2.橋の下
◇
少女は、よく猫に話しかけました。
「猫ちゃんは、何考えてるのかな。お話できたらいいのにね。そうだ、ゴミ箱で鈴を拾ったんだ、つけてあげる。こうすれば、猫ちゃんがどこにいるかすぐわかる」
少女は猫の首に鈴をつけてやると、猫はうれしくて、わざと鈴を鳴らすように少女の回りを駆け回ります。
猫は話ができるのですが、話はしませんでした。
それは死んだ母猫から、絶対に人間と話をしてはいけないと、きつく言われていたのです。
話のできる猫は、いわば化猫。見つかったら、気味悪がられて殺されるか、捕まって見世物にされると、言われていたからでした。
そんな猫は、ひもじくても、優しい少女との生活は楽しいものでした。でも、少女の方は大変で、住んでいた小屋が取り壊され。行くあてのない少女は、小さな橋の下の隙間を見つけました。
「今日からここが私達の、お家だよ。狭い場所でごめんね」
苦笑いする少女ですが、猫は一緒にいられるだけで満足でした。
でも、別れは突然やってきました。
その日は初雪の舞う、寒い日でした。
少女は数日前から熱をだして、寝込んでいます。寝ていたといっても、拾ったボロボロの毛布にくるまっているだけで、毛布一枚だけでは寒さをしのげません。
少女は衰弱し、立つこともできない状態です。
少女は猫を抱いて震えています。
「猫ちゃん……どこにも行かないでね」
猫は心の中でうなずきますが、少女の震えは尋常ではありません。
(だめだ! このままではこの子は死ぬニャ!)
猫はどうすることもできません。人間に助けてもらうしかありませんが、人目のつかない橋の下なので、だれも気付きません。
(こうなったら、人間に話かけてみるニャ。人間は動物と違ってやさしいニャ)
猫は、母親の言いつけに背くのですが、意を決して、橋の上を通る人を待ちました。でも、その日に限って誰も通りません。
猫が戻ってくると
「鈴がきこえない…猫ちゃん。どこに行ってたの。お願い、そばにいて」
「大丈夫、どこにも行かないニャ」
思わず喋ってしまいました。
「誰、猫ちゃんが話したの……そんなわけ……ないよね」
どうやら、目も見えないようです。
猫は少女の耳元で
「必ず、戻ってくるから」
一瞬、驚いたようですが、そのあと少女は頷いたように見えました。
鈴の音が少女から遠ざかリます。
◇
猫は、町にでました。
町の通りには、笑顔で歩く人が大勢います。猫は、おろおろしながら、上を向いて声を掛けました。
「私の、友達が死にそうなのですニャ」
道行く人は足元から聞こえる声に、一瞬、びくりとしますが、まさか猫が話しているとは思わず、空耳と思って通り過ぎていきます。
歩いている人には声が届きそうにないので、廃屋の前で、火を焚いて数人で座っている、男たちのところに行きました。
たばこをふかし、昼間から酒を飲んでいる人相の悪い大人に声をかけるのは怖かったのですが(この人達も、あの娘と同じ貧乏だから、きっと優しいニャ)そう、自分に言い聞かせ、勇気をだして声を掛けました。
ただ、事態は猫の予想とは違ってしまいます。
「おい! この猫、話をするぜ」
男たちに囲まれ、猫は怯えますが、ひるまず。
「友達が、死にそうなのです。助けてください」
懇願しましたが、急に首の後ろを掴まれ、宙づりにされました
「おい! これ化け猫だぜ。これは、売り物になるぜ」
「そんなもん、だれも買わないぜ、気味悪い! 殺してしまえ! 」
猫は手足をバタつかてわめきます。
「たのむニャ! 助けて! 」
猫の話はだれも聞きません。それどころか、殺されそうになっています。母猫の言う通りだったと、自分の失策に後悔しました。
「どうして、話を聞いてくれないニャ。私が猫だから……」
すると、奥から他のごろつきと同じようなツギハギの服を気着た、キツネ目の人相の悪い男がでてきました。猫をしばし、睨んだあと。
「友達って言ってるが、その友達もどうせ猫だろ。そういえば、山手の屋敷の変人伯爵婦人なら高値で買ってくれるそうだぜ」
キツネ目の男は他の男たちに、儲けは山分けにすると話をつけて、無理やり猫を箱に入れ、どこかへ連れて行きます。
「出して、早く帰らないと! あの娘が死んじゃう! 」
猫は涙声で訴えますが、出してもらえません。
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