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39話 容赦なくぶん回す

 がんっ!!!!!


 鼻先をかすってモーニングスターが振り下ろされ、床にメリットめり込んだ。目先にたてに振り下ろされた風圧と通過したその重量にリックスは「ひぃっ」と声を上げ、その声がおわるか、おわらないかのうちに、再びヴァイスがモーニングスターを振り上げる。

 その威圧感に泣きながら、リックスは這うように逃げ出した。


「さぁ、さぁ、もっと真剣に逃げないと、うっかりと私のモーニングスターが当たってしまうかもしれませんよ。一撃頭に食らったら、酷いことになるでしょうね? ああ、想像するだけでゾクゾクします。あなたの脳は何色でしょうか?」


 這って逃げるリックスに、ヴァイスが面白そうに笑いながら煽ってくる。


 ――この男狂ってる!?――


 リックスが泣きながら、ずるずる這う中、すでにリックスの雇った傭兵達はヴァイスの、当たりそうで当たらないという、モーニングスターの恐怖で失神してしまっていた。

 本当にもう駄目だと思ったところで寸止めをしてみせたり、すれすれをかすめたり、足元にわざとらしく落としたり、嘲笑いながら相手に畏怖を植え付ける。言葉で、行動で、音で、全てを使って恐怖心を煽り、相手を失神まで追い込んだ。傭兵の何人かは恐怖のあまり失禁して気を失っている者もいる。

 普通の者ならそんなところでモーニングスターを止められぬだろうという、勢いで振り落として寸で止めてくるのだ。戦い馴れして武器の特性を知っていた傭兵達などは振り落とされただけで気を失ってしまうものもいた。


 何とか逃げないと!!思った瞬間頭の方に何か風圧を感じて、見上げたとたん、


 がんっ!!!!!


 上から落ちてきて目の前をかすったモーニングスターの恐怖にリックスは声にならない悲鳴をあげる。


 怖い、痛い、死ぬ!!

 殺される!!!!


 がくがくと足が震えて、もう歩けない。


「ああ、残念、今回も寸前で当たらないに成功してしまいました。脳天から直撃もなかなか楽しかったのに」


 モーニングスターの片方を投げた状態でヴァイスがニマニマ笑う。


「や、やめてくれ……」


 ガタガタと震えて涙ながらに訴えるリックスにヴァイスは上から嘲るように見下ろした。


「肉体的苦痛を与えてもよかったのですがね、どうせならあなたも心にぬぐえぬ恐怖心と苦痛を与えたほうが、マイレディへしたことへの報復になると思いまして。

 彼女が長期的に受けた苦痛に比べれば、これくらい生やさしいものでしょう?」


 ヴァイスはにたーっと醜悪な笑みを浮かべた。


「さぁ、まだまだ終わりませんよ。マイレディに二度と近づきたくないと思うほどの恐怖を与えてあげましょう。私の手もとが狂わない事を心から祈ってください。まぁ、手もとが狂ってしまったら祈ることなど出来なくなりますがね」


 そう言って、恐怖におののくリックスの目の前にモーニングスターを突き刺した。



 ★★★


「相変わらずやることがエグイですね」


 白銀の騎士を案内して連れてきたキースが、薄目でヴァイスに突っ込んだ。

 キースたちが到着した時にはすでに傭兵達もリックスも泡を吹いて失神していたのだ。


「怪我人はだしませんでした。敵を無傷で許すなど、私としたことがらしくなく、紳士的にふるまってしまいました」


 モーニングスターを片手にうっとりと、言うヴァイス。


「旦那様の紳士の定義と私の紳士の定義は違うようです」


 聴取を終えて、白銀騎士達が現場検証に入った姿を眺めつつ、キースが薄目で突っ込む。

 床や壁にはモーニングスターでできたであろう穴が開いており、ヴァイスが何をしたのか大方の予想がつくだけに笑えない。


 相変わらず慣性の法則無視をしたモーニングスター寸止めという荒業で、相手を気絶させていったのだろう。相手が気絶するまで執拗に当たりそうで当たらない攻撃を繰り返す。しかもあの巨大なモーニングスター×2でやられたら恐怖は計り知れないだろう。


「ああ、これだから商人はやめられません。商売敵が勝手に嫌がらせをしてくるのを返り討ちにする時の爽快感。金と権力で打ち負かせると、かかって来た相手に屈辱を与え、いい負かすときの高揚感。私はこのために商人をやっているようなものです。商人とはなんと素晴らしく尊い職業なのでしょう」


「旦那様、その発言は全国の善良で真面目に働いている商人の方々に失礼なので、全力土下座で謝るべきだと思います。」


 長らく慣れない恋愛事と病床生活でたまったストレスからか、異様にテンションが高いヴァイスに若干引きながらキースが突っ込むのだった。


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