3.人形
翔子は猫娘にすがりながら。
「あなた、化猫じゃないの。だったら、お友だち系じゃ」
「なにを言います。私はいわば神のお使いのような者。正反対ですニャ」
猫娘は震えながらも講義する。
「だったら、神の力でやっつけてよ」
「そんな、攻撃系の霊力などありません。でも、ここはアマテラス様のご加護ある神域、妖が勝手に入ることはできないニャ」」
ブツブツ言う間も、外から苛立ちの声がする。
「お願い部屋に入れて! 扉をあけて! さむいよ!」
真夏の夜、寒いはずはない。
さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい。さむい!さむい!さむい!
鼓膜に突き刺さるような、甲高い悲鳴のような声。合わせて、ガラス戸が、ガタガタと鳴り始め、翔子や猫娘は、震えながら耳を押さえていた。
「……猫娘さん……なにこれ、やばいのじゃない! ここに怪しい物は置いてないのでしょ」
「色々と来歴のある物はありますが。その物自体に、霊が宿るとか、不思議な力をもつとか、おとぎ話のような物はないですニャ」」
「でも、何か目的があって来たのでしょ。なにがほしいか聞いてみたら。それを渡して帰ってもらおうよ」
猫娘はうなずくと、戸口に向かって
「なにか、ほしいものがあるのかニャ! 」
すると、急に静かになり
「……顔」
猫娘と翔子はゾクッとした
「か…顔って……そんなものないニャ」
「ないなんて、ことない。あいつ、私の顔を取った」
「顔を取ったって、どういうこと……もしかして、首を」
「そう、あいつが、私の首をとった! 」
扉の外の声は、怒りに満ちた声になる。猫娘は冷静に
「あいつって……だれですニャ」
「そこにいるでしょ! 髪の短い女子高生! 」
翔子は震え上がった
「私が! 」
すると、外の声は女の声ながら、怒声に変わっていく。
「入れろ! このやろう! 入れないか、そこの女子高生! 」
さらに、大きく扉が揺らされ、響いてくる。
猫娘と翔子は抱き合って震えている。
その刹那!
「ギギャーーー! ウギャア! ギエエーーー」
その声は、悲鳴に変わり、しかもそれは、獣を縊るような、おどろおどろしい断末魔に背すじが凍る。さらに、何度も壁や床を叩くような大きな物音がする
しばらくして、声は聞こえなくなり、静かになった。
そこに、扉が突然開いたあと、扉があいた。
「ニ・ニャーーーー!」
「入ってこないでーー!」
猫娘と翔子はだきあって顔を伏せた………が
なにも起こらない。
恐る恐る振り向いて見上げると、扉に立っているのは
「豚男! 」
コンビニ袋を手に下げ、もう片方の手には布のような、何かの塊を掴んでいる。
翔子は闇に立つ豚男の威容な姿に、心臓が止まりそうで震えている。
一方の猫娘は、胸をなでおろし
「……大丈夫、この男は店員。さっき、近くのコンビニに夜食を買いに行ってもらったニャ」
豚男は何ごともない表情で、いつもの無愛想で不機嫌そうな豚面だが、今の猫娘と翔子には救世主か白馬の王子様のように思えて、羨望の眼差しで見つめている。
その豚男が手に持っているのは……首のとれた人形。
豚男は買い物袋をおくと、なぜか、あの翔子のおもちゃ箱の中を、引っ掻き回して、何かを取り出した。
それを人形の首の部分に無造作に突き刺す。
「顔って……人形の……」
翔子はその人形に見覚えがある
「これは、私が小さいころに買ってもらった人形……そういえば、この人形、古臭いし、首をとって壊れたといって、ウソ泣きして、新しいリリカちゃん人形を買ってもらったの」
猫娘はあきれて
「そんなことするからだニャ 」
「だって……そのときは、出たばかりのリカちゃん人形がほしかったし」
翔子は申し訳なさそうに言う。
◇
その後、一息ついた翔子と猫娘は
「さて、この人形、どうするニャ……」
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