表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

9人目

3年ぶりでしょうか?ふと気になりのぞくと、毎月一人は読んでいただけているような。

完結作品でも求められることがあるのでしょう。

時々更新があるかもしれません。


その日地図師が死んだ。


彼は辺境の村に生まれた。

彼には特別な力はなく剣も魔法も使えなかった。

しかし彼には道をまっすぐ引く手と、歩み続ける脚、夜空の星と話せる目を持っていた。

彼は常に歩き続けた。

砂漠の縁を、凍湖の上を、山脈の影を。

名も無い峠に名を与え、忘れられた井戸に印をつけ、渡れぬ川に浅瀬を探した。

雨と風が紙を裂く夜も、彼は火を絶やさず世界に軌跡を記し続けた。

足の裏は地図のようにひび割れた。


彼の地図は天使であった。

商隊は迷わずに都へ至り、巡礼は季節を外さずに聖地へ辿り着き、飢えた村には交易が戻り、孤立した街には医者が来るようになった。


彼の地図は悪魔であった。

将軍たちは彼の線を道として軍を進め、彼の記した浅瀬は騎兵の轟音を招いた。


彼はそれを知りながら止める力はなかった。


一度、暴君が城のための新図を求めた。

彼は拒んだ。

焼き板に刻んだ版を自ら割り、右手の感覚を失うほどに火にかざした。

多くを失い、少しを守った。


なおも彼は歩み続けた。

誤りがあれば次に塗り替え、危地があればそれを知らしめた。

孤児を弟子に取り、測量と読み書きを教えた。

弟子たちは各地に散り、名を競わず精度を競い世界に刻み続けた。


晩年、彼は静かに言った。


地図は道ではなく灯である

持つ手次第で人を帰らせも、迷わせ続ける



最後の改訂が綴じ上がるのを見届け、彼は目を閉じた。


世界は彼の線に救われ、彼の線に傷ついた。

市場の人々は彼を道の父と呼び、戦場を知る者は彼を侵攻の共犯と呼んだ。

天使であり悪魔であった。


その日、世界に道を描き、戦に道を与えた地図師として死んだ。


故人:大地図師オルバ・セリオン・マーパ

どうでしたか?




是非よろしかったら いいね や 感想 ブックマーク をお願いします。




原動力になります。




またの別の英雄でお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ