41話 それぞれ
「最近シミが酷くなる令嬢が増えた?」
王宮の中庭で一人第二王妃が、お茶を嗜んでいたところに、部下から報告がはいる。
「はい。茶会でそのような噂がながれはじめましています」
部下が仰々しく頭を下げる。
「それは良い傾向ではありませんか。もっとお茶を売りつける口実になります。そのように手配しなさい」
「はっ」
第二王妃の言葉に部下がかしこまると、そのまま一礼して立ち去った。
エデリー商会の愚息の事件以来、エデリー商会の儲けのほとんどは第二王妃に貢がれることになった。つまりお茶が売れれば売れるほど、第二王妃の懐にはいることになる。
(なんとか損失を埋めないと、王位を第一王子に譲らなければいけなくなってしまう)
★★★
「ちょっと~!!!これどういう事~!!!」
荷物を入れたスーツケースごと、サニアは店の外に追い出された。
扉の前でサニアがマリアに抗議の声を上げる。
「リックスが勘当されたのですから、妻の貴方も出ていくのは当然でしょう?」
マリアは冷たい視線で見下ろしながら、サニアに侮蔑をこめた口調で言う。
「そんなお義母様~!!」
「妊娠も嘘、黙って借金、仕事も出来ない!お前みたいな無能に、お義母呼ばわりされるいわれはないわっ!!! リックスとも借金を理由に離婚になるからどのみちあんたとは他人よ!」
「でも、でも、サニア住むところが……」
「そんなの知るわけがないでしょう!? わずかばかり金を恵んでやったのだから自分で何とかしなさいっ!!
ああ、本当、貴方なんかよりシルヴィアの方がずっとよかったわ。あのバカが浮気したせいでっ!!エデリー家は借金まみれじゃない!!」
「だって、お茶で儲けてるって……だから大丈夫ですよお義母様」
すがるように言うサニア。
確かにお茶は好調に売れている。だがリックスのせいでその稼ぎをほぼ第二王妃にとりあげられてしまっているのだ。そこにきてサニアの借金である。
リックスが金を渡さなくなったのに、前の生活水準が忘れられなくて黙って借金をしていたのだ。
(あのバカ息子がこんああばずれと浮気したばかりに、私の人生最悪だわっ!!)
「何が大丈夫よ!!お茶の稼ぎや薬の稼ぎはほとんどリックスの賠償で消えているのよ!? 出て行かないっていうのなら、借金取りに貴方を差し出しましょうか!?」
「そ、そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
サニアが頭を抱えるのだった。
★★★
「なるほど。サニアが捨てらましたか」
寝室でキースの報告を聞いたヴァイスが考えるポーズをとる。
おそらく渡された金が尽きたら、ヴァイスの元に押しかけてくるだろう。
熱で朦朧とするのにまた面倒な事になったと頭を抱える。
たしかに。後々のためにと、借金するように仕向けた。
だが、予想以上にサニアが愚かだったため、予測以上の速度で借金を背負ってくれたのだ。しかもかなり性質の悪い借金取りにまで勝手に手をだしてしまった。
シルヴィアが何かする間もなく、悪質なほうの借金取りに勝手に連れていかれるだろう。
「……本当にこちらに来てから全てうまく行きません」
ベッドにボスンっと身を預けヴァイスがうめく。
準備不足と忙しさ、そして続く体調不良で全部に手が回らない。
何より、気が付くとシルヴィアの事を考えてる時間が多くて、つい仕事がおろそかになる。
「キース、予定を変更します。さすがにあれにまでまとわりつかれたら私の体力がもちませんので。シルヴィアには申し訳ありませんが、あれは勝手にこちらで処理させてもらいます。シルヴィアにしたことをそのまま、やり返させていただきましょう」
そう言って意地の悪い笑みを浮かべるのだった。











