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猫と女神の異界骨董市  作者: 猫ノ あずき
第9話 孤高の豚
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5. 豚男の願い

 思いも寄らない豚男の言葉に天女が狼狽する。


「えっ! ええーーーー! 」天女は思わず叫ぶ。

「わっ……わたしに、それを言うかーー! 」

 天成天女は真っ青な表情でうずくまり


「そうだ……無理やりはだめなはず! 」

 と、自分に言い聞かせるが、なぜか直ぐに拒否できない。さらに、天女の心の奥から込み上げるてくるものある。

「結婚したくなければ、効かないはず! 効かないはずでしょー! 」

 自問自答しながらも、次に出る言葉を必死で押えているが、抗えない……。


 最後は観念したように、豚男の前で姿勢をただし正座すると、三つ指をついて

「わかりました。不束者ですが、どうか末永く……」


 豚男も驚いた、ヤケクソの言葉でもあったが、まさか天女が聞き入れるとは。

 最後の茶番に付き合ってくれた天女に、豚はわずかに笑みを浮かべ、命尽きようとしている。

 しかし、それを見た天成天女はあわてて。


「あああ! 豚男! このまま死んだら私はいきなり未亡人じゃない! 死なせるものですか! 」

 天成天女は自分の持てる秘術を駆使して、豚男を蘇生させた。


 その後、魔法の効果は切れたはずなのに、天女と豚男は結婚して幸せに?……暮らした、とのこと。


◇ 高天ケ原、豚男の家


 猫娘と黒ウサが、高天ヶ原のはずれにある豚男の家にやってきた。


 ボロボロの小屋のような家と、その周りには鶏や牛、ヤギなどが放し飼いになっている。

 奥には、自分たちで食べる程度の畑があり、あたりを、数人の子どもが駆けずり回っている。


「ねこ来た! 」

「うさぎも! 」


 すると、奥から大きなお腹の天女が、繕いだらけの割烹着姿で出てくる。


「あら猫ちゃん! いつも、主人の豚男がお世話になっています」

 頭を下げる天女に、猫娘は両手を出して制しながら


「そんなー! 天成天女様が恐れ多い! 」

「何をおっしゃいます。骨董市では豚男の上司、店長様ですから。無愛想で力しか取り柄のない夫を雇っていただいて、豚男共々感謝しています」


「いえいえ、私などアルバイトの雇われ店長、こちらこそお世話になっています……ところで豚男は」


「うちの旦那。今、人間界に出稼ぎに行ってるの。五人目の子供がもうすぐ生まれるので張り切っているようですよ」

 微笑みながら自分の大きなお腹をさすっている。


「そうですか、豚男は天女様が臨月の間は奥さんのための産休と、その後も育児休養をとって、養生してくださいニャ。骨董市は黒ウサに手伝ってもらいますから」


「すみませんね、猫ちゃん、それに黒ウサさん」

「いえいえ」

 黒ウサも頭を下げると、子どもたちと遊んで、豚男の家をあとにした。


 帰り道、黒ウサは

「豚男にはもったいないというか、過ぎた麗人だよな。しかも天成天女と言えば、天界の三大美神の一人。しかも、美しいだけでなく、別次元の天界、創世神界そうせいしんかいの最高神で最強の女神。その気になれば、アマテラス様やゼウス様をも凌駕すると言われているんだぜ」

 腕を頭に組んで話しながら、納得いかない表情で続ける。


「それが、今は冴えない豚男の奥さん。あんなボロ家で、家事に、子育てに、機織りの内職、家で食べる野菜の畑仕事までする貧乏生活。どうして豚男は天女様と結婚できたのだ………謎だ」


 猫娘も首をかしげる。

 どうも、天界の七不思議の一つらしい。


 黒ウサは猫娘を見て。

「本来なら豚男は、天成天女様の創世神界で豪華な生活ができるのにな」

 猫娘は少し頷いたあと。


「まあ、創世神界の方は妹に任せているみたいだし、二人には考えがあるのでしょ。それに天女様、豚男と結婚する前の創生神界で会ったときは、神々しくて近寄り難たかったけど。今は子供達と笑ったり、叱ったり、のびのびして楽しそう。私も、あんな家族をもちたいニャ」


 猫娘が言うと、黒ウサは、少しぎこちない調子で

「猫娘は、そのー……結婚したい相手とか……いるのか」


「いるわけないニャ。そんなことより、早く借金を返さないと」

 即答した猫娘に、黒ウサは嬉しそうに


「そうだな、次の南の島の骨董市。ゼニガメと手伝ってやるよ」

「ああ、たのむニャ」


 振り返ると、天成天女と、その横で子どもたちが手を振っているのが見える。

 それは、豚男が産まれた村で、守りぬこうとしたものと同じ光景なのだろう。


<孤高の豚 了〉


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