33話 診察
「いつも……本当にすみません」
ヴァイス様にお茶を入れて差し出した。また泣いてしまって顔が赤くなってしまう。
なんでいつも泣いてるのか自分でもなさけなくなる。
強くなろうと願うのに、嬉しいことがあるとすぐに泣いてしまうのはどうにかならないかな。
ヴァイス様のコートを濡らしてしまったので、脱いでもらって、乾かすために、魔道具の乾燥する部屋に移動させる。
「かまいませんよ。いつでも泣いてくださいと、そう約束したはずですから」
そう言ってはにかんで笑ってくれる、ヴァイス様の顔はやっぱり綺麗で、思わず見とれてしまう。
「……何か、ついているでしょうか?」
少し赤らめて笑うその顔に思わず見とれてしまい、ヴァイス様に聞き返されて、私は顔がかーっと熱くなる。
「い、いえ、すみません!そ、そういえばこの前検査を途中で終わりにしちゃったので、異常がないかと肌を見てました!」
私がそう言うと、「ああ、そうでした。それを言いにきたのでした」とヴァイス様が思い出したように、いきなり服を脱ぎだした。
え!? え!? え!?
「ヴァ、ヴァイス様っ!???」
思わず真っ赤になって私が言うと、ヴァイス様が一瞬きょとんとして
「あ、ああ、す、すみません。変な意味ではありませんっ!?」
と、外しかけたボタンを慌ててもう一度はめなおす。
「断りもなく脱ぎ始めて申し訳ありません、実はまた別の場所に痣ができてまして」
「ほ、本当ですか!?」
「はい、一昨日まではなかったのですが今朝確認したところ首筋から胸の上あたりにまた小さな茶色いシミのようなものが」
「み、見せてください!」
私が慌てて、ヴァイス様の服のボタンをはずして、肌をみると確かに右上のあたりに茶色いシミのようなものができている。触ってみるとかなり固い。
「ヴァイス様、少し失礼します」
「あ、え、はい」
シミになってない部分、左胸の同じ部分など他の部分との強度を比較してもやはり茶色い部分の強度が高い。
少しだけ手に魔力をこめて刺激を与えてみると、肌の部分はちゃんと反応するのにシミ部分は反応しない。魔力をはじこうと硬質化している可能性が高い。
シミは小さいものも存在していて、一つ一つ触ってみるけれどやっぱり固い。私は丹念に色が変わってない部分も固くなっていないか触診していった。
首筋から指をゆっくり下って、魔力を少しずつあてていく。
もしかしてかなり広範囲に広がっている?
――でもなんで?
薬はちゃんと断ったはずなのに?
休息時間がたりてない?
でも一昨日はなかったということは――ー。
脇腹に触れたあたりで、ヴァイス様の身体がびくんとなったのを感じて、私はヴァイス様の顔を見つめる。かなり顔が赤くなっていて、手で口を抑え必死に視線をそらしている。眼も少しうるんでいた。
「もしかして、今朝から熱がでていたりしますか? 顔がかなり赤いです」
「あ、いえ、そういう事ではなく……」
顔を抑えて視線をさまよわせるヴァイス様。
もしかして物凄く調子が悪い!?急激な悪化なら薬を飲ませたほうがいいかもしれない。
私が心配していると
「すみませーん!!そう言えばお財布忘れた デース!!!」
急にバンっと扉が開かれてミス・グリーンが戻って来た。
そして、しばらく私とヴァイス様を見て固まって……
「お取込み中デシター! 失礼しましター!!!」
と、去っていった。そこで私は気づく。
触診に夢中なあまりヴァイス様の服を脱がせて、押し倒していたという事実に。