男の敵は、男って、誰かが言った
男子寮は、女子禁制なんてことはない。むしろ、奨励されている気配がする。一室で、風呂、キッチンとそろっている。ベットだけはダブルだ。
今日は、二人の進路が決まったので、お祝いをする。俺が手料理を振る舞うのだ。
スーパーで買い出しをした。普段は、出前か。コンビニ弁当だ。
と言っても、前世もあまり料理はしなかった。
「カレーでいいですか?」
「もちろんだよ」
「はあ、はあ、男性様の手料理・・・・だ・・よ」
スーパーは女性ばかりだ。皆、奇異な目で見る。
瑞穂先輩から教えてもらった。
男性様が作ったカレーが、1万円で提供されたことがあったそうだ。
レトルトだ。
この感覚は分からないな。
寮に戻ると。
「あれ、鍵が入らない。鍵穴に・・・接着剤!」
クスッと声が聞こえた。人の気配もある。見られているな。
「男性様って、体力はないけど、陰湿だよ・・・」
この世界は、残酷だ。安子、瑞穂の両先輩は、精子バンクで提供された種で生まれた。父親は知らない。
母親はまるで、ガチャの外れのように、施設に預けた。
生活費は、現物支給だ。こんな子が多くいると聞く。
俺は、早くに母親が亡くなり。国の施設に預けられた。
しかし、中学から、登校拒否になり。引きこもりになったのだ。
「とりあえず。女子寮で作りますか?」
「女子寮は、危険だよ。男が来たら、レイプされるよ」
「皆・・・抑えが効かない・・よ」
管理人さんに言うが、やはり、男のやることに文句は言えないらしい。
「ごめんなさいね」
「上杉君、アパートを借りなよ。お金なら、契約金を担保に借りられるよ」
「私、少し、バイトの金・・・ある・・よ」
「大丈夫だよ。俺、男性保護費の貯金、少しあるよ。安いところを借りたら、十分暮らしていける」
「違う。高いところにしなさい」
「そうだ・・よ。セキュリティが大事・・だよ」
具材は、先輩達に引き取ってもらい。
その日から、ホテルに住み。
セキュリティのしっかりしたアパートを探した。
11万円では生活が苦しい。
家賃10万円以上だ。
2階建てで、棟が独立したアパートタイプのものを借りることが出来た。
男性優遇だ。
住宅費は政府の保護下、いや監視下から離れるから、支給されない。
「じゃあ、俺もバイトする」
テレビで見た。男性が売り子をしているケーキ屋さんに女性が長蛇の列を作っていた。時給も2000円以上だ。
「ダメ」
「ダメ・・だ・・よ。勉強をす・・る」
「上杉君は、大学に行って、そこで何かを見つけるの」
「そう・・・だよ。共学の大学・・心配だけど・・」
お金は何とかしてくれるらしい。
「私は、上杉君に、家にいろとか言わないよ」
「推薦決まったから・・バイト・・もっと・・出来る」
「安子先輩、瑞穂先輩・・・」
「三人で助け合う。16歳まで、もうすぐだよ」
三人で抱き合った。
俺が結婚出来る年齢になったら、20万円支給される。
後、もう少しだ。
何だか。愛とお金の問題が、一緒くたになった感じだが、確かに絆が生まれたのを実感した。
学校では、教科書は常に持ち歩きだ。
移動教室でも、鞄に入れて、持ち歩く。
トイレに行くのも油断でいない。
なるべく水分は取らない。
「せんせーい。上杉の奴、鞄を持ち歩いている」
「・・・なら、貴方も、教科書を持ち歩きなさい」
「「「ひいき!ひいき!」」」
あれ、いつも、及び腰な先生が、守ってくれるようになった。
しかし、机に落書きをされるようになった。鷺先輩、辺りだろう。
ブスのくせに生意気だ。
とか、
SNSでも、〇〇高校の上杉健士、性売買を行っている。連絡番号・・・
とか、正直キツい。
あ、SNSだ。何故、気がつかなかったのだろう。
俺と、同じ、考えの奴いるかも、と。
男女共働きをしたい。とか、男女支え合うべきだ。そんな程度の書き込みをした。
が、
>男が社会に出たら、性搾取される
>来たー名誉女!
>悲報、女のナリスマシ現る
とか、アンチコメが返って来た。
一方、先輩たちは、年収1000万は超えるということで、男子から優良物件扱いをされるようになった。
「安子せんぱ~い。年下が好みっしょ。俺と結婚するべ。上杉よりも、イケメンしょ。汗臭いのも我慢してあげるっしょ!」
「瑞穂先輩~、俺、セックスしてあげますよ。だから、結婚しましょう」
この世界、特有の下劣な上から目線の言い回しだが、
「断ります!」
「いらない・・よ」
・・・即答してくれる。正直、嬉しい。
後、16歳まで、数ヶ月だ。それさえ我慢すればと思う自分がいた。
しかし、この後、男性の敵は男性だと思い知らされることになる。