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2話 嵐の日の出会い(ヒーロー視点)★

 

「お待ちください!!あと一日!あと一日だけでいいのですっ!」


 酷く歪んだ顔でスーツ姿の老齢の男が頭を下げる。

 老紳士の姿に男は皮肉めいた笑みを浮かべた。

 20代前半くらいの端整な顔立ちの黒髪のスーツ姿の男だ。


「面白い事を言いますね。そう言って貴方に縋った者達を無視して土地や家をとりあげた貴方が臆面もなくそれをいいますか?」


 葉巻をふかしながら男が笑う。


 そして葉巻を灰皿で消すと、老紳士に近づいた。


「それに誰も貴方に資金援助などしませんよ。私が裏で手をまわしていますから」


「……な!?」


「貴方が資金援助を受けられそうなところは全てこちらで、買収済みなので。

 いやぁ、貴方に人望がないおかげで懐柔がとても楽でたすかりました。

 貴方の言葉など、誰も耳もかさないでしょう」


「貴様っ!!」


「おや、貴方がよくしていた事じゃありませんか。

 優しい言葉で金を貸し付け、最後には周りから孤立させ、全てを奪う。

 そうやって何人の貴族から家や土地、爵位をとりあげました?

 私だけ責めるのは筋違いかと思われますが」


 男があざ笑いながら、家にあった杖を無造作に手に取ると、ろくな金になりそうもないですが、質にでもいれますかとつぶやいた。


「この!!!若造が!!!」


 杖で殴りつけてきた老人のその杖を男は手で止める。


「ははっ、いきなり暴力はいけませんね。まぁ殴られて慰謝料を請求してもよかったのですが、もうあなたには搾り取れるものは何もないですからね。殴られる価値もない。不正の証拠もこちらに抑えてありますので、どうぞ老後は安らかに牢獄でおすごしください」


 そう言って男はにっこり微笑むのだった。


 ★★★


「何もあそこまでする必要がありましたか。また敵が増えましたよ」


 老紳士の屋敷から出た後、馬車の中で商人の男に仕える秘書官がため息をついた。

 銀髪の20代くらいの男性――キールがため息をついた。


「おや、不満ですか?先にこちらの客にちょっかいを出してきたのはあちらです。

 邪魔者は徹底的につぶす主義なのは君もよく知っているでしょう?」


 葉巻をふかしながら男――ヴァイス・ラドリューが笑う。


「……そんなことばかりやっているから悪徳商人とか言われるんですよ」


「その評価は何も間違っていないでしょう。正当な評価……」


 言いかけた途端。


 ひひーん!!!


 がくんと馬車が大きく揺れ、馬の鳴き声がけたたましく響く。


「何事だ!?」


 急停車した馬車から慌てて降りて、従者に問う。


「それが馬車の前に人が倒れてきたんです」


 馬の手綱を引いていた従者がうろたえた様子でつげた。


「人?」


 ヴァイスが視線をうつすと、確かに馬車の前に女性が倒れている。

 20代~30代くらいの茶髪の女性。

 ほっそりとしていて、髪もぼさぼさで身なりもいいとはいえない。


「……行き倒れですか」


 ヴァイスがふむと腕を組む。


「どうしますか。一応生きています」


 困ったようにキールがヴァイスを見た。


「この区画は観光地であるがゆえ孤児やホームレスなどは神殿が保護しているためいないはずです。

 それなのにこれほどやせ細り病弱なものが倒れているとなると……」


 キールがちらちらと女性を見る。

 とてもではないがやせ細りすぎていて、普通の食生活をおくっていたとはいいにくいほど衰弱している。身寄りも金もない行き倒れにしか見えない。


「やっかいな病気もちかもしれません。神殿に報告して置いておいたほうが」


 従者の言葉に、ヴァイスは空を見上げた。

 雨足も強くなっている。季節風の嵐がくる予報があるためここで放置してしまった場合、最悪神殿も動かず、放置されて終わってしまうだろう。


「いや、これから風雨はさらにひどくなるこの衰弱具合でこのような場所で放置してしまえば助らない。連れて行くしかないと思いますよ」


「本気ですか旦那様!?」


 キールが抗議の声をあげるが、


「……ええ、乗せてください」


 と、ヴァイスはため息をつく。厄介なものに関わってしまったと。


書籍化にともないキースの名前がキールに変更となります

ただいま名前変更中で名前が混在してご迷惑おかけして申し訳ありません

タイトルに★がついているものは名前変更済みになります

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