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猫と女神の異界骨董市  作者: 猫ノ あずき
第10話 弥生姫の異世界骨董店
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1.猫娘の出張 (挿絵)

挿絵(By みてみん)

アマテラスの商売敵、弥生姫の異世界骨董店のお話です。

弥生やよい姫、異世界骨董店は……やっぱり無理がありますニャ………」


 飾りにしかなっていないクラリネットの埃を丁寧に拭きながら、猫娘は奥のカウンターに座る店長――弥生姫に声をかけた。


 弥生姫は、雪白の肌を露出気味にした派手な着物をだらしなくも、可憐に着こなし。伏し目がちな琥珀色の瞳、波打つ黒髪が肩に流れ、妖艶な気配を漂わせていた。

 ――アマテラスにも劣らぬ麗人だ。


「最近は異世界転移、異世界転生、異世界レストラン、異世界エステ、異世界キャバレー(ちょっと怖い……)などなど、異世界が目白押し。そこで、異世界への販路拡大、時代の流れに乗り遅れないためにも、ここで商売を始めたのだけど……」

 そこで、弥生姫は猫娘を探るような眼で見つめ


「ひょっとして……なつかしの骨董市も、異世界への進出を考えているのじゃないー」

「そっ……それは、知りませんニャ……」

 図星のようで、目をそらして口ごもる猫娘は、この数日、弥生姫の経営する異世界骨董店の手伝いに来ている。


 店員がインフルエンザをこじらして、長期休暇中していることを聞きつけたアマテラスが――商売敵でもある弥生姫の店に、なぜか猫娘を派遣してきたのだ。


 あきらかに下心ありありで、弥生姫に恩を売りつつ、最近出店した異世界骨董店の敵情視察、さらに異世界や並行世界の情報を収集して、営業不振のひもろぎ系列の立て直しを目論んでのことだった。

 一方、用心深い弥生姫もあっさり受け入れた。

 それは、前から目をつけていた猫娘を、ヘッドハンティングしようと企んでのことだった。

 そんな両者の思惑など露知らず、猫娘は今日も真面目に働いている。


「そういえば、アマテラス様が、この店で売ってもらえないかと、品物をいくつか預かっていますニャ。値段は、弥生姫様の好きに決めていいって」

 そう言って、猫娘はみかん箱ほどの木箱を両手で抱えて持ってきた。


「どうせ、異世界での需要があるかを探るためでしょ」

 箱を見下ろしながら、弥生姫は肩をすくめながら。

「最近のアマテラス、いろいろ事業を広げてるけど……大丈夫なの? 正直、そんなに商売の才能があるとは思えないのだけど」


 それには猫娘も同感なようで、心配そうに頷いた。

「最近、儲け話があると、しつこく営業をかけてくるおじさんがいて……」

「ひょっとして、キツネ目じゃない?」

「ええ。ご存じなんですか」

「あいつ、絶対ハラグロよ。人の弱みや、好奇心、欲望に付け込むのが、やたら上手いの」


「そうですか……アマテラス様、営業不振を気にしてましたし……大丈夫かニャー……」

 弥生姫は他人事のように、ふっと笑った。

「気にすることないわ。天下のヒモロギ系列ですもの」

「それもそうです、アマテラス様ほどの神が、早々だまされないですニャ」

  弥生姫は頷いたあと、話題を戻し、


「――とりあえず、箱を見せて」

 弥生姫は面倒くさそうに蓋を開け、中を覗き込む。

 中身は雑貨、おもちゃ、子供用の楽器……。


「……なにこれ」

 眉をひそめ、だるそうな口調で。

「ガラクタじゃない。こんなの置けないわ。私の店には、それなりに由緒ある物しか置かないの。どこの誰が使ったかわからない中古品は――だーめ!」

 取り合う気もなく、そっけなく言い放つと、急に声色を変えた。


「それより猫娘ちゃん、休憩にしましょう。甘いラスクがあるの」

 猫娘も、最初から無理だろうと思っていたので、あっさり引き下がる。


「まあ……確かにそうですニャ。しかたありません」

 箱を奥に片づけ、砂糖たっぷりのラスクに引き寄せらていった。


 二人はテーブルに向かい、薫り高いコーヒーとラスクをつまみながら――

「花柄のスウェットにフレアスカート。カジュアルな猫娘ちゃんも、可愛いわね」

「えへへ……」

 褒められて、猫娘は素直に照れ笑い。


 こうしてお菓子を出し、服を褒め、じわじわと気を引こうとする弥生姫。

 一方、猫娘はふと気になって尋ねた。

「ところで弥生姫は、どこかのお姫様なのですか」

「うーん、本当は姫と言うわけではないのだけど……まあ、神に近いかな」

「へえー。何の神様ですか」


 それには答えず、弥生姫は意味深に微笑む。

「うふふ……それは、この物語の最後に話しましょう」

 もったいぶる態度に、猫娘はむっとして、横を向き、独り言のように呟いた。


「そして、その真実は! と言って、コマーシャルになるTV番組の常套手段。へっぽこ作者が、つまらない話をなんとか最後まで読んでもらおうという姑息な伏線。そういうの、だいたい大した話じゃないニャ」

 聞こえていた弥生姫は、図星のようで青ざめた。

 そのとき。


 ちりん――


 店の扉の鈴が鳴り、客の来店を告げた。

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