僕と君の恋(2)
「ねえ、悠くん。今日は一緒に帰ろ?」放課後。教室を出るなり、いきなり声をかけられた。
「えっと……ごめん。ちょっと用事があって……」「……そっかぁ。残念だなあ。せっかく一緒になれると思ったのに」彼女は心底落ち込んだ様子を見せている。……なんだか悪いことをしてしまった気分だよ。
だけど、こうするしかないんだ。許してくれ。「……それじゃ」「あっ、待って!」……え?「その……どうしても行かなきゃいけないの?」「え……?」……どういう意味だろう?「もし良かったら……今日だけは私の側に居てほしいなって思って」……なるほど。
そういうことだったのか。確かに、彼女の言いたいこともわかる。でも、それはできない。
だって、今の僕は――。「……ありがとう。心配してくれるのは嬉しいけど、大丈夫だから」――彼女のことが嫌いだから。
それから数時間後。僕は、家に帰るために駅へ向かっていた。しかし、そこにはいつもの姿は無かった。……おかしいな。普段はこの辺りで見かけるんだけど。
もしかして、何かあったんじゃないだろうか。「……電話してみようかな」ポケットからスマホを取り出し、画面を見る。すると、そこには見覚えのある名前が映し出されていた。
「……もしもし」「悠くん?」「うん。どうかした?」「あのね……悠くんに会いたいの。今すぐに会いに行きたいの。だから、お願い……」……まさか、僕の家に行こうとしているんだろうか。
「ごめん。これから用事があるんだ」「嘘つき「え?」
「悠くん、用事があるって言ってたよね。私、知ってるよ。本当は何も無かったんでしょ?」「そ、そんなことは……」「ねぇ、悠くん。どうして黙ってるの?なんで否定しないの?……ねぇ、教えてよ。
悠くんは、私のことどう思っているの?」……どうしてそこまで聞くんだろう。それに、僕が君のことをどう思っているのかなんて決まっているじゃないか。
「……好き」「えっ……」「好きだよ」「そっかぁ……。私と同じだね」「うん」「でもね、違うところもあるんだ」「そうなの?」「だって私、あなたのこと――大嫌いだから」……あれ?ここはどこだろう。
確か僕は電車に乗っていて、それから――ダメだ。そこから先の記憶が無い。でも、この状況を見ると何が起きたのか大体は想像がつく。
恐らく、どこかで眠ってしまったんだろう。それも、かなり深い眠りについてしまったようだ。
うーん。どうしようかな。とりあえず起き上がることにしよう。よいしょっと。うん、やっぱりそうだ。僕はベンチに座っているみたいだ。
さっきまで座っていたはずの椅子は見当たらない。ということは、誰かに運ばれたということになる。
でも、一体誰が。「……あ、起きたんだね」……誰の声だ?ああ、そうか。思い出してきたぞ。
ここは――駅のホームだ。そして、目の前にいるのは僕の幼馴染みの篠宮楓乃である。
そう。僕は今、彼女と二人きりになっているのだ。
「おはよう、悠くん」「お、おはよう……」……どうしよう。全く状況が掴めないぞ。
なぜ彼女がここにいるのかという理由はもちろん、いつの間にこの場所に来たのかということさえわからない。
「あの、楓乃さん。これはいったいどういう……」「ふふっ、わかってるくせに」……いや、全然わかりません。……いや、待てよ。
よく考えてみたら、楓乃の言う通りかもしれない。だって、ここには僕と彼女しかいないんだから。
つまり、犯人は一人しか考えられないじゃないか!「もしかして楓乃……君が僕をここまで運んでくれたのかい?」「正解♪」……マジですか。
いや、でもいくらなんでもそれは無理があるような気がするんですけども!だって相手は女の子なんだよ?しかも僕より力も弱いわけだし!
「いや、でもどうやって運んだんだ?僕よりも体重あると思うし、そもそも一人で運べるはずがないっていうか……」「え?もちろん、私が抱きかかえて連れてきたんだよ?」……なにぃ!? こ、、この子、さらっと凄いことを言ったぞ!
「……それ本当なの?」「もちろんだよ」……いやいや!絶対無理だから! 仮にできたとしても、普通はしないから!
「そ、それより!なんでこんなことをしたんだよ!?」
「こんなことってどんなことかな?私はただ、あなたと一緒にいたかっただけなのに」「だ、だからってこんな方法はおかしいよ!」
「でも、実際にこうやって一緒にいることには変わりないじゃない」……確かにそうだけど!……いやいや!そういう問題じゃないから!「でも、悠くんの寝顔は可愛かったよ」「え、そうなの?」「うん。写真撮っちゃったくらい」「……消してください」「嫌です」……まあ、予想はしていたけど。
「……はあ。わかったよ」「ふふっ、ありがとう」……結局こうなるのか。もう諦めよう。
「それで、他に聞きたいことはないの?」「え?」「ほら、何か質問してみてよ」「えぇ……」……う~ん。特に思いつかないんだけど。
「何でもいいよ?」「じゃあ、どうして僕なんかと一緒にいたの?」「えっ?そんなの決まってるじゃない」……なんだ? 急に雰囲気が変わったような――。
「悠くんのことが好きになったからだよ」「す、好き……?」「うん。大好き」……嘘だろ?まさかとは思っていたけど、本当に告白されるなんて……。
「……ごめんなさい」「謝らないで。私こそ困らせちゃって、ごめんね」「そんなことないよ。むしろ嬉しいというか……」「……ほんとう?」「うん」
「そっかぁ……。良かったぁ……」……なんだか様子がおかしい。まるで別人みたいだ。
「ねえ、悠くん」「なに?」「これからは、ずっと一緒だよね?」「へ?」「だから、これからは私と二人で仲良く暮らしていくんだよね?」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何を言って……」「私ね、決めたの。悠くんと結婚するって」「け、結婚!?」
「そうだよ。私達夫婦になるんだもん。当然でしょ?」「そ、そうかもしれないけど……」「それとも、私と結婚したくないの?」「そ、そんなこと……」「だったら何も問題は無いよね?」「……はい」こうして、僕達は結婚した。
それから数年後。僕と楓乃の間には子供が生まれた。名前は『篠宮 澪』。とても元気の良い女の子である。今日も彼女は楽しそうだ。いつも笑顔を絶やさないところが彼女の良いところだと思う。僕も彼女に負けないように頑張らなくてはいけないな。
あれ?楓乃がいないぞ。どこに行ったんだろう? すると、玄関の方で声が聞こえた。どうやら帰ってきたようだ。「おかえり、楓乃」「ただいま、あなた」僕達の幸せな生活はこれからも続いていくだろう。だって、僕には楓乃がいるんだから。
えっと。とりあえず、これで終わりになります。最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。もし宜しければ、感想を聞かせていただけると幸いです。ではまた別の作品で会いましょう。