第一話 妹よ、今会いにいくからね。ぐへへ......。
「お兄様、朝ですよ」
空気をも溶かす甘い声に、脳がとろける。
「アイナ......」
背中が痛くなるほど硬いベットの上で目が覚める。辺りには鼻が曲がる様な刺激臭が漂っていた。
身体を起き上がらせ辺りを見渡すが、妹のアイナの姿は無い。見えるのは石造りの壁にカビだらけの薄暗い監房だけ。
「幻聴て......」
ここに連れられて来てどれだけの時間が経っただろうか。12日目までは壁に石で傷をつけて数えられていたが、怪しまれて看守に石を全て没収されてしまった。
アイナは大丈夫だろうか......。
「魔法さえ使えればなー」
地下深くにあるこの檻房には魔力のもととなる魔素が少ない。簡単な魔法であれば使えるだろうが、使ったところでここから出る為には不十分だろう。
そもそも俺何も悪いことしてないのに、なんでこんな臭くて暗くて飯も不味いとこに居なくちゃならんのだ。
異世界転生したはいいけど、なんか前世の記憶ないし、せっかく出来た妹とは離ればなれになるし。
俺は妹とゆったり異世界ライフを送りたかっただけなのに......。
「なんかイライラすんなぁ」
「おい!囚人番号S0017!」
勢いのある声がした鉄格子の方を見ると、そこには体格のいい男看守が腕を組み仁王立ちしていた。
「出てこい!面会人が来てるぞ!」
男が鉄格子の扉の鍵を開ける。
面会人、アイナ以外に面会に来る奴いないぞ。あいつ、あんなに来るなって言ったのに。そんなに寂しかったのかなぁ?ぐへへへ......。
看守に連れられ、面会室に向かう。途中、何人もの看守達の前を通り過ぎる。
警備厳重すぎるだろ。俺だけにこんな警備て。誤認やのに。
「こっちだ」
看守が地上に続く階段へ向かう。その階段は螺旋状になっていて、人が一人ずつ通れるほどの幅だった。
あれ?地上行ったら俺魔法使えちゃうけど?
「言っておくが、今のお前は魔法は使えないぞ。」
男の声から勢いが消える。
本当だ。身体から魔力が一切感じない。
対象から魔力を消す、あるいは吸収する魔法。人間にできる事じゃない。魔力と一番親密な関係にある魔族にしか出来ない。
「よく聞いてくれ。今からお前をここから逃す。だから俺たちの仲間になってくれ。拒否権は無い」
「は?面会は?」
「それは嘘だ」
「お前......お前ふざけんなよ!俺は久しぶりに愛しの妹に会えると思ったのに!」
「静かにしろ!看守に聞こえるだろ」
「できるかあぁ!お前!人の心弄んでおいて俺の仲間になれだぁ?ざけんじゃ」
急に声が出なくなった。おそらく俺に口封じの魔法でもかけたのだろう。
「おい!こっちから声がするぞ」
大勢の看守が轟音を鳴らし、階段を登ってきた。
「ったく!早く登るぞ!」
男と一緒に駆け足で階段を登る。
「この調子じゃ上から挟まれる!どうしてくれるんだ!」
「んーーーーー!んぅんぅーーーー!」
「なんだって!?」
男が口封じの魔法を解く。
「早く俺の魔法使えるようにしろ!そしたら簡単に逃げれる!」
「本当だろうなぁ!」
男が指を鳴らす。
「よし!魔力を感じる!」
「水!」
右の手のひらを壁に打つ。壁から大きな青色に輝く魔法陣が現れる。
魔法陣から大量の水が流れ出す。追いかけてきた看守達が水に押し流される。
「錬金魔法か!?」
「ちょっと違うけどそんな感じ!」
「ワープ!」
また右の手のひらを壁に打つ。今度は白色に輝く魔法陣が現れる。
「この中に入れ!地上に出れるはず!」
「どこに繋がっているんだ?」
「知らん!でも上からも大勢来てるんだろ!行くしかない!」
魔法陣の中に飛び込む。男も続いて魔法陣の中に飛び込んだ。
元々書いていた「ツンデレ腐れ天使は素直になれない」が第二話にして行き詰まっているので息抜きに別作品を書く事にしました。_:(´ཀ`」 ∠):
なろうなので一応異世界転生ものにしました。_φ(・_・
初めて異世界転生ものを書くので何か掟破り(?)の様な描写がありましたら教えて頂けると嬉しいです(`・ω・´)