31話 痴話げんか
「これはどういうことだサニア?」
家に帰ると、サニアに待っていたのはものすごい形相で椅子に座り机に肘をついているリックスだった。
目の前には妊娠を偽装した時の薬などが並べられている。
どうして部屋に置いておいたはずなのに、ここにあるの?
まさかバレた?
「ど、どうしたのリックス、こんなもの持ち出して」
思わずたじろぎながらサニアは尋ねた。
「今日、シルヴィアの所に行ったようだね」
椅子に座ったままリックスがサニアを問い詰める。
「そ、それは」
「僕が暴力をふるったと、あの黒髪の男に泣きついたそうじゃないか」
「そ、そんなの誤解だよリックス。サニアが愛しているのは……」
なんとか誤魔化そうと、ネコナデ声を出してみるが……
「どいつもこいつもヴァイス様!ヴァイス様と!!」
だんっと机を叩くリックスが叩き、その態度にサニアはびくりとした。
「このあばずれ女っ!僕じゃなくても誰でもいいんじゃないか!!」
「そ、そんなんじゃ」
「許さない、よくも僕を騙したな!!!妊娠しているなんて大嘘をっ!!!
前から君はうさん臭いと思っていたんだ!人の悪い口ばかり言っているし!わがままだし!金遣いは荒いし!!」
怒鳴り散らすリックス。
(ちょ!?さすがに言いすぎじゃない!?)
「酷い!サニアの事そんな風に見ていたの!?」
「だってそうだろう!?シルヴィアは本当に質素で倹約家だった!僕に尽くしてくれたし、君みたいに悪口は言わないし、仕事もできて、気がきいて君とは大違いだ」
(またそれ!?なんでみんなあの女と私を比べるの!? みんなシルヴィア、シルヴィアって!?)
「それならリックスだってそうじゃない!結婚したらもっと贅沢させてくれるっていったのに!!最近なんでも節約しろ!節約しろって!!全然遊びにいけないし!!」
「君が無駄使いしすぎているからだろう!?シルヴィアだったら、損失を補填するためにちゃんと倹約して仕事を増やしてお金を稼いできたのに君はどうだっ!!
僕の嫁になったんだから、ちゃんとシルヴィアと同じだけ働いてもらわないと困るっ!」
「何言っているの!?それって男の仕事でしょ!? なんで私にやらせようとするのよ!まさか仕事をそこまでお姉さまに丸投げしていたなんて思わないじゃない!」
「なんだって!?
シルヴィアはそんなこと言わなかった!」
リックスの反応にサニアは歯ぎしりする。
(何なの、リックスもヴァイスとかいうイケメンも。みんな、シルヴィア、シルヴィアってお姉さまのことばかり!もう許さないっ!!!)
「私だって仕事をお姉さまがほとんどしているなんて思わないわっ!!
しかも自分が不妊の癖にお姉さまのせいにしていたじゃない!!」
「……は?」
「そうよ!不妊はリックス貴方側の問題なんだから!それなのにお姉さまのこと不妊女って馬鹿にしていたでしょ!?サニアもあんな目にあうのは嫌だったから嘘ついただけ!サニアがあれこれ言われる筋合いなんだからっ!!!サニアが責められるいわれはないわ!!
それよりサニアの事馬鹿にした事許さないんだからっ!!!!」
そう言って、サニアは部屋からでるとばたんと扉を閉めた。
なんだか後ろからリックスの悲鳴みたいなものが聞こえたけれど、サニアを馬鹿にした罰。
慰めてなんてやるもんですかっ!
本当っ!!!最低!!!絶対絶対、リックスもお姉さまも許さないんだからっ!!!











