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猫と女神の異界骨董市  作者: 猫ノ あずき
第13話 夜中の学校の骨董市
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4.鈴音

「また、数十万円とか言うのでしょ、どうせ買えないし。そもそも売り物じゃないし、持って帰って捨ててよ」

「捨てるなんて。また、そんなことを言う……あっ、番号札がありますニャ」


 猫娘は背中にあった番号札に気づくと、大福帳を照らしあわせ

「この人形、大福帳に載っていますよ! 値段はえっと……」

 なぜか、猫娘はニンマリと笑い


「なんと! 値段は0円! 」 


「0円って! ただってこと。そんなに価値のないものなの」

 猫娘は翔子に大福帳をみせると、備考欄に何か書かれている。


「とある少女の誕生日に買ってもらい、少女に尽くそうと喜んでいたものの。その日の夜、少女に首を引きちぎられ、その後ホコリまみれで放置され、一度も遊んでもらえずに捨てられた。あまりにも可哀想な人形」

 翔子息をのむ。


「ええー! なんか、私が鬼か悪魔みたいな書かれようじゃない」

 猫娘は、そんな翔子をジト目でみつめ。

「無料です、どうぞ、お持ち帰りくださいニャ」


 翔子は慌てて

「いやですよ! 」

「それはないでしょ、この人形は、お姉さんに会いたくて首がないにもかかわらず、健気にも高天ケ原から艱難辛苦を乗り越え、ここえ来たのです。持って帰らないと可哀想です、祟られますニャ! 」

 大仰に言う猫娘に


「会いたいというより、恨みを晴らしたいのでしょ……怖いよ! 今はお店の物でしょ、どこかで供養してください」

「私は関係ないです、自分で供養してくださいニャ」 

 腫れ物を相手になすりつける翔子と猫娘、そのとき突然、豚男が


「ブブブー!」

 あわてて叫ぶような豚男の声を聞いた猫娘は

「ええ、コンビニに財布忘れた! 骨董市が終わってからにしてニャ、今はここにいて! 」

 猫娘が言うと、翔子も豚男の腕を握っている

「ブヒ、ブヒ!」


 焦る豚男に翔子が

「この人なんて言ってるの」

「今月の給料が入ってるので、なくすと嫁さんに叱られるって」

 呆れた翔子だが、豚男の焦る気持ちもわかる。


「ブヒー! 」

「すぐ帰るからって……待ってニャ! 豚男がいないと怖いニャ」

 あせっている豚男は、猫娘を振り切って出て行った。

 翔子も豚男について出て行こうとしたが、店番の猫娘は翔子の手をつかみ、涙目で


「豚男が戻るまで、ここにいて下さいニャ」

 さすがに、涙をためる猫娘に翔子も気の毒になった……というか


「じゃあ、人形なんとかしてくれる」

「うん……アマテラス様にたのむ……また借金増えるけど」

 翔子はちょっと可哀想な気もして


「わかった、一緒にいてあげる」

 静かになった店内で翔子と猫娘は寄り添うようにして、ただひたすら、豚男の帰りを待っていた。


 時間を刻む時計の音だけが単調に響いている他は、全く音のない冷たい部屋。

 人形の表情は怒って自分達を睨んでいるようで、見ないようにしている。


 あまりに静かで不気味なので、翔子は何か話しをしようと

「でも、どうしてこんな深夜にお店を出してるの」

 すると猫娘は、寂しい表情で


「ノルマが増えたニャ」

「ノルマ……があるの」

 猫娘はこくりと頷くと 


「アマテラス様、最近変なのです。売り上げを気にされて。それで、残業しているのです。怖いけど、仕方なく夜の学校や、廃ビルとかでも営業しているのですニャ」

「そう、それは大変ね」

 相槌をうつ翔子だが、正直なところ人ごと……とにかく早く帰りたかった。


 すると、猫娘は思いついたように。

「ところで気になってたのですけど、ご来店されたとき、お姉さんはだれかと話していたようですが、だれですかニャ」

「涼音だよ……そういえば涼音は! 」すっかり忘れていた。


 しかし、まわりをみてもだれもいない

「涼音はどこ? 帰ったの」

 猫娘は呆れた表情で


「涼音さん?……最初から、お姉さん一人ですよ。だれかと話しているようなので、危ない人だと思っていたのですけど……そもそもお姉さんにしか、案内は送っていないし」

 絶句した翔子に、猫娘が


「ちなみに、涼音さんて友達ですか」

「ええ、違うクラスの友達だけど」

 猫娘は少し考えたあと


「まさかと思いますが……」

 猫娘は、骨董市の売り物でもある、この学校の古い卒業アルバムを持ってきて、とあるクラスの頁をひらいた。


 そのクラスの集合写真の上に黒枠の顔写真がある。

 写真の生徒の名前は……


 [ 桔梗 涼音 ]


 猫娘は神妙な表情で

「この学校に交通事故で亡くなった女生徒がいたと聞いたので。まさかと思ったのですニャ」

 翔子は焦るように


「だって、さっきまで一緒にいたし、メールも! 」

 改めてSNSのメールをみると、自分から涼音に送信しているが、既読になっていない。それに、涼音からの返信は消えている……というか、もともと無かったのか。


「でも、確かに一緒にいたし。メール交換もしてたし……」

 納得いかない翔子に猫娘は


「翔子さん自身が作り出した妄想かもしれません。霊魂や妖はここに入れないですニャ」

「でも、これまで学校や放課後に会っていたし……」

 涼音の存在はあまりに実体感がある。

 ただ、思い返せば、涼音とは二人でしか会ったことがなく、学校や友達で涼音の話しが出たことはない。


 次第に記憶が曖昧になっていく、やはり自分が作り出した妄想なのだろうか。翔子はわからなくなってきた。

 猫娘は、さらに気になることがあった


「ところで、既読になったのは二人と言われましたよね」

「えっ……ええ」翔子も血の気が引いてきた。


「一人は、先程の人形だとして……もう一人は……」

 猫娘も、真っ青な顔でうなずいた。

 そのとき……


 トントントン


 再び戸をノックする音。

 猫娘と翔子は、顔を見合わせ、寄り添って動けない。

 豚男はなかなか帰ってこない

 

 トントントン


 しつこく鳴るノックの音

 翔子に促され、恐る恐る猫娘が

「どちら…さまですか」


 すると、扉のそとから今にも消え入りそうな、か細い声で

 

 ― 涼音です ―


<了>



気になるなと思ってただければ、ブックマーク、お星さま(☆)をくださいませ! 

よろしくお願いします!

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