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猫と女神の異界骨董市  作者: 猫ノ あずき
第7話 南の島の骨董市 (後編)
27/51

3 猫娘の骨董市場 (挿絵あり)

最近勉強中の生成AIで、末尾に挿絵を載せました。

 尋問を受け、殴られて顔を腫らした猫娘を、村の人々は痛ましげに見つめていました。

 小春おばさんは見ていられなくなり、こっそりと食事を持って牢屋を訪れます。


 しかし猫娘は、殴られたことなど少しも気にしていませんでした。

「このままでは、あの船の出港を……止められない……」


 悔しさを噛み殺すように拳を握りしめ、唇を震わせて続けます。

「お願いです。せめて村の人だけでも……雪風に乗ってほしいニャ」

 涙をこらえきれず訴える猫娘に、小春おばさんは首をかしげました。


「……どうして、雪風なの?」

「…………」

 理由まで言うことはできません。


「お願いニャ……」

 懇願するしかできない猫娘。

 あとは村人の判断……いや運命に委ねるしかなかったのです。


 すると、小春おばさんが、柔らかく口を開きました。

「猫はこの島の守り神。猫神様のお使いのような猫娘ちゃんが、そこまで言うのだし。村の人に話してみましょう」

「おばさん……」


「だいたい、私達はこの島以外に行く宛もないから、どこでも同じだし」

 猫娘は胸が熱くなり、ここが“猫の島”でよかったと、心から思いました。

 腫れた目で無理に笑顔を作り、何度も、何度も、うなずきます。


 その後、島の代表が「呉へ向かいたい」と申し出たことで、村人たちは雪風に乗ることが決まりました。


 出港直前。

 牢屋で横になっている猫娘のもとへ、小春おばさんが最後の食事を持ってきました。


「一緒に行けなくて……ごめんね」

 そう言って、懐から大切そうにレンゲを取り出します。

「これは、大事にするから」


 猫娘は努めて明るく笑い、

「あまり私と一緒にいると、小春おばさんも疑われるニャ。早く行くニャ」

 小春おばさんは何も言えず、俯いたまま牢屋を後にしました。


 牢屋の小さな窓から、雪風が静かに出港していくのを見届けてから、猫娘は食事に手を伸ばします。

 ――かちり。

 おにぎりの中に、硬いものが入っていました。

「……鍵……」

 小春おばさんは、そっと牢屋の鍵を忍ばせてくれていたのです。

 駐在所の人間も、見て見ぬふりをしてくれたのでしょう。


 猫娘は鍵を強く握りしめ、音を立てぬよう牢屋を抜け出しました。

 けれど今の猫娘には、高天ケ原へ戻る力はありません。

 本州の高千穂峰へ行かなければ帰れないのに、海を渡る霊力が尽きていたのです。


 島の猫たちと山に隠れようと、猫神社へ向かう途中――

 海を見渡せる高台から、水平線に雪風の小さな船影が見えました。


「これで……村人は助かる……」

 けれど、胸が締めつけられます。

「でも、輸送船の人たちは……」


 もっと何かできなかったのか……

 神に近い存在で、未来が見えるがゆえに、救えなかった命の重さが、なおさら胸にのしかかります。

「それに、今回のことはアマテラス様には内緒にしておかなくては……」


「なにを、内緒かなーーー」

 背後から、聞き覚えのある、のんびりとした声。


「――っ!」

 ここには、誰もいないはず。

 恐る恐る振り返ると、そこに立っていたのは――


「ア、アマテラス様……!」

 艶やかな羽衣をまとったアマテラスが、含みのある微笑みを浮かべていました。


「あの……その……」

 猫娘は言葉に詰まりますが、アマテラスは気にも留めず、海の方を見つめます。

 そして、どこか悲しげに、独り言のように語り始めました。


「私は、その気になれば、この悲惨な戦争を止めることができたかもしれません。私は、それだけの神力を持っています」

「……」

「でもね、力で世の趨勢を変えるのは、力の行使である戦争と同じだと思ったのです………」


 自分にも責任があるような言い方をするアマテラスは、やりきれない、といった表情で


「身銭を切ってお賽銭を捧げ、願い、努力して、ささやかな希望を掴もうとする」

「……」


「私たち神の役目は、救いを求める人に、そっと手を差しのべることなのです」

 最後はうつむいて、自分自身に諭すように語るアマテラスに、猫娘は一歩前に出て。


「救済は神の専売特許ではありません。人間にだって出来ますニャ! 」

 アマテラスは驚いたように顔を上げ、ふっと微笑みました。


「ごめんなさい、つい愚痴を言ってしまいました……さあ、帰りますよ。もうすぐここも戦場になります。優秀で可愛い従業員を死なせるわけにいきません」


「はいニャ……できれば、野良猫も」

 アマテラスは、やさしく頷きました。


 そのとき、猫娘はふと思います。

(島の人が脱出する、タイミングで。しかも、こんな小さな離島に、かの雪風が寄港するなど、偶然にしては出来すぎている。まさか……)


 猫娘はアマテラスを見上げますが、アマテラスは島の方を向いて。

「ここは美しい島ね、砂浜もきれいだし。戦争が終わったら、みんなで海水浴に来ましょう」


 猫娘は笑顔になり

「ぜひ、来てくださいニャ! 」

 

◇村人の想い

 雪風は無事に呉へ到着しました。

 一方、輸送船は――猫娘の予知どおり撃沈され、多くの犠牲者を出しました。

 その話を聞いた村人たちは、亡くなった人々を悼むと同時に、猫娘のことを思い、深く感謝しました。


 終戦後、島は壊滅状態でしたが、小春おばさんをはじめ、少しずつ人が戻り、復興が進められました。

 村を救った猫娘は、猫神様のお使いに違いない。


 そう信じて島中を探しましたが、猫娘だけでなく野良猫達も、ついに見つかりませんでした。


 酷い仕打ちをしたせいで、もう戻らないのか。

 それとも、命を落としたのか。

 猫娘を島に置き去りにしたことを、村人たちはとても悔やみました。


 数年後。

 島の暮らしがようやく落ち着いたころ――

 村人たちは、猫娘を偲び、露店を開いていた道端に、小さな石碑を建てました。


『猫娘の骨董市場』


 その場所には、建物も店も出さないと決めました。

 ――その翌日。


 石碑の前に、大きな籠を背負った少女が、周りに沢山の猫をつれて立っています。

 すぐに、村人達が集まってきました。


「ここで、骨董市をひらいてもいいですかニャ」


 笑顔の猫娘と野良猫達を、村人たちは大歓迎したのでした。


 <南の島の骨董市ー了ー>


挿絵(By みてみん)


気になるなと思ってただければ、ブックマーク、お星さま(☆)をくださいニャ! 

よろしくお願いしますニャ!

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