさい。母さんにも、父さんにも言えないことでも、おじさんならちゃんと聞いてやるから。」


 修司の言葉に、結衣はハッと顔を上げた。修司は、結衣の良き理解者であり、心の拠り所でもある。結衣は、修司の優しさに、またしても涙が溢れそうになるのを感じた。


結衣「…ありがとう、おじさん。」


 結衣は、そう言って小さく頷いた。修司は、それ以上何も聞かず、ただ優しく微笑んだ。車は、結衣の家へと向かって、夜の道を静かに走り続けた。



第三節 帰還


 修司の車が結衣の家の前に停まると、結衣は深呼吸をしてドアを開けた。家の中からは、弘と美佐子の声が聞こえてくる。

 玄関を開けると、そこにいたのは、安堵の表情を浮かべた弘と、少し心配そうな顔をした美佐子だった。弘は、結衣の姿を見るやいなや、大声で結衣の名前を呼び、駆け寄って抱きついた。


弘「結衣!無事だったか!心配したぞ!」


 弘の体からは、いつもの親父臭がする。結衣は、そんな弘の腕の中で、少しだけ居心地の悪さを感じながらも、安心感に包まれた。


美佐子「もう!結衣!どこで何してたのよ!こんな時間まで…!」


 美佐子は、心配をかけた結衣に、少しだけ怒ったような声を上げた。しかし、その声の奥には、結衣の無事を喜ぶ気持ちが込められているのが伝わってくる。


結衣「ごめんなさい、お母さん、お父さん…。」


 結衣は、素直に謝った。今日の出来事を、どこまで話すべきか迷いながらも、今はただ、両親の温かい腕の中にいたいと思った。

 両親との短い再会を終え、結衣は自分の部屋へと戻った。部屋の電気をつけ、真新しいルイヴィトンのバッグを大切に机の上に置く。そして、そのままベッドに横たわった。

 今日の出来事が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。拓海との出会い、学食でのランチ、ブランドショップでの出来事、そして、あの恐怖の一瞬と、拓海の変貌。温かい拓海の腕の中で感じた安心感。全てが、結衣の心を揺さぶった。

 スマホの画面には、拓海からの新しいLINEメッセージが届いている。「無事に帰れたか?」その短いメッセージに、結衣は胸が締め付けられる思いがした。

 結衣は、ゆっくりと目をつぶった。今日の出来事は、結衣の人生において、きっと忘れられない一日になるだろう。そして、拓海という存在が、結衣の心に深く刻み込まれたことも、また事実だった。




『山崎結衣の憂鬱』第十六話につづく

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