表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/25

02


 まず、自己紹介をしましょう。

 私の名前はラヴァンダ・ラ・ロシェル。一応、貴族の娘であります。しかも爵位は侯爵。私は世間一般的には侯爵令嬢。名家のお嬢様でございます。血筋だけは。


 というのも、ロシェル侯爵家は没落寸前なのです。理由は相続税と借金のせいでございます。


 私のお祖父様が亡くなった際、それはもう多大な税金を侯爵家にかけられました。具体的には、資産の七割が税として徴収されました。節税対策はしたものの、焼石に水です。お父様はこの件があって以降、お兄様と私に「雇った税理士のことは黒子の数を覚えるぐらい把握しておけ」と口酸っぱく忠告するようになりました。もうロシェル家には税理士を雇う余裕などなくなりましたが。

 そして、焦ったお父様による事業の失敗。その失敗を立て直そうと借金をし、また事業が失敗する……という負の構造が出来上がってしまった結果、侯爵家は土地と屋敷を売り払い、王都郊外にある古びた家に住まうことになりました。私が七歳の頃の出来事です。


 もうそれは没落しているも当然では? と私も思うのですが、両親はまだ侯爵家復興を諦めてございません。爵位も保持したままです。私は、復興を諦めず十年経った今でも侯爵家のため奔走しているお父様とお母様に敬意を示し、ロシェル家は没落したと口に出さないと決めているのです。代わりに、没落寸前と言わせてもらっているわけです。


 ですが、プライドだけではお腹は膨れません。ついでに借金で首も回りません。

 侯爵家の家計が火の車だというのに、私がお茶会だ舞踏会だなんだ贅沢できるわけありません。お兄様も同様です。私達二人は、働ける年齢になったら仕事先を見つけました。

 お兄様は鍛治職人のもとで見習いを、私はお針子の仕事をさせてもらっています。

 私達が平民のように労働することに対し、両親はあまり良い顔をしません。ですが、私達の稼ぎは家計の助けになっているので、無理に辞めさせることは致しません。それを良いことにお兄様と私はそこそこ楽しく働かせてもらっています。


 二人には申し訳ないですが、私達兄妹は侯爵家の復興は無理だと考えています。なので、お父様がいつ爵位を手放しても困らないように、それぞれ手に職をつけようと決めていたのです。

 幸運なことに、私はほんの少しだけ魔術が使えるので、職場では重宝されています。針子としての腕もまあ……そこそこです。

 店主や先輩方は優しいですし、友人と呼べる同僚もいます。今の境遇に不満などありません。

 侯爵家の娘という肩書きなどあってないようなもの。貴族から平民になったとしても、何も困りません。むしろ、分不相応な身分から解放されて肩の荷が軽くなるというものです。

 私は、華やかな世界でシャンデリアに照らされるよりも、ありふれた草原の中で春の日差しを浴びるのが性に合っているのです。

 そうして、久々の休日、おやつの木の実を摘むため森を散歩していたとき。


 ウィステリア様が、道のど真ん中で蹲っているのを発見したのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すみません、本当は誤字報告に出すべきものだとは心得ています。 しかし、めちゃくちゃツボってしまい、遅めの昼食を終えお腹いっぱいだった腹部が痛みを訴えるまでツボってしまい、感想欄の方に書かせて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ