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閑話:幼少期の出会い

「商人の息子如きが。暗殺者ギルドを相手に勝てると本気で思っているのか?」


 暗殺者ギルドの頭領が、ダガーを構えて吠えると、まだ少年といっても差し支えない年齢のシルクハットにコート姿の男児がにっこり微笑んだ。


 暗殺者ギルドの本拠地で、仕事をミスしたギルド員の少年を集団でなぶり殺しにしようとしたその瞬間、その少年は現れた。

 暗殺者ギルド員の少年が誘拐しそこねた商人の息子。それが事もあろうに本拠地に乗り込んできたのだ。


「な、なんでお前、こんなところにきたんだっ!!」


 殴られて全身傷だらけの暗殺者ギルドの少年が目を見開いて叫んだ。

 銀髪の少年で、この商人の子供を誘拐しろと命じられ商家に従者として潜りこんだが、結局実行できずにぐずぐずしている間に、いいつけられた期限をすぎてしまった。そのためギルドの掟でなぶり殺しにされそうになっていたのだ。


「決まっているじゃないか。まだ彼には僕が出した分の給金分働いてもらっていないから、連れ戻しにきたんだ。僕の従業員に手をだすのは誰であろうと許さない」


 そう言って商人の子供はにっこり笑う。


「まさか、ターゲットの息子が乗り込んできてくれるとは、こいつは願ったりかなったりだ、さっさと捕まえろ!!」


 ギルドの頭領が言った途端、暗殺者ギルドのギルド員が動くが、次の瞬間、少年がとりだしたモーニングスターで脳天が勝ち割られ、血しぶきが空を舞う。


「なっ!?」


「ははっ。戸籍が存在しないというのは大変ありがたいね♡

 秘密裏に殺して、焼き払ったとしてだれにも罪に問われない。最高じゃないか」


 そう言って少年は狂気の笑みを浮かべ、モーニングスターを構えると、一瞬で銀髪の少年の周りにいた暗殺者ギルド員をモーニングスターで薙ぎ払った。


 ごきりと人間があり得ない形に曲がり、複数人が一斉に壁に叩きつけられた。


「なっ!?」


 暗殺ギルド員と頭領が、尋常でない戦闘力に思わず構える。


 取り囲まれて、剣や槍を突き付けられても少年は、かまわず銀髪の少年を守るように、立ったあと


「さぁ!!暗殺者ギルド員がこれほど雑魚ということはあり得ない!さっさと本気をだして僕を楽しませてくれ!!僕の物を奪おうとしたその罪、その命で盛大に償ってもらおうじゃないかっ!!!!」


 狂喜の笑みを浮かべて嬉しそうにモーニングスターを構え――次の瞬間暗殺者ギルドを蹂躙しはじめた。




 そう、幼いころからヴァイスの強さは規格外だった。

 思えば、ヴァイスとキースので出会いは最悪だった気もする。




 昔の夢を見てしまい、キースはむくりと起き上がった。


「……や、最悪の寝覚めですね……」


 ぼさぼさの頭でベッドから起き上がると、時計で時刻を確認し、そのまま身支度を始める。

 

 何故昔の夢を見たか、心当たりはあった。


 シルヴィアが妊娠してから安定期に入り、第一王子が王位につくことが決定した。そろそろ本国に移動しようかと話した頃、問題がおきた。


 こともあろうに第二王子がヴァイスに仕えたいといいだした。


 そのため第一王子が念のためと、ヴァイスの意志を確認しにきたのである。

 第二王子は死刑囚を殺していたものの、第二王妃の悪事には一切ノータッチだったため、断頭台行にするまでの理由がない。けれどヴァイスが望むなら、第二王妃の悪事に関わったと罪をきせ死刑にするし、ヴァイスが彼を許すのなら他国に追放という形になるらしい。

 追放後の第二王子は国内に一切入れなくなるが、ヴァイスを追ってヴァイスの国(他国)にいったとしても第一王子には第二王子を止める手立てがない。

 そのために確認にきたのだと言っていた。


 第一王子曰く、第二王子は「あのお方に仕えたら何か力に目覚められそうな気がする!」と目をランランと輝かせていたらしい。


「それって何か別の物に目覚めていますよね?」


 キースが突っ込んだら、第一王子も苦笑いを浮かべて


「否定できませんね」


 と、頷いた。


 その話中、別部屋でマーサと子どもの洋服を選んでいたシルヴィアが体調を悪くしてしまい、知らせをうけたヴァイスがすぐさまシルヴィアの元にいってしまったので話はうやむやになってしまった。あとで返事を下さいと、第一王子はキースに挨拶をして帰っていったのだ。結局そのあとすぐシルヴィアの体調がよくなったため、いつも通りのイチャイチャがはじまってしまったので、その日は返事を聞くことはできなかった。


 ヴァイスは自らを殺そうとした相手を許さないわけじゃない。

 もしそうだったら、真っ先にキースがヴァイスに殺されていただろう。

 ヴァイスを何度も誘拐しようとして失敗しているうちに、なんだかんだと情にほだされてしまっただけで、最初は誘拐して殺す気でいたのだから。


 そもそも幼い日、ヴァイスの誘拐を失敗した時ヴァイスの強さならキースを殺せたはずだ。けれど、ヴァイスはそれをしなかった。キースが四苦八苦しているのを面白がって遊んでいたふしもある。


 キースにはわからないが、ヴァイスなりに許す相手と許さない相手の基準があるのだろう。ヴァイスの場合はそれが世間一般の善悪とは少しずれているだけで、彼なりの正義があるのかもしれない。


 キースは鏡の前で蝶ネクタイの位置を確認し、髪をセットすると、よしと頷く。


 第二王子がどうなるかはわからないが、受け入れられた場合の準備は念のためにしておくべきだろう。


 自国に戻る準備に、結婚式場の手配に、信頼できる乳母の手配。

 やることはまだまだたくさんあるなと、キースはドアをあけ仕事に向かう。


 今日もまた忙しくなと愚痴を言いながら。



★★★一万ポイント超えありがとうございましたっ★★★


1万ポイント越え記念おまけ閑話ですっ!嬉しいです!!ありがとうございますっ!!

評価&ブックマーク本当に本当にありがとうございましたっ!!!


また作者別作品「偽聖女と虐げられた公爵令嬢は二度目の人生は復讐に生きる」コミカライズが11月18日発売予定です!こちらも合わせてよろしくお願いいたしますっ!

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