9話 リックス視点(1)
「どうしてこう受注ミスが続いているんだ?」
エデリー商会の事務所で、リックスが従業員に質問を投げかけた。
ここ最近、ポーションの注文量にたいしてポーションが足りなかったり、他商会に買い取られていて原料が確保できなかったり、注文数の見込み違いによる損失が発生している。
前はこんな事なかったのに、シルヴィアを追い出した途端、損失が発生していたらリックスが無能の烙印を押されてしまう。
「そ、その……前はシルヴィア様が受注量を見積もって生産量や原料の確保などしていましたが今はそれが出来る人がいません」
「そんなの前年比を見ればすぐわかるんじゃないのかい?」
「前年比と同じにした結果がいまでして」
「じゃあシルヴィアはどうやっていたんだい?」
「それが、いつも部屋にこもって一人でやっていたので我々はよくわかりません」
事務員が汗をかきながらリックスに説明する。
失敗した。リックスの母がシルヴィアは生意気だからなるべく一人で作業させたほうがいいというのを素直に聞いてしまったがために、後継が育っていなかった事に気づく。
事務仕事ならリックスの劣等感を刺激するような事はないだろうと任せていたのに、やはりシルヴィアは己の才能を見せびらかすように辞めた後ですら、リックスの前に立ちふさがる。
けれど彼女の事務能力が馬鹿にできなかったのも確かだ。
このままだとポーションの原料になる材料が足りない。
取引先に仕入れを頼んだら、もう遅い、他の商会に大量に売った。そしてその商会と専属契約したのでもう売れないといわれてしまったのだ。慌てて似たような商品を他国から仕入れたが、このような不手際が続いてしまったらポーションが作れなくなってしまう。
「こんな事なら首にしないでそのままおいておけばよかった」
母が長期旅行中にシルヴィアと離婚し、サニアとの結婚を強硬したが、失敗だったかもしれない。
リックスはため息をついた。