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猫と女神の異界骨董市  作者: 猫ノ あずき
第5話 化猫の涙
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1.野良猫と少女

とある猫の話をします。

 

 時代はさかのぼり、明治の終わりから大正の初め頃

 その猫は人間の言葉を話せるという特殊な能力を持っていました。それは、オウムのように発音をまねるだけでなく、言葉の意味を理解できる知識を持った猫なのです。


「ああー、腹減ったニャ」


 路地裏を歩いている猫は、この三日何も食べていません。たまたまゴミ箱をあさると、食べ残しの弁当が出てきました。

「久しぶりの御馳走だニャ! 」


 猫は喜びましたが、そこに突然、野良犬が襲いかかり、猫は叩かれて放り出されてしまいました。のら犬は猫の見つけた残飯を、おいしそうに食いあさります。猫は痛みをこらえ、唾をのみこんで見ているしかありません。


 猫は絵にかいたような不幸な猫でした。

 ゴミ捨て場で生まれた猫は、すぐに母猫が死に、のら猫の集団に入りましたが、いじめられ、虐待されました。動物の世界では、親のいない子供は、ほとんど生きていけません。


 路地裏でうずくまる猫

 猫は思いました……

(自分の子供ではなくても守ってくれる、人間の世界はいいな。でも、人間は……)

 そこに、一人の少女が現れました。


「猫はいいな」


 少女は、うずくまる小さな猫に近寄ってきますが、猫は

「シャー! 」

 警戒心むき出しで、少女を威嚇します。猫は母猫から、人間は怖い生き物だと教えられていたのです。


 少女は猫に

「そんなに痩せて。何も食べていないのでしょ」

 そう言うと、煮干しを猫の前に置いてやりました。

 猫は逃げようかとも思いましたが、置かれた煮干しにあらがえません。

 警戒しながら、むしゃぶりつきました。


「大丈夫だよ。何もしなから心配しないで」

 人間の言葉がわかる猫は、食べ物をくれたこともあり、とりあえず警戒心を解くと、疲れて再びうずくまります。

 そんな猫を少女はそっと抱きかかえます。少女の腕に抱かれた猫は


(あたたかい、やっぱり人間は、やさしいニャ)


 生まれて初めて、優しさに触れた猫でした。その日から、猫は少女について行きます。

(でも、この子はどうして「猫がいいな」なんて、言うのだろう)

 それは、すぐに分かりました。

 

 少女も猫と同じだったのです。


 少女は親に捨てられ、物乞いをして生きていました。

 ゴミ箱で拾った空の容器と木の棒でリズムをとり、上手くはありませんが唄を歌い、たまにお金を恵んでくれる人がいます。


さらに、停まっている馬車の窓を強引に拭きに行くと、「シッシッ! 」と犬を追い払うように拒否られますが、たまに小銭をもらうことができました。


 こうして、朝から夜まで、道端で物乞いのようなことをして、くたくたになっても、収入のない日も少なくない……というか、収入のない日の方が多いのです。


 少女は、そのわずかの施しから、猫に餌を買ってやり、空腹でおなかを鳴らしながらも、猫が食べる姿をうれしそうに見ていました。


 猫は、少女が貧乏だということがわかるので、そんな少女から餌をもらうことがとても辛かったのですが、目の前に餌を置かれると、ひどい空腹には耐えられず、食べずにはいられません。


 そんな自分の卑しさに胸が切り裂かれる思いで、少女のくれた、わずかな餌を涙ながらに食べたのでした。


(なんとか、少女の力になれないかニャ。猫の恩返しが、できないかニャ)

 猫は考えましたが、早々思いつくものではありません。

気になるなと思ってただければ、ブックマーク、お星さま(☆)をくださいませ! 

よろしくお願いします!


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