男性保護員会、襲来する
16歳になった日、それは突然やってきた。
今日は、三人で婚約届を提出に、市役所に行くのだ。何回も確認した。
珍しく、スーツを着た男の大人達が学校にやってきた。
ダダダダダダダ!
谷先生が案内している。
「男性保護委員会である!上杉健士!男性権を喪失する!」
「学費、保護費の停止!成年してからの選挙権停止!」
「理由は、女に迎合し、男性の品性を著しく落とした。証拠は、このSNSの書き込みだ!」
何か、両脇を抱えられて、文章を読み上げられた。
「よって、就職を命じる!!猶予期間はない!」
「はい、分かりました」
と、ブン!と両腕を抜いた。
こいつら、力は弱い。
「何故、拘束を外す!」
「だって、今から、就職活動をしなければならないのでしょう?両手塞がれたら履歴書を書けませんよ」
「・・はあ?一日8時間働くのだぞ!」
「女と同じで、労働に従事する屈辱を味わうのだぞ!」
「苦労知らずめ」
お前ら、何言っている。前世では当たり前だったぞ。
馬鹿なのか?質問をしてみよう。
「あの、貴方たちも働いていますね」
ゴホン!と谷先生が説明してくれた。
保護委員会は一日4時間労働。
先生も授業のコマしか働いていないそうだ。
騒ぎを聞きつけ。校長先生がやってきた。
「では、ここからは、私の職務です。布告は、今日の深夜、明日の0時からですよね。今日まで生徒ですわ」
校長先生が、入ってくれた。やはり、校長先生は女性だ。白髪交じりで、スーツを着ている。
「さあ、すぐに、校長室に、矢田さんと田川さんも呼びなさい」
「はい」
ブブ~と、放送で呼ぶ。
女子生徒達は、遠巻きに見ている。皆、男性保護委員会を恐れているそうだ。
☆校長室
「・・・ということになりました。貴方たちの意思は?」
「上杉君を守ります!」
「気持ち・・・変わらない・・よ」
「正直、状況は厳しいです。不服申し立ては出来ますが、まず。通らないでしょう」
「で、上杉さん。これは、貴方のことです。貴方は、一日8時間労働をしなければならないのですよ」
「ええ、望むところです」
「はい?」
何でも、この処置が施されたら、男子は腰を抜かして、許しを請うほどの厳しい処置らしい。
もしかして、地下労働所か?と思ったが、普通の企業で良いらしい。
もし、就職をしなかったら、明日から、違法状態。刑務所に行かなければならないらしい。それも、女性刑務所。地獄らしい。男性は、すぐに干からびる。
いわゆる。処刑宣告と同じだ。
「すでに、ネットで流しておきました。ハゲタカのように、沢山の企業から、メールが来ています」
「見せて下さい」
「・・・上杉君は、まるで、古の男のようですね。馬鹿爆弾が、世界中に落ち。男性ホルモンが破壊される前の男性・・・昔は、男性も兵士として、戦ったそうです」
「だから、好き。お金じゃない・・」
「うん。お金重要・・だけど、それが全てじゃない・・よ」
就職の案内メールを見た。
え、外資系、お茶くみ係、容姿端麗な男性を募集、年収2000万円・・・
自信ない方、面接で応相談。
怪しいな。ってか、容姿に自信ないし。
1番最低の金額を提示した。年収600万円の会社に決めた。
それでも、中卒では破格だ。
地元の町工場だ。安子先輩は、東京レディースだから、近いだろし、転勤がないのも助かる。
「これに決めました。連絡をして下さい」
「そう、ここで、いいのね。ここは、女性と話す地獄のような職場だけど・・物怖じしないのね」
前世のスカイプみたいなビデオ通話で、面接を受けた。
「ヒィ、本当に、男性様が希望しているわ」
「職場は、お客様相談室勤務になります・・」
「いえ、現場希望です・・」
「しかし・・・」
何でも、女性の苦情受け付けには、男性が効果あるらしい。
「いいですか?正当な苦情もございますが、クレーマーもあります。その見極めが難しいので、最初、研修をしてもらいます。
男様は、論理的な会話が出来ませんから、要注意です。そのような電話は、他の職員に代わってもらっても大丈夫です。しかし、滅多にないのでご安心下さい」
「男性の電話は少ないのですか?」
「この会社は、自動車部品の製造ですから、滅多にありません」
「なるほど・・」
この世界の男は、車に乗らせてもらう方なんだ。
面接を終えて、即、メールで採用通知を送ってもらい。プリントアウトをして、男性保護委員会に提出した。
男どもは驚く。
「何だと、ガセではないだろうな」
「確認取るぞ!」
「いいですよ」
生徒達も、
「おい、馬鹿だな。8時間働くんだ」
「いや、どうせ、すぐにやめるよ」
「そう、そう、専業主夫になれないんだぜ。馬鹿だな」
この日、先生達に礼を言って、退学をした。
「勉強は、私・・見る・・よ。健士」
「私、頑張って、一軍に定着するよ!」
「はい、安子、瑞穂、これからもよろしくお願いします」
いつの間にかに、呼び捨てになった。
この後、市役所に行き。婚姻届を提出し。
夜はいわずもがなだ。
・・・・・
・・・私、校長、佐々木静香は、今日の出来事を、長年の友人に電話で報告をした。内閣総理大臣だ。
大学の同期である。
「・・・・ええ、その報告は来ました。全く、首相なのに、男性保護委員会に勧告しか出せません」
「冨士子、あの子、スポーツテストもずば抜けています・・・もしかして」
「ええ、待ち望んでいたピースです。どのような場合にも、例外はあります。上杉君が男性の例外です。次の法案の鍵になります・・」
事態は、上杉君の知らない内に進む。
上杉君の出現が、もう、20年、早ければと悔やんでも仕方ない。
この国と取り巻く世界は、男性を優遇する余裕がないほど、追い込まれている。




